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4/17 誤字・描写微修正




 現在地は牙狼の迷宮地下十二階、清浄の泉にいる。地下十一階と地下十二階の途中までは、バリスティックシールドとP90を使い魔獣系の攻撃を受け止めながら、近距離でP90を運用し、近接戦を試しながらの道中だった。


 休息を取りながら、夕食としてマリーダ商会に用意してもらった弁当を摂り、TSSタクティカルサポートシステム)を弄りながら、インベントリに並ぶ銃器達を眺め、盾との組み合わせ、近接戦と中・遠距離戦のバランスを考えていた。

 散々悩んだ結果、予備で持ち歩いていたSCAR-Hをインベントリに戻し、新しい銃器を選択し補給BOXを召喚する。



 俺の目の前に召喚された補給BOXを開き、中から取り出したのはMPS AA-12だ。

 このAA-12(オートアサルト-12)はアメリカのミリタリーポリスシステム社が開発している、フルオート射撃が可能なSGショットガンで、低反動で片手でも制御できるのが特徴だ。更に弾倉にドラムマガジンを採用し、装弾数32発とSGとは思えない装弾数を誇る。


 VMBのSG系は、アタッチメントとして弾丸の種類を選択することができる。SGの主流な弾丸の12ゲージバックショット弾、大口径並みの威力がある一発を撃ち込むスラッグ弾、そして幾つかの特徴的なSG専用に使用することができる特殊弾丸の三つだ。


 俺がAA-12の弾丸として選択したのは、この三つ目のFRAG-12という榴弾だ。FRAG-12は言わば小型グレネードで、対象に着弾すると弾丸内部の炸薬が小爆発し多大なダメージを相手に与える。さらにFRAG-12には射程延長の効果も有り、有効射程は170m程までになる。



 補給BOXからAA-12用のドラムマガジンも取り出し、ドラムマガジンを収納する専用ポーチもベルトに取り付けていく、これで準備完了だ。



 清浄の泉を越し、地下十二階のフィールドダンジョンを進む、地下十二階は十一階と同じ雰囲気のマップが続いている。俺は十一階同様に、当てにならない地図は無視し、ヘッドゴーグルに映るマップを頼りに探索をしていた。

 フィールドダンジョンの階層は壁の無い無限フィールドではない、正道を外れ真っ直ぐ突き進めば何れは壁に当たる。しかし、そこまでの距離は迷宮や階層ごとに違い、確かめようにも数kmの広さがあるので一々確認はしていられない。


 このフィールドダンジョンの怖さは、数km×数kmの階層に、考えられないほど多くの魔獣・亜人種が現出することだ。そして、妖しい霧に遮られたところに黒い靄と共に現出してくることで、数瞬前には居なかった場所に気付くと黒い靄とともに佇んでいる。


 これがフィールドダンジョンの怖さだった。






 泉を越えたことで現出する魔獣・亜人種の格が上がっているはずだ。前方だけでなく、360度方向の警戒を強めながら進んでいく。



 来た! 視界の端に妖しい霧の色とは違う、黒い色を捉える。林道の横の生える樹の陰に黒い靄が湧き出ている。

 バリスティックシールドを左手で構え、右手にAA-12を持つ、AA-12のストックを肩に当てて黒い靄にクロスヘアを重ねる。


 ここまでのフィールドダンジョンでの戦闘で、黒い靄に攻撃を加えても魔獣・亜人種の現出を遅らせるだけにしかならない事が判明していた。


 靄が解けた直後を狙い撃つ。



 黒い靄は一つ、形作るのはレッドベアーに近い大きさだ――ここだ!


 AA-12のトリガーを指切りしながら、クロスヘアを現出したばかりのレッドベアーの上半身に集めていく。

 FRAG-12の爆発力が、どこまでの威力を見せてくれるか。これは今後の更なる大型魔獣に、どう対処していくかの指標になると思う。

 迷宮の小部屋、大部屋は必ず多数と戦闘をすることになる。今度、下層に進めば進むほど、この小・大部屋には多数の大型魔獣が溢れてくるはず、それに対抗する銃器を見極める。



 AA-12から鳴らす発砲音は、ARFアサルトライフル系よりも更に大きな爆音を鳴らし、レッドベアーに着弾し、爆発音が三つ、さらに爆発音が三つ続いた。


 SCAR-Hを初めて実戦で使用した時にも感じたものが、再びここでも起こった。SCAR-Hの7.62×51mm NATO弾の威力がVMBのゲーム内威力を超えていたように、このFRAG-12もまた、VMBのゲーム内威力を遙かに上回っていた。


 体長2mを超えるレッドベアーの上半身は、跡形もなく吹き飛んでいた。残っているのは下半身と太い足が二本だけだ。



「つぇぇぇ……」



 FRAG-12の威力は申し分ないのものだった。この先に現れるであろう上位種も、同様に吹き飛ばせれば更に文句は無いのだが……これ、マガジン一個辺りのCPクリスタルポイントの消費量が多いんだよなぁ……。


 弾丸一発のコストは大口径になる程高くなる。これが12ゲージバックショットやスラッグ弾ならば、7.62×51mm NATO弾より少し高い程度だが、FRAG-12は更に1.5倍ほどのコストが掛かる。


 強い――が、これをずっと使い続けるのはキツイかなぁ。




 試し撃ちとなったレッドベアーの後、中々上位種の姿は無かった。ダイアーはロングホーンラット、スケルトンファイターなどが集団で出てくることはあったが、この辺りの魔獣の耐久力も、FRAG-12で爆散する程度と確認できた。


 しかし、使用していて一つ欠点が浮き彫りになった。



「魔石どこ飛んだ?!」



 FRAG-12の爆発力が思った以上に高く、魔石ごと肉片を周辺へと飛び散らせていた……。






 魔石の回収数が斃した数以下になりつつも、地下十六階まで降りてきていた。地下十一階から地下十五階までと同じ、東の森を模倣したフィールドダンジョンではあるが、地下十六階からは夜の森となっていた。


 月明かりも星明りも無く、林道の脇に点々と咲く白光草の灯かりしかない。明るさは地下十階以上の地下道タイプと殆ど変わらないが、上層と違い、ここからは視界が全く通らない林の中にも注意しなければならない。

 

 ヘッドゴーグルをNVナイトヴィジョンモードに切り替え、これまで以上に警戒を強めるが、これはソロ探索の厳しいところが浮き彫りにされた思いだ。

 とは言え、俺の戦闘方法とマッチする探索者がいるとは思えない。VMBの力の開示や、魔石などの分配の問題、偽りの顔であるシャフトの存在。



 それら全てをクリアできる仲間か……。






 現在地は地下十八階、この夜のフィールドダンジョンは非常に厄介、かつ出てくる魔獣と亜人種の格が高く、苦戦が続いていた。




 正面からレッドベアーが2匹に、横で湧いてるのはオーガだろうか? 林の中に湧き出る黒い靄に運よく気付くも、すでに前方からはレッドベアーが駆け寄ってきている。

 シールドを構え、正面から来る1匹にAA-12のFRAG-12を指切りで撃ち込み、次にくる2匹目をスライドジャンプで右へと逃げる。


 しかし、レッドベアーも動きに反応し、方向を修正しながら右腕を振ってくる。これはシールドで受けきれるパワーであることは判っていた。

 打ち付けられる暴威をシールドで受けきり、ヘッドゴーグルに表示される耐久値を確認しながら、クロスヘアの表示位置だけを頼りに、シールドの向こう側のレッドベアーを撃ち斃していく。


 次は現出したばかりのオーガだ。緑鬼の迷宮で戦ったオーガファイターと比べれば、若干小さく見えるが、それでもゴブリンやホブゴブリンに比べれは随分と高い。バンプアップした上半身と下半身は太い短足、顔はファイター同様に鉄兜を被ってはいるが、着ている物はボロい布の服だ。右手には鉄製だろうか、戦槌をもって既に振り上げて咆哮をあげている。


 AA-12のマガジンにはまだ十分な弾数が装填されている。しっかり当てれば問題なく爆散させられるのはわかっていたが、オーガは1対1で対峙すると非常によく動いた。

 その動きは俺のスライドジャンプにも似て、重量感のある体を左右に跳ねるように動きながら戦槌を叩きつけてくる。


 戦槌を左へのスライドジャンプで回避するも、無手の左手が追随してくる。スライドジャンプ中のシールドを殴られたが、吹き飛ばされた先でしっかりと着地し、FRAG-12をお返しとばかりに撃ち込んでいく。

 着弾した部分が次々に爆散し、体に穴が開いていく。魔石を吹き飛ばさないように、胸を避けて頭部、左肩、腹部となぞり、その巨体が沈むのを見届ける。



 周囲は暗く、落ちた魔石を探すのに時間をとられるが、そういえば……。


 ヘッドゴーグルのモードをNVモードからFLIR(赤外線サーモグラフィー)モードに変更し、魔石の温度を探っていく。

 地面に落ちた魔石の温度を頼りに探っていく。火・風は僅かに熱を持ち、水・土は温度が低い、レアな属性魔石の温度はまだ確かめたことが無かったが、無属性が熱を持たないのだから、レアなら何かしらの熱を持っているだろう。



 周囲を見渡し、FLIRモードに映る魔石を拾っていく。このFLIRモードはVMBの頃から使い道が少なかった。FLIRカメラには薄めの壁ならば透しするが如くに、中にいる人物や物体の温度を見ることができたが、VMBのFLIRはそこまでの性能は無かった。

 



 このFLIRモードも何か有効な使い方があればいいのだが……魔獣・亜人種が湧く黒い靄とか、熱持っていないだろうか……。

使用兵器

バリスティックシールド

CBSの実体版である防弾盾。幅58cm、高さ92cmの黒一色の無骨なデザインで、盾の上部には防弾ガラスの嵌った覗き窓がついている。耐久値が残る限りは使用できる使い捨ての盾。基本的な銃弾と特殊手榴弾による攻撃くらいまでは防ぐ防御性能を持つ。



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