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活動報告で使用兵装の一部の画像を公開しています。
銃器の形がわからない、興味がある方は、よろしければ見てください。
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俺が今いる現在地は、牙狼の迷宮、地下八階の清浄の泉である。地下八階もアンデッドゾーンであることは変わらないが、この階層ではソンビ各種、スケルトン、ラビリンスバットと上層で斃してきた魔獣達が混合で現出していた。
両手に持つ携帯放射器1-1型の信頼できる威力により、ゾンビの集団もスケルトンの軍団も、全て燃やし尽くして清浄の泉まで進んできていた。
ここで夕食と仮眠を含めた長めの休憩を取り、深夜帯にさらに下層を目指す。当初は地下十八階まで行きたかったが、このペースでは無理だろう。明後日の朝には、マリーダ商会の商隊護衛任務で王都へ向けて出発しなければならない。
予定を変更して、地下十一階の迷宮の構造が変化するところを見届けて、地上へと帰還することにする。
俺はTSSを起動し、ガレージからAEC装甲指揮車、ドーチェスターを召喚した。清浄の泉で野営するのは変わらないが、より心身の休息を得る為に、ドーチェスターの後部居住スペースで椅子に座りながら夕食を摂り、仮眠するときには机に足を投げ出して椅子で眠った。
本当は横になりたかったが、ドーチェスターの床部分も迷宮内と変わらず硬い。今後は布団か寝袋か、何か安眠できるものを用意しようと思う。
4時間ほどの仮眠から目を覚まし、念のためドーチェスターの内部から覗き窓で周囲を窺う。清浄の泉には俺しかいない状態は変わっていないようだ。
ドーチェスターをガレージに戻し、泉の水で顔を洗って残っていた眠気を飛ばす。1-1型を背負い、サブ兵装やマガジン、コンバットナイフなど、装備を整えると地下九階へ向け再出発した。
清浄の泉を越えたことで、現出する魔獣・亜人種の上位種が出たり、格が上がるはずだ。警戒を強め、天井からの奇襲に備えていく。
進んでいく地下道の先から聞こえてくるのはゾンビの動く音か? 3匹分の足音が聞こえる。そのうち2匹はグラスウルフゾンビだろう。
いつでも1-1型のトリガーを引けるように腰に構え、クロスヘアを進む先へと合わせておく。向こうも俺に気付いたのか、3匹の内2匹が走り出すのが聞こえる。
進むのを止め、向こうが飛び出てくるのを待つ、見えた瞬間には丸焼きだ!
「Uuuuuuuuuuuu」
そんな呻き声と共に、グラスウルフゾンビ2匹がクロスヘアを置いている角から飛び出す。確認した瞬間には1-1型のトリガーを引き、火炎を纏ったゲル化油がグラスウルフゾンビに噴射された。
肉の焼ける臭いと共に転げまわるグラスウルフゾンビ達は、必死に火を消そうとしているが、そんなことで消えるものではない。グズグズに体を崩し、迷宮に沈んでいくのを確認すると、遅れてやってくる残り一匹を確認する為に前進する。
角を曲がり、その先にいる固体を確認すると、そいつは一目見てゾンビだとはわかったが、上層で見た農民みたいな奴ではない。顔にはドス黒く膨らんだ瘤があり、腹を異様に膨らませ、なにかの病原体でも抱えていそうな姿だ。
こいつはゾンビの上位種だな、たしか魔獣図鑑でみた……イルネスゾンビとか言う……
すぐには攻撃せずに、その風体を観察していると、イルネスゾンビは胸を仰け反らせ……
「Vubeeeeeeeeeeeeeeeeeee」
口からドス黒く濁った緑色の液体を吐き出し、こちらへと噴射してきた。
「きたねぇー!」
俺は思わず角を戻り、それの直撃は避けたが、イルネスゾンビの何かを吐き出す攻撃(?)は、10mほどの距離があったにもかかわらず、俺がいた付近まで届いていた。
それは俺の1-1型の火炎放射とほぼ同じ噴射だった。地下道にばら撒かれた黒緑の液体は毒液か? とにかく浴びて良いようなものには見えなかった。
次を噴かれる前に、地下道にばら撒かれた黒緑の液体を踏まないように角を飛び出し、一気に火炎を浴びせていく。
通常のゾンビよりかは耐久力を感じたが、火にまかれ皮膚を焼き、体内の黒緑の液体を噴き上げながら燃え崩れていった。
「これは気をつけないとだめだな……」
思わず呟いてしまう。TSSから魔獣図鑑を開き、イルネスゾンビの情報を探す。やはりこの黒緑の液体は毒液のようだ。皮膚に直接あびると皮膚を溶かし、爛れて焼けるような痛みを発する……硫酸か?
こんな奴、普通の冒険者はどう倒すんだ? と思ったが、イルネスゾンビの魔石は頭部に固定らしく、首を飛ばせば倒せるそうだ。しかし、魔石が分離され、体が崩れる際には体内の毒液を噴出すため、頭を飛ばしたらすぐに距離をとらないと危険とあった。
俺としても、10m近い距離を無効にする攻撃手段を持つイルネスゾンビは要注意だな。
イルネスゾンビが迷宮に沈み、そこに魔石が残ったわけだが……毒液消えないのかこれ……。
最初に噴射してきた毒液もそうだが、斃れたときに噴出した毒液の池は、迷宮に吸収されるまで少し時間が掛かるようだった。毒液の中に落ちた魔石の回収は諦め、先へ進むことにする。
それから何度か戦闘をおこない、汚物を焼却しながら進んでいくと、大部屋らしき空間が見えてきた。中には多数の光点が蠢いている。
聞こえてくる音からスケルトンだとは思うが、少し重みを感じる。大部屋の入り口から中を窺うと計12匹のスケルトンが確認できた。
しかし、12匹全てが固まっているわけではない、6匹ごとに分かれて固まっており、その光景はまるで、清浄の泉で休息を取る冒険者パーティーのようだった。
2グループのスケルトンの構成をよく観察すると、ノーマルではない全てが上位種だ。スケルトンファイターという皮鎧を着たタイプが2匹、スケルトンアーチャーが1匹、スケルトンメイジが2匹、スケルトンガードという大盾を持っているのが1匹が2セット。
どうするか……。
これがアンデッドでなければ、M84フラッシュバンを投げ込み、状態異常を引き起こしたところで順次斃していくのだが、スケルトンには視覚も聴覚もない。何か別の理でこちらを認識している。
どう攻めるか考えるが、大まかな候補は二つだ。大部屋の外から攻撃して数を減らしていく。もしくはTH3で初撃を与え、その後突撃して混戦に持ち込む。
色々と経験もしたいし、両方やるか……。
まずは俺がいる入り口に近い方に狙いを合わせ、射程40mの1-1型の長所を最大に活用していく。
まるで、焚き火を囲んで休息しているかのように円陣を作って座っている、スケルトンアーチャーの背に向かってクロスヘアを合わせトリガーを引いていく。クロスヘアを円陣の左右に往復させるように噴射し、手前側に座っていたアーチャー、ファイター2匹が燃え崩れていった。
そのまま奥側の3匹も燃やしてしまいたかったが、ガードの大盾が1-1型の噴射を抑えている。鋼鉄製なのだろうか? 燃えることなく防がれてしまった。
しかし、大盾でガードの体全てが隠れているわけではない、クロスヘアを盾からはみ出ている足元へ向け、足首付近を燃やしていく。
一度は立ち上がり、大盾でメイジ2匹を守っていたガードは、足首を燃やされ体勢を崩し、再び片膝を付くようにしゃがみこんだ。大盾も真っ直ぐ立てれず、その骨の体が露になる。すかさずクロスヘアを胸に合わせ、魔石周辺へ噴射していく。
ガードによって一時的に守られていたメイジ2匹は、後方で魔法を詠唱していたようだ。胸を燃やすガードの左右に直径30cmほどの黒い玉が浮かび上がり、こちらへと射出される。
すかさず大部屋の外へとスライドジャンプで回避する。大部屋の入り口から俺のいた地下道の壁へとぶつかる黒玉の衝撃音と共に、再び大部屋の入り口を横切るようにスライドジャンプし、入り口の通過する瞬間にもう一噴射した。
ガードを完全に燃やしたが、入り口を通過の瞬間に、もう一方の集団からアーチャーの矢が飛んできていた。
お前達はメイジ2匹の後だ。大部屋の入り口の縁に背を当て、リーンという覗き込む動作と共に、残ったメイジ二匹に向けトリガーを引き一気に火達磨にしていく。
もしかしたら魔力障壁を展開していたのかも知れないが、1-1型の火炎は魔力など持っていない、魔力障壁で防げるわけがないのだ。
最初の6匹を燃やし尽くし、つぎのスケルトンパーティーへと目標を変える、大部屋の入り口から覗き込むと、奴らも臨戦態勢で陣形っぽいのを組んでいる。
ガードを中央に、左右をファイター、後方に後衛3匹を並べているようだ。
次は1対6の集団戦だ! TH3焼夷手榴弾のピンを抜き、大部屋に滑り込むと同時にアクセルジャンプからのTH3を投擲、そのままストレイフジャンプに移行しアーチャーの弓を回避する。
TH3がガードの足元で噴射を開始し、一瞬でガードが大盾ごと炎に包まれた、左右にいたファイターも少し喰らったようだが、まだ動いている。
ストレイフジャンプでスケルトンパーティーの左側へと廻り込みながら、空中で1-1型のトリガーを引いていく。空中から噴射される燃え盛るゲル化油は、左側のファイターを飲み込みながら、スケルトンパーティーの足元に火の池を作り出す。
一度着地し、クロスヘアをファイターの後方にいたメイジへと合わせるが、その瞬間に俺の視界を塞ぐように迷宮の地面から土の壁が迫り上がってきた。
「なっ!」
最初に潰したパーティーのメイジが張った魔力障壁を、1-1型の火炎が貫通したことを理解していたのだろう。物理的に火炎を遮る盾として、メイジはアースウォールという防御魔法を唱えていた、が。
「甘いわっ!」
アースウォールによって遮られたのは俺の視界だけではない、お前は俺の動きが見えているのか? 壁や箱などの貫通不可のオブジェクトに身を隠すなど、FPSでは基本中の基本の動きだ。そして、その動きに対する選択肢も豊富に存在するのがFPSだ。
俺はフィールドジャケットから再びTH3を取り、ピンを抜いてアースウォールの上を越えて、メイジがいた付近へ落ちるように山鳴りに投げた。
投げた瞬間に、壁の横からアーチャーがこちらを狙うのが見えた。放たれた矢を更に左へとスライドジャンプして回避し、アースウォールの裏へと廻る。
アースウォールの裏では、メイジが噴き上がる炎に呑まれ崩れ落ちたところだった。スライドジャンプから連続で左回りにジャンプし、完全に奴らの後ろへ廻り込む。俺が飛んで通過したところには、狙いを誤ったもう一匹のメイジ唱えたアースウォールが、無意味に迫り上がっていた。
これで俺の目の前にはアーチャーとメイジが並び、その後ろにファイターだ。アーチャーが弓に矢を掛ける前にクロスヘアを合わせ、火炎を噴射していく。そのままクロスヘアを振り、メイジを飲み込み最後にはファイターにまで届かせ、残った3匹を一気に焼き払った。
「ふぅー」
焼け焦げた大部屋の床を見ながら、魔石を回収していく。1-1型の火炎を、一度見ただけでアースウォールで防ごうとするなんて、スケルトンの上位種の知性には驚きを隠せなった。
TSSから1-1型の燃料も補給し、今後はもっと頭のいい魔獣や亜人種が出てくるだろうと警戒しつつも、上位種の集団でもしっかりと捌けた爽快感に、今までになかった達成感も感じていた。
もう少し進めば地下九階のはず、帰還の時間を考えれば、この達成感に酔ってもいられない。
気を引き締め、さらに奥へと進んでいく。
使用兵装
携帯放射器1-1型
日本の陸上自衛隊に配備されているM2火炎放射器の改良型。ゲル化油を燃料に使うことで、射程は40mと類似種の中で最長のスペック、噴射回数も多く調整されている。ただしCP消費コストが高い。
TH3焼夷手榴弾
短時間で狭い範囲だが、摂氏2000℃を越える高温を範囲内に生み出す手榴弾。その威力は鉄骨をも溶かす。