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3/14 誤字・空白・描写修正


 M1911A1で排除した2匹のゴブリンを見下ろし、俺は悩んでいた。


 VMBのゲーム内では、敵を倒せばそこにクリスタルが生まれ、それに近づけば自動的に回収されCPクリスタルポイント)として得ることが出来た。このCPがVMBをプレイするための様々な要素に関係してくる。

 

 兵装の購入、弾薬の補充のみならず、攻撃を受け減少した体力を回復する為のアイテムや破壊された武器やパワードスーツの機能回復など、何をするにもCPが必要だった。


 だがこの異世界へ落ちて、初めて敵を倒したがクリスタルが出現する様子はない。つまり、今所持してるCPで今後やっていくしかないと言うことなのだろうか、VBMをプレイし始めて3年は経過してる。幾度ものVerUPや大型拡張を繰り返し、プレイ人数もそのゲーム内容も、間違いなくモンスタータイトルとなったVMBで稼いできたCPの額は、無補給となっても簡単になくなる様な数字ではない、しかし、しかしだ。


 元の世界に帰れる当てもない、何年、何十年と掛かるかもしれないことを考えると……帰ることを諦め、この世界で生きていくとしても、このVMBの力はきっとあらゆる面で俺の手助けになるはず、その力を使うことに制約があるのは正直困る。


 M1911A1によって頭に穴が開いたゴブリンに手を触れてみる、しかし何も起こりはしない、それはただの死体でしかないのだ、パワードスーツが都合よく死体を吸収するなんてこともなかった。


 どうする……奥にはまだ複数のゴブリンと攫われたと思われる人が居るはずだ。ゴブリンの死体の横にしゃがみ込みながら、この巣穴の奥を、その闇を見つめて考える。ゴブリンの排除はきっと難しくない、距離をとって射撃してしまえば、接近される前に斃せる。しかし、どれほどの銃弾を失うか、そもそもSHOPで弾を買えるのかをまだ試してない……試すか?


 俺は左腕に装着されているTSSを起動し、スクリーンモニターをタッチし弾薬購入画面へと操作していく。しかし、その購入を完了する前に事態は動き出す。



「きゃあああああああああ!!!」



 女性の悲鳴が巣穴の奥の闇から響いてきた、思わずTSSの操作を中断しすぐさまM1911A1をその闇へ向けて構える。


 俺は何を余裕かましてるんだ! 悩むのは後だ! 今、この状況を乗り越えるくらいの装備と弾薬はあるんだ!


 俺はM1911A1の構えを一度解くと、ヘッドゴーグルのマップを確認し、改めて周囲を確認する。まだMAPにはマスクされてる部分がある、もう少し奥か?


 ゴーグルを再びNVモードにし、俺はゆっくりと巣穴の奥へと移動を再開した。




◆◆◇◆◆◇◆◆




 さらに100mほど進んだ所で、最終目的地点はマップに映っていた。巣穴の道が大きく広がり、行き止まりの小部屋のようになっている。そこからゴブリンの奇声が複数と、何かを叩きつけるような音が響いている。


 都合よくゆるいカーブの先にそこはあった。まだ距離はあるが、これ以上近づくと中にいるゴブリンに見つかるかもしれない、俺はゆるいカーブの内側に身を隠し、M1911A1を一度腰にしまいMP5A4に装備を切り替える。


 安全装置を3点バーストに切り替え、膝立ちの体勢からアイアンサイトを覗き、ヘッドゴーグルに表示されるクロスヘアとラインを合わせていく。アイアンサイトがクロスヘアと一致しゴブリンを捉え続けると、ヘッドゴーグルがそのアクションに反応し、クロスヘアを中心に周囲がズームアップされる。


 VMBは基本装備として、ヘッドゴーグルを必ず着ける。その為、銃器の様々な照準器と機能が被ることがあった。また、アイアン派とも呼ばれている照準器を一切使わないプレイスタイルへの補助的な機能として、ゴーグル自体に望遠機能が付けられている。ただし、それも万能にならないようにと配慮され、望遠機能は若干の時間を必要とする自動発動型となっていた。


 あのゴブリン、あの女の人の頭の横をワザと叩いてるのか?! なんて醜悪な……女の傍に3匹、少し離れて13匹……ちょっと多いな、女の周囲の3匹をまず排除、その後はこちらに気を引かせて一気に斃すか……。


 俺はMP5A4の安全装置を入れ、装備をM1911A1に戻す。まだサイレンサーは付いたまま、弾は5発はあるはずだ。すぐ傍に女性がいるため、誤射しないように慎重にサイトを合わせていく、ゴブリンの頭-照星-クロスヘアと狙いが定まると、僅かにだがズームされる。ハンドガン系だとズーム倍率は1,1倍しかないのだ。


 両手に構えたM1911A1は震える事なく、ゴブリンの頭を捉え続けている。これから再び命を刈り取ろうと言うのに、やはりそこには何も感じないらしい、意外と俺って冷酷なんだな、そんなことを思いながらトリガーを引く。


 空気の抜けるような音と共に、女に跨り棍棒を振り回して奇声を上げていたゴブリンが倒れこんだ。続けてその傍にいた2匹へクロスヘアを滑らせ2発-2発、こちらは誤射の可能性は低い角度だったので、必ず処理する事を優先して2発ずつ撃ち込んだ。

 

 少し離れた所にいた他のゴブリン達は突然倒れた3匹に意識を囚われている。その隙にMP5A4へ持ち替え、3点バーストにセットし自分に近い所にいる奴から頭へと狙いを定め……。



「GyaGuGyaaaa」



 奥のほうでゴブリンが奇声を上げた途端、他の12匹が全てこちらを振り向いた。しかしやることは変わらないMP5A4のトリガーを引く、発砲音に合わせ閃く赤いマズルフラッシュ。そしてパワードスーツで固定しても必ず発生するリコイル、この発砲による銃身のブレ、照準のブレはどれほど無反動に近づけても必ず発生する、なぜならばVMBがゲームだからだ。やはりこのMP5A4はVMBのMP5A4であって、実銃のMP5A4ではない、ゲーム内と同一のリコイルが発生するのをコントロールし、最小に抑えて、次の標的の頭へとクロスヘアを滑らせる。

 

 射撃中のクロスヘアの拡がり、スプレッドの発生を確認し、やはりゲームのシステムそのままだな、とその収まりをみて再びトリガーを引く、スプレッドは発砲時の弾の飛ぶ先の精度へ影響を与え、クロスへアが拡がりきってる時に次弾を発砲しても、狙い通りに飛んではくれない。


 3点バーストはこの拡がりを抑え、すばやく収縮する機能もあり、特に相手との距離があり精度を要求される場面では、フルオートよりもこちらを多用していた。リズムよく3点バーストの発砲音と、閃く発射火薬の燃焼、マズルフラッシュが暗闇に踊る。ゴブリンの数が瞬く間に半数をきろうとした時、狙いを付けたゴブリンの上半身が突如破裂した。


 何?! なんだあれは?


 ゴブリンの上半身を吹き飛ばしながら、何かの塊のような物が血しぶきを舞い散らせこちらに飛んでくる。


 飛び道具?! 魔法か!


 俺はすぐさま身を隠していた壁際から、更に後方へと下がった。同時に俺が身を隠していた岩にそれが着弾し、轟音と共に壁を抉り取っていた。すごい威力だ、フラググレネードくらいだろうか?


 初めて目にした得体の知れない物は、やはり魔法攻撃だったようだ。ここが異世界と認識しだした時点で、魔法の存在は頭にあった。まさかゴブリンに使われるとは思わなかったが、この威力を自由に撃たれてはこちらのアドバンテージが損なわれる。すぐに反撃をしたいが、焦らずMP5A4のマガジンを交換する。敵の次弾が飛んでこないのを確認すると俺は再びMP5A4を構え、魔法を撃ち出した奴を探した。


 あの長い杖みたいの振ってる奴だろうか? 着てる服もなんかソレっぽいし。俺はすぐさま奇声を上げて、生き残りに指示を出しているような動作を見せている、一番奥のゴブリンの頭を撃ち抜いた。そしてそのまま生き残った数匹にもクロスヘアを合わせていく。




◆◆◇◆◆◇◆◆




 視認できていたゴブリンを全て撃ち斃し、マップに新たな光点も表示はされていない、後方からも接近は無し、どうやら全滅させたようだと俺は判断し、ゆっくりと小部屋へと歩を進める。


 あの女の人、死んでないよな? もぞもぞと動いているのは見える、マップにも光点で表示されているので、死体ではないと思うが、こちらに気づかないのか、さっきの魔法を撃ってきたゴブリンを見ているようだった。


 あ、こっち見た……人だ、間違いなく……ゴーグルをNVモードからノーマルへと戻し、ゆっくりとその人に近づき声を掛けた。



「あの、だいじょうぶですか?」 



 女の人は一瞬怪訝な表情を見せ、こちらに答えてくれた。



「-----? ------!」




 言葉がわからなかった。




使用兵装

M1911A1

ジョン・ブローニングが設計しアメリカのコルト社が開発したM1911の改良型、一発でも敵の動きを止められる威力を求められ開発された45ACPという大口径弾を使うハンドガン


MP5A4

ドイツのヘッケラー&コッホ社製のサブマシンガン、世界でもっとも使用されているサブマシンガンであり、そのバリエーションも非常に多く。軍隊、警察、対テロ部隊等、幅広く活躍する名器である

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