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「シュバルツです。呼んでいると聞いてきましたが」



 射撃練習を終えてキャンプへ戻り、遅めの昼食を摂っていると、バロルドさんとキースさんが俺を呼んでいるとキャンプのギルド職員が伝えてくれた。

 食べかけの昼食を急いで腹に入れ、俺は探索本部のテントへと入っていった。

 中にいたのはバロルドさんとキースさんの他に、多数のギルド職員と冒険者が集まっていた。



「シュバルツ君やっと来たか、キャンプに居なかったようだが、どこへ行っていたんだい?」


「お待たせしたようで申し訳ない。キャンプの外でしゃげ……訓練をしていました」


「へぇ、地図屋だと聞いていたが、殊勝な心がけだな」



 バロルドさんの横から声をかけてきたのは集まっていた冒険者の一人、大柄な普人族の男で髪は茶色の短髪、プレートアーマーを装着し、年の頃は30代前半といったところだろうか。冒険者として一番脂の乗った、活力に満ちた雰囲気をまとっている男だ。



「あなたは?」


「俺はランクA冒険者 ”ラフレシア”のライネルだ」


「初めまして、ランクD冒険者のシュバルツです」



 ランクA……ミーチェさんやフラウさん達がランクBだったが、このキャンプにはそれよりも上の高ランク冒険者も出入りしていたのか。

 それにラフレシアって……クラン名だとは思うが、俺の知ってるラフレシアと言う響きのものは二つ、東南アジアで植生する赤い大きな花の、腐臭花なんて言われるあの花。もしくは中国の大会に行った時に御馳走になった、ドラゴンフルーツの花とか言われたスープの食材の白い花、たしか覇王花と書いたか、あれもラフレシアと言う呼び名だった……。



「お前も討伐に参加するそうだな、地図屋」



 この男……。



「ええ、山茶花サザンカのメンバーと、フルで参加する予定になっています」


「あの女狐どもか! いいか地図屋、女は乗るものであって、乗られてる奴は男じゃねぇ、おまえは――」


「ライネル、その辺でお終いにしろ。シュバルツ、呼んだのは明日の討伐に関してだ。明日まで待たないと山茶花サザンカは合流できないだろう、明日の朝一で来るか、昼過ぎかは判らないが」



 キースさんによってライネルの横槍は止められたが、このライネルという男は気に食わないな……何か言い足りないのか、「チッ」と見事な舌打ちを鳴らしながら机を離れていった。

 キースさんとバロルドさんが俺を呼んだ理由は、明日の討伐のスケジュールに関してだった。俺は山茶花サザンカの合流を待たなければいけないので、先に別の討伐パーティーが明日の朝一番で迷宮へ向かう。

 ライネルたち覇王花ラフレシアのメンバーによるパーティーと、ギルド職員達で構成されるパーティー、この二つのパーティーが先行する。


 先行するパーティーの内、ギルド職員により構成されたパーティーは、清浄の泉で留まり拠点化作業をおこなう。清浄の泉はそれほど広いスペースではないが、緑鬼の迷宮の深部がどれほど広がっているか判らない以上、少しでも体力・精神力を回復できる野営地を用意する必要がある。

 これをギルド職員のパーティーが担当し、完了次第キャンプへと帰還し、拠点と往復しながら食料などの物資を運ぶ役目を担当する。


 覇王花ラフレシアは清浄の泉を越え、地図を作成しながら討伐に向け迷宮を探索し、3日探索し1日キャンプで休息を取る。

 俺と山茶花サザンカのメンバーは、明後日から討伐へ向かい同じように3日探索1日休息で行動する。

 同時に城砦都市バルガより、迷宮討伐の為の騎士団が来る予定になっているという、騎士団も同じサイクルで討伐を行うことで、常に討伐パーティーが清浄の泉の奥にいる事になる。


 俺達が話している間、ライネルは離れた机で覇王花ラフレシアのメンバーと話していた。覇王花ラフレシアの構成は、プレートメイルを着ているライネルが前衛、魔術師のローブを着ている普人族の女2名が後衛のようだ。残り3名の内2名の男は軽装備で、最後の一人は2m近い身長にライネルよりも更に分厚そうなプレートメイルを着込んでいる男だ。覇王花ラフレシアは全て普人種で構成されていた。



 その内の一人、軽装鎧を着た男がこちらの話が終ったのを見て近づいてきた。



「たしかシュバルツだったよね、ちょっといいかな。俺はランクA冒険者”覇王花ラフレシア”のウィル、俺が覇王花ラフレシアの地図担当なんだ、君の地図を見せてもらったよ」



 そう言いながらこちらへ手を差し出してきた、この異世界にも握手という文化が存在するのか……いやもしかしたら……。


 出された手に俺も手を合わせ、緑鬼の迷宮での地図の相互提供などの取り決めや、地図作成に関する情報の共有と不干渉の確認などをおこなった。

 このウィルと言う青年は先程のライネルとは違い、礼儀を弁え、知性を感じさせる男だった。ブラウンの短い髪は手入れを欠かしていないのか、冒険者と言う職種には似合わないほどのツヤがあった。


 こういう冒険者もいるのか……しかし、この男も根本的にライネルと同じなのかもしれない、あいつのちょっと失礼な物言いに関して、何もなかったかのように話しかけてきた。あれが、こいつらの中での当たり前なんだろう。



「ウィルさん、地図の作成場所ですけど、清浄の泉のスペースはそちらで使って下さい。俺は適当にその手前の小部屋掃除して描きますから」


「いいのかい?」


「ええ、何も問題はありません。それに俺、見られてると集中できないんですよ。静かな空間を作って、そこで作業をします。バロルドさん、キースさん、俺はこの辺で失礼します。それと作業用天幕の道具を少し、迷宮へ持って行きたいのですが構いませんか?」


「あ、ああ、君の為にレミさんが手配したものだから好きに使ってくれ」


「ありがとうございます、では失礼します」





◆◆◇◆◆◇◆◆





   

 翌朝、覇王花とギルド職員のパーティーは、緑鬼の迷宮へと向かっていった。  俺の出発は明日になるが、山茶花のメンバーがキャンプに到着するまでは暇になる。その間は、覇王花の代わりに緑鬼の迷宮周辺の掃除だ。迷宮の吐き出す魔素に誘われて近づく、魔獣・亜人種を潰して回った。


 ついでにSCAR-Hの実戦訓練とさせてもらった。P90を携帯しながらの高機動ムーブの感覚や、マガジンの交換、通常のゴブリンがヘッドショット一発で斃れる事の確認、貫通力の確認など、本当にSCAR-Hで良いのかどうかを、色々と考えさせられた。 


 元の世界の更に現実ならば、ARFアサルトライフルでは大型の獣に対して力不足だ、これは狩猟の常識だ。しかし、VMBというゲーム内で設定された7.62×51mm NATO弾の攻撃力は、現実の実銃から放たれる威力を確実に上回っている。 

 何故それがわかるか? ゴブリンにヘッドショットを喰らわせたら頭が爆ぜたからだ。実銃で人の頭を7.62x51mm NATO弾で撃っても、頭そのものが首から消えるほどの爆ぜ方はしない。


 この威力に頼もしいと思う反面、恐怖した。これは人に向けて撃ってはいけない、前に城塞都市バルガの道具屋で冒険者グループに絡まれたとき、俺はFive-seveNでそいつの膝を撃ち抜いた。Five-seveNの5.7x28mm弾は貫通力に優れた弾丸だ、だから膝を打ち抜き貫通しただけで終ったが、もしもあの時7.62x51mm NATO弾を使用していたら、膝が爆ぜて脚が吹き飛んでいたのは間違いないな……。


 7.62x51mm NATO弾だけではなく、早々にショットガン系の威力の確認や、スナイパーライフルの狙撃関係も確認せねばならない、俺が持つ銃器の種類はかなり多い、総数なんてもはや覚えていない。

 これから向かう緑鬼の迷宮だけでなく、今後向かう様々な迷宮に合わせ、最良の銃器をチョイスできるよう、VMBのシステムと力を全て把握しなければならない。


 そう心に決め、俺は迷宮に誘われてやってくる魔獣や亜人種たちを狩っていった。ちなみに素材は一切剥いでいない。試しにとグラスウルフの皮剥ぎに挑戦したが、途中で手や周辺が血だらけになって吐いた。回収するのは魔石が手に入りそうな時だけでいいと、同様に心に誓った。






 朝から昼にかけて緑鬼の迷宮周辺を掃除し、キャンプへ昼休憩を取りに戻ると、食堂となっているテントに女性冒険者の一団がいた。その中に、見覚えのある二人もいる。



「あー! 戻ってきたにゃ!」


「お帰りなさい、ミーチェさん、フラウさん」


「ついさっき到着したところよ、シュバルツ。紹介するわ、山茶花のメンバーで重戦士のマリンダ、剣士のルゥ、それと魔術師のラピティリカ・バルガよ」


「ランクD冒険者のシュバルツです、よろしくお願いします」


「ランクA冒険者”山茶花”のマリンダだ、よろしく頼むなシュバルツ!」


 マリンダさんは女性とは思えない、と言うと失礼になるかもしれないが、身長が俺よりも高い、190cmはあるんだろうか、坊主頭に近いほどの短髪で赤髪、褐色の肌、もしかしてギルド調査員のレミさんと同郷だろうか? 整った顔立ちをしているが、非常に大きな体躯と、俺の何倍あるんだっていうくらい腕が太い……。



「ランクA冒険者”山茶花”のルゥ、よろしく」



 ルゥさんは逆に細身で、長い黒髪を後ろで一つに纏めている。そして黒い目の和風美人といった感じ……物凄くこちらを見ている……剣士だと言うが、腰に佩いているのは西洋剣には見えない、少し反りがある、もしや刀だろうか?



「ランクC冒険者”山茶花”のラピティリカ・バルガです。 ラリィとお呼び下さい、よろしくお願いしますね、シュバルツさん」



 最後に紹介を受けたラピティリカは、この一団の中で一番年若だろう。俺を含め、皆20歳は超えているであろう中で、この子だけは明らかに十代半ば、背も150cmを超えたくらいだろうか。金髪を短く切り揃えて、白い聖職服の様なローブを着ている。 

 しかしこの子……バルガ……だと? 姓名があるからたぶん貴族とかなのだろうが、バルガとは城砦都市バルガのバルガか? と言うことは、この子は領主の娘って事だろうか。



「ラリィはバルガの領主、フランクリン・バルガ公爵の三女にゃ、でも今は山茶花で修行中なので、余り気にしなくていいにゃ」


「そ、そうですか……改めてよろしくお願いします」



 ミーチェさんが俺の戸惑いを察したのか、付け足してくれた。俺たちはこのまま、食堂のテントで明日からの迷宮討伐について話し合い、お互いのスキルや役割分担を確認し、出発の準備が終る頃にはすっかりと日が落ちていた。






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