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3/31 誤字・空白・描写等修正




 俺は今、マイラル村の西方に設営されたキャンプから、さらに西へと徒歩で移動している。道はない、林の中を目的地へ向かって歩いている。と言っても、俺には目的地の場所は判らない、前を歩く二人の女冒険者の後について行っているだけだ。



「それで、シュバルツは何が出来るにゃ?」



 長い茶色と赤色の縞模様の尻尾を左右に振りながら、前を行く女冒険者の一人、獣人族のミーチェさんが俺に聞いてきた。



「何が? 出発する時に話しましたが、俺は『魔抜け』です。基本的に魔力を必要とする事、物は使えません。ですが……」


「『魔抜け』にゃ! 『魔抜け』は初めて見たにゃ! でもDランクにゃ、何が出来るからDランクにゃ?」


「……魔力を必要としない、多様性のあるスキルが使えます。 そのスキルでDランクまできました」



 俺も語尾に「にゃ」が付く人をはじめてみたよ……。



「それで、そのスキルは何ができるにゃ?」


「ミーチェ、お喋りはその辺にしなさい。依頼内容には彼のスキルは口外しないとあるのよ、つまり余計な詮索も無しよ」



 ミーチェさんの横を歩く、魔術師のローブと思われる装いにまさしく魔術師だと言わんばかりの木製の長い杖を持つ、蒼髪のエルフ、フラウさんがこちらを怪しむような目つきで見てくる。 

 彼女にも色々と思う所があるのかもしれないが、依頼内容に従い詮索はしないでいるといった感じか。



「俺も聞きたいことがあるのですが、さきほど言っていた山茶花サザンカと言うのは何ですか?」


「私達が加入しているクランよ」


「山茶花は女性冒険者だけのクランにゃ、王都に拠点を持つ中堅クランにゃ」



 クランというのは元の世界で言う正しくclan、もしくはギルド、チームといった仲間、同志の集まりなのだろう。俺もFPSチーム「P0wDer」に所属していた、それがこの異世界では家名のパウダーとなっているわけだが。



「なるほど、クランの名称でしたか。クランに加入する冒険者は多いんですかね」


「駆け出しから加入する奴はいないにゃ、クランが加入を認めないにゃ、最低でもDランクは必要にゃ、でも『魔抜け』を加入させた話は聞いたことがないにゃ」



 クランに加入するメリットは色々あるだろう、ソロでは達成が難しい依頼もクランを通してパーティーメンバーを組めば難易度は低下する。これに関してはクラン未満の固定パーティーでも同じかもしれないが、依頼内容によっては大規模なパーティー、レイドと呼ばれる事もあるが、より多くの冒険者で事に当たれば依頼達成も容易くなる。 


 まぁ、この場合は報酬を多人数で割る事で一人当たりの報酬額は減るわけだが、そこをクランとして報酬を得る形を取る事で、共有財産として担保することが出来る。これは野良のレイドでは出来ない事だ。


 さらに山茶花サザンカというクランは女性冒険者の集まりだという、この異世界において、女性の地位というものが元の世界と比べてどのような位置にあるのかはまだよくわからない。

 しかし、冒険者という職業で考えても依頼内容は元より、同業者の男性にも気をつけなければいけない、つまりはそういうことなのだろう。


 俺はそんなクランについての雑談を交わしながら二人の向かう先に目をやると、緑鬼の迷宮の入り口が見えてきた。牙狼の迷宮同様に自然界の中に不自然に開く大穴は、不気味な闇をその口に漂わせていた。



「着いたにゃ、ここからはシュバルツが先頭にゃ、4時間ほどでキャンプに戻るからそのつもりで探索するにゃ」


「わかりました、では行きましょう」



 俺は背に廻していたP90を前に廻し、腰のポーチからタクティカルライトとサイレンサーを取り出し装着した。サブ兵装のFive-seveNにもサイレンサーを取り付け、収納していたヘッドゴーグルのレンズを伸ばし、準備万端で迷宮へと侵入しようとしたが。



「それなににゃーー! ヘルムから何か伸びたにゃー! それにその短杖は何にゃ?! 魔力無いのになにするにゃ?!」



 こ、この猫さんは好奇心が旺盛なようで、尻尾をブンブン振りながら目をキラキラさせてP90を見ている……俺は「秘密です」とだけ答えて前へと進んだ。









 緑鬼の迷宮の中は牙狼の迷宮と違い、向こうが土壁の地下道的な雰囲気だったのに対し、こちらは整然と詰まれた石造レンガによる地下通路といった感じである。 道幅は6m程しかないが天井までは3mほどか、地下通路に連続するアーチと石畳は、魔獣や亜人種が蠢く領域というよりも、何かヨーロッパにある城下町と城を繋ぐ地下通路のそれとよく似ていた。 

 しかし、ここで乱戦になると剣や長物を扱う冒険者には戦闘しにくいかもしれない。そしてぽつぽつと光を放つ白い花、白光草が咲いてはいるが地下通路内は非常に暗い、俺はここまで使う事のなかったタクティカルライトをONにし、懐中電灯のように正面を照らし、ヘッドゴーグルも暗視装置のNVナイトヴィジョンモードへと切り替えた。



「~~~~、~~~~、光よ」



 俺の後ろでフラウさんの声だろうか、振り返るとフラウさんの持つ長杖の先に、光の玉が浮いている。やはり魔法を唱える時の、魔言と呼ばれる魔力を込めた言葉は聞き取る事ができない。これも俺が『魔抜け』だからなのだろう、俺のタクティカルライトの光や光玉の光に、ミーチェさんがまた騒ぐのかと思ったが、さすがはBランク冒険者ということか、迷宮内部に入った途端に目つきが変わり、周囲を警戒しながら静かにしている……いや、尻尾がブンブン振られてはいたが……。



「まずはこれまで探索されていない場所を目指します、既に地図が出来ている場所を改めてなぞっても時間の無駄ですからね」



「「わかったわ(にゃ」」



 後ろに続く二人はそれだけ答え、俺の歩く数m後ろをついてくる。俺はバロルドさんに渡された、製作途中の地図の縮小版を見ながら、ヘッドゴーグルに表示されるマップとの差異を確かめつつ、まだ足を踏み入れていない通路へ向かって進んでいった、勿論白光草の種を蒔きながらだ。







「正面、左折した先に3匹」


「わかるのにゃ?」


「ミーチェ、捉えてます?」


「まだ臭わないにゃ」


「足音が軽い、普通のゴブリンだと思いますよ」



 後ろの二人の小声の相談は、バッチリとイヤーパッドが拾っているが、そこは軽く流してP90の安全装置をフルオートへ廻す、すばやく左への曲がり角でリーンし、先を窺う。 



 やはりあれはゴブリンだ、前に見た奴と面が一緒だ。マップ表示圏内に他の光点はなし。



「ゴブ3確認、攻撃しますよ?」


「え、シュバルツそこから何するにゃ?」



 気付けば俺の真横に、俺の真似をして背を通路の壁に預けてこちらを見るミーチェがいた。



「何って攻撃するんですよ、俺の光源見られちゃってますからね、来ますよ奴ら」



 殆ど光のない地下通路で、俺のタクティカルライトの光やフラウさんの光玉は非常に目立つ。こちらが視認するタイミングで、間違いなく敵はこちらに気付く、こちらへ駆け寄ってくる前にこちらが一方的に攻撃できる距離で……ヤる。



「やりますよ」



 特に返事は無かったが、ミーチェさんの尻尾がピシピシと俺の足を叩く……サイトを覗き、クロスヘアと照星を左端のゴブリンの顔に合わす、望遠機能が作動しゴブリンの醜悪な顔がズームされる。

 奴等は俺のタクティカルライトの光源を見て何か喚いているようだが気にしない、フルオートのトリガーを指切りで発砲していく、3発-3発-3発。今日は調子がいい、綺麗に指切り3発で発砲し、撃つごとにクロスヘアを横に滑らせて左、中央、右とゴブリン3匹の頭に穴を開けていく。



「スリーダウン、行きますよ」



 横のミーチェさんとフラウさんを一瞥し、前へとすす……。






「それ何ニャーーーーー!!!!」



 




 進めなかった。





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― 新着の感想 ―
[一言] 「それ何ニャーーーーー!!!!」 いちいち鬱陶しいね。
[一言] 完結しているお話に指摘するのもなんですが(笑)猫の尻尾フリフリは怒りの意味合いが強いですよ、犬と違ってイライラしてます(笑)
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