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 マイラル村へと到着した翌日、この村にも城塞都市バルガ同様、朝昼夕と決まった時間に鐘が鳴らされる。鐘があるのは村長の家らしく、朝7時に鳴らされる鐘と共に起床した俺は、一階の食堂で朝食を摂り、総合ギルド出張所へと向かった。


 総合ギルド出張所の前には、緑鬼の迷宮キャンプへと運ばれる物資と思われる、木箱や大きな布袋を幾つも積んだ荷馬車が3台止まっており、荷馬車の傍で総合ギルド職員のキースさんが、別の職員らしき男性が提示する書類にサインをしていた。



「おはようございます、キースさん」



「おはようございます、シュバルツ君。 もうすぐ出発できますが、準備は大丈夫でしょうか?」



「ええ、俺の準備は完了しています、何時でも行けますよ」



「それでは、先頭の馬車の御者台で座って待っていて下さい、すぐ出発します」



 俺は先頭の荷馬車の御者台へ向かい、当然ながら馬は操作できないので、台の横へと座った。程なくして、キースさんも同じ馬車の御者台へと座った。



「では出発します。キャンプまでは、2時間ほどで到着する予定です」



「2時間? 思った以上にマイラル村に近い場所で見つかったのですね」



「ええ、魔獣や亜人種が溢れる前に、入り口を押さえられたのは幸運でした」



 道中では、キースさんにキャンプの話や、緑鬼の迷宮の現在わかってる範囲での情報を確認できた。緑鬼の迷宮と名付けられたソレは、まだ地下一階部分しか探索されていないが、現出している魔獣・亜人種は、ゴブリン種しか確認できていないそうだ。


 種と言うからには種類がいる、通常のゴブリンの他に、以前俺が倒したゴブリンメイジ、他にはゴブリンファイター、ゴブリンアーチャー、ゴブリンアサシン等々、出るわ出るわの多種族ぶりだ。

 キースさんの話では、地下一階からこれだと、下の階層にはゴブリンの種としての上位格、ホブゴブリン種やオーガ種がいる可能性があるという話だ。

 とは言え、生まれてからそう月日が経っていないであろう緑鬼の迷宮では、下層と言えども、そこまで強力な亜人種はいないかもしれない、あくまでも可能性の話らしい。


 そんな話を聞きながら馬車は進み、キャンプが見えてきた。キャンプは言葉そのまま、大小のテントが設営されている。

 テントの形は俺が想像していたような三角のテントではなく、軍用テントに似ているだろうか、四角形の箱型をしているものが、一つの集落を形成するかのように整然と並んでいた。



「到着しました、ここが緑鬼の迷宮探索の前線キャンプです。あの一番大きな天幕が、探索本部になります」



 キースさんが指し示したテントは、周囲のテントの倍ほどの大きさがあり、よくよく周囲を見渡してみれば、この一際大きなテントを囲うように、他のテントは設営されていた。城塞都市バルガより連なってきた馬車三台は、探索本部から少し離れた、物資の集積場に割り当てられているテントの前で停止した。



「シュバルツ君は私と一緒に探索本部へ、他の者達は荷物を倉庫へと頼む」



 キースさんの指示に、後ろの馬車に乗っていた男達が、威勢のいい返事と共に作業を開始し、荷物を荷解き倉庫になっているテントへと運んでいった。


 俺はキースさんの後に続き、探索本部だという大きなテントへと入っていった。 中にはいくつかの机が並び、一番奥には緑鬼の迷宮の地図だと思われる、大きな迷宮地図が貼られたボードが立っていた。

 まるで学校の教室のような印象を持つテントの中で、俺は奥の地図前の机まで連れられて行くと、そこに座っていたのは、以前マイラル村で出会ったもう一人の男性職員、バロルドさんだった。



「おかえりキース、それと隣の君は……シュバルツ君だったかな」



「はい、Dランク冒険者のシュバルツです」



「レミさんがな、彼に地図作製の協力要請を出したんだ。それでこのキャンプまで連れて来た」



 バロルドさんは丸眼鏡をかけた小柄な男性で、俺が初めてこの人を見た時に思ったのは……この異世界にも眼鏡があったのか……だ。



 バロルドさんとキースさんは、マイラル村の総合ギルド出張所の担当職員だったこともあり、このキャンプの責任者をしているそうだ。二人から、現在までの製作途中の迷宮地図を見ながら、細かい説明を聞き、さっそく今日の昼過ぎから探索に向かう事になった。


 

「地図の作成が終わるまでは、基本的にこのキャンプで寝泊りをしてもらいます。 後で寝所へ案内しますが、こういった場所なので、集団での寝所になるのは了承してもらいたい。その代り、地図作製の場所は、専用に小さなものになりますが天幕を用意します」



「わかりました、御配慮ありがとうございます。探索に関してですが、俺ひとりで向かっても?」



「いえ、こちらで二名つけます。シュバルツ君の戦闘能力が判らないので、いきなり一人では向かわせられません。キース、ミーチェとそれにフラウを呼んで来てくれないか」



「わかった、呼んでこよう」



「キースに呼んで来て貰う間に確認させてもらいたい、レミさんからの手紙によると、君のスキルや地図作成法を口外しないと言う事だが、最低限、私とキース、それに今から来るミーチェとフラウの間では、共有させてもらいますが宜しいかな?」



「ええ、条件として口外しないようにとは付けましたが、探索や地図作製に支障が出てはしょうがありません、構いませんよ」



「ありがとう、それと実際のところ、ランクDの君の戦闘能力はどのくらいあるのかな?」



「説明がしにくいですね、まだ牙狼の迷宮の地下三階までしか探索していませんが、そこまで無傷で降りれる位と言えばどうでしょうか」



「無傷? それなら緑鬼の迷宮の一階は十分だろう」



 そこまで話しているところで、天幕にキースさんと二人の女性が入ってきた。



「連れてきたぞ、獣人族のミーチェとエルフのフラウだ」



「ランクB冒険者、”山茶花サザンカ”のミーチェにゃ」



「同じくランクB冒険者、”山茶花サザンカ”のフラウです」



「ランクD冒険者のシュバルツです」



 キースさんが連れてきた二人の女性の一人は、獣人族それもこの人は猫系だろうか、赤髪の上から耳が二つ、細身でしなやかそうな体躯とそれに反発するように突き出た胸……でかい……を持つミーチェ。

 それと、蒼髪を伸ばしたストレートヘアーが腰付近まで下りて、こちらも細身のエルフの女性フラウ。 

 獣人族のミーチェさんが皮鎧形の装備に対して、こちらはローブだろうか、腰のベルトにより締まったくびれがよくわかる。長袖も細く、全体的に華奢な印象を持たせる装いだ。



「待っていたよ二人とも、二人にはこちらのシュバルツ君の護衛として、迷宮に入ってもらいたい。彼には迷宮の地図作製をしてもらうのだが、注意点が一つ、迷宮内で見た彼の地図作成法やスキルに関しては、私とキース以外には口外しないように、いいね?」



「それが依頼内容なら口外しないにゃ、でもランクDのお守りは大変にゃ、報酬上げて欲しいにゃ」



「そうね、彼は地図作製以前に戦えるの? 見たところ、剣も杖も何も持っていないようだけど」



「心配は要らないよ、ちゃんと戦闘能力も有しているそうだからね。それで、さっそく昼から向かって欲しい、探索の準備をしてまたここへ戻ってきてくれ」



 そんな三人のやり取りを聞きながら、俺が考えていたことは一つだ。



 にゃ だって! 語尾に「にゃ」って付いてるよ! すっげぇよ! 俺の異世界ファンタジー始まった!




 その語尾の事で頭は一杯だった。




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[一言] >にゃ (*´Д`*)わかる
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