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書籍版「マヌケなFPSプレイヤーが異世界へ落ちた場合 3」は9/10発刊予定!

よろしくお願いします!!


8/29 微修正

リハクは積み上げてきたものと違ってたので修正


 晩餐会の会場であるフライハイトから、カーン王太子やアーク王子、そしてゼパーネル宰相たちを装甲兵員輸送車タイフーン―Kに乗せて脱出させ、地下からの脱出を図るクルード卿たちの援護をするため、俺とバルガ公爵の専属護衛ヴィーは襲撃者たちの気を引くために動き出した。


 足元に転がしたスモークグレネードから噴射される煙幕は瞬く間に俺とヴィーの姿を包み込む。


 突然会場に出現した巨大な箱が動き出し、気づけば暗殺目標が会場から姿を消したことに襲撃者――“覇王花ラフレシア”のライネルは状況を正しく認識することができていなかった。


「ちっ、何がどうなっていやがる。馬もなしで動くあの荷台はなんなんだ? それにこの煙はどこから湧いてきやがった」


 そして、状況が把握しきれていないのは会場の警備を担当していた中央騎士団も同じ――。


「今のは何だ? 王太子たちはどこへ行かれた?!」


 混乱が広がる会場に、更なる波瀾が舞い降りる――。


 煙幕からジャンプで飛び出し、前方回転しながら新たに召喚した近接武器――スレッジハンマーを鬼鋼兵ミニオンへと投擲する。


 鬼鋼兵には、ウィンチェスターM94では十分なダメージを与えることができなかった。M94が力不足なわけではない、鬼鋼兵が硬すぎるのだ。

 あのサイボーグのような装甲を打ち破るには、もっと単純なパワーが必要だと判断した。


 スレッジハンマーはライネルを守るように傍に立つ鬼鋼兵に直撃し、シンプルだが圧倒的な暴力の塊は鬼鋼兵を吹き飛ばし、会場の壁へと埋め込んだ。


 そしてジャンプからの着地――ライネルの目の前に降り立ち、俺の姿を見た瞬間から殺気と激情を溢れ出している凶暴な目を見抜く。


「きっ、貴様がなぜここにいる!! 黒面のシャフト!!」


 そう――煙幕から飛び出す直前に、アバターカスタマイズの衣装セットを変更し、オーバーコートにドイツ親衛隊黒服、そして黒いタクティカルケブラーマスク――俺はシュバルツからシャフトへと姿を変えていた。


「シャフトだ……」


「黒面!」


「あれが“黒面のシャフト”?」


 突然現れたシャフトに驚いたのは、中央騎士団や会場から出ていく来場者たちも同じだった。


「その黒装束には見覚えがある――“覇王樹サボテン”だな?」


 その一言に、黒頭巾で顔を隠すライネルの目が歪むのが見えた。そして視線が左右に動き、俺の後方を探るように動く――。


「そうか、そういうことか……どこまでもムカツク野郎だな、地図屋――いや、黒面のシャフト」


 この男も馬鹿ではない。姿を変える瞬間は隠しても、晴れていく煙幕からシュバルツの姿が消え、目の前に黒いケブラーマスクで素顔を隠す男が現れれば、自然と一つの答えが出るだろう。


「お互いに裏の顔があったというわけだ」


「王太子たちをうまく逃がしたようだが、死ぬ時が先延ばしになっただけ、あいつらに逃げ場はない」


「それはどうかな? 俺が守っているものを簡単にやれると思うな……“魔術師殺し”、魔鎧“混沌の大地テロカオッソ”、六人のピエロ……お前たちが何を使おうが、すべて通用しなかったぞ?」


「あぁ、あぁそうだな、その通りだ――ウィルもギャラックも貴様に負けて死んだ――」


 え? ウィルとギャラックを殺したのが俺?


 平静を装いつつも、ケブラーマスクの下ではライネルの言葉を反芻し、彼らのことを思い出していた。


 ウィルは“覇王花”の地図作成を担当する軽戦士、そしてギャラックも同じく“覇王花”のメンバーで盾役の重戦士だった。その二人と、俺が倒してきた“覇王樹“の暗殺者たちを重ねていく――。


 そうか、“魔術師殺し”を使って襲ってきた暗殺者がウィル、そして魔鎧を着て単独で勝負を挑んできた黒騎士がギャラック、そういうことか……。


 両者とも、戦闘の果てにその素顔を確認できないほどの結末を迎えていた。だが、あの髪や体躯を思い返せば、符合する特徴は数多く見られた。

 やはり、王国最大のクランにして、マスターに第二王子を据える“覇王花”が、王国の裏で暗躍する闇ギルドの一つ、“覇王樹”だったか……。

予想や想像をしていなかったわけではないが、結論を出すことを急がずに、そうではないこと願っていた。


「――だが、俺までも簡単にやれるとは思わないことだ。王競祭で貴様を仕留めそこない、フェリクスは貴様の暗殺を後回しにすることにしたが、今ここで出会えたのは運がいい」


 サブマスターまでもが“覇王樹”と繋がっているか――やはり、“覇王花”と“覇王樹”は表裏一体……か。


 情報を整理しつつ、五体の鬼鋼兵の位置、会場から脱出していく商人や貴族たちの動き、外を包囲していた増援部隊の動き、それらすべてを視界に浮かぶマップと集音センサーが捉える音から判断していく。


「王太子たちを追うのは後だ。まずは貴様に全ての借りを返す――女狐の言いなりとお守りしかできない貴様は俺たちの覇道には必要ない、消え失せろ!」


ライネルは怒声を発するのと同時に、左手で腰の後ろから引き抜いた短剣を逆手に持ち、俺の首を掻っ切らんと踏み込んできた。

その動きに合わせてこちらも一歩踏み込み、右掌底打でライネルの左腕を外から内へと打ち抜き、流れるように肘打ちで胸部を殴打して突き飛ばす――。


胸の急所を打ち貫かれたライネルは息を詰まらせながら、肘打ちの反動を利用して後方へと飛んでいく。

だが、その行為こそが俺の狙い。距離が開いた瞬間にインベントリを意識し、右手をオーバーコートの内側に入れて手元を隠す。


 瞬時に召喚するのは白銀のメタリックシルエットが光るハンドガン――デザートイーグル。


 アメリカとイスラエル、複数の国家の複数の銃器メーカを跨いで設計・生産されてきた歴史を持つハンドガン。その最大の特徴は何といっても自動拳銃カテゴリーにおいて、攻撃力に主眼を置いた強装弾――つまりマグナム弾を扱うことができる点だ。

 マグナム弾はハンドガンの銃弾としては最高クラスの威力を持ち、デザートイーグルに装填する銃弾として同時に選択した.50AE弾は、VMB内において最も攻撃力が高い拳銃弾として設定されている。

 その代わりのデメリットも存在し、.50AE弾選択時には装弾数が七発、そして発砲時の反動とレティクルの拡散値がとても大きく。発砲間隔に気をつけなければ狙った場所に銃弾が飛ぶことはない。


 デザートイーグルを選択した理由は二つ。この場にとどまっている中央騎士団へのFFフレンドリーファイアを避けることと、鬼鋼兵ミニオンの耐久力が想像以上に高いためだ。

 RPG-7やM134 Minigunなど、もっと凶悪な暴威を振りまく武器は多数ある。しかし、味方を巻き込みかねない武器は使用に細心の注意が必要だ。


 オーバーコートから右手を抜く――ライネルは俺の手元に召喚されていたデザートイーグルを見た瞬間にそれが何なのかを即座に理解した。


「鬼鋼兵、俺を護れ!」


 シュバルツとして使ってきた銃器、シャフトとして使ってきた銃器、そしてこの晩餐会の会場でウィンチェスターM94を使って見せた。

 シャフトをつけ狙う上で、俺が使う武器に関する情報は十分集めていたはずだ。そして、実際に目で見て体感すれば――銃口を向けられる危険性を、嫌でも理解するだろう。


 クロスヘアをライネルの右肩に合わせ、トリガーを引いた。


 低く重い発砲音と同時に、火を噴くようなマズルフラッシュのグラフィックが銃口に表示され――その先に鮮血と絶叫が上がった。






カクヨムにて「漫画原作小説コンテスト」に参加しております。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054881622078

3万字ほどの短編です。こちらも応援よろしくお願いします。

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