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3/19 誤字・空白・描写等修正



 Dランク昇級試験の翌日。Dランク冒険者となり、迷宮探索資格を得た俺は、さっそく牙狼の迷宮を探索すべく、巡回馬車に揺られながら、俺以外いない幌の中でアバターカスタマイズを操作していた。


 昨日の試験で探索した時にハッキリとしたが、今後、複数の魔獣や亜人種と戦闘するときには、先制で大きな一撃か相手を状態異常に持ち込むことが重要になる。 銃器は基本的に単一対象への攻撃手段であり、多勢を相手にする時はその連続でしかない、俺には範囲攻撃が必要だ。

 そう判断し、消費するCPクリスタルポイントと相談しながら装備を選び、さらにはそれを一度にどれだけ携帯できるのかを、アバター衣装やマガジンベルトのデザインから考え、組み合わせ、装着し……なんて事を昨日の夜からずっと繰り返している。


 結果、現在の主兵装やサブ兵装はFN P90とFive-seveNで変わっていないが、マガジンベルトには昨日も使ったM84フラッシュバンの他に、M67破片手榴弾、TH3焼夷手榴弾も携帯することに決めた。


 戦闘服としては、基本的にパワードスーツを着るわけだが、これはラッシュガードのようなアンダーウェアのようなデザインをしている。とは言っても、腕周りや足回りは無骨なデザインでボリュームが増しているが、基本的にはアンダーウェアだ。

 

 このパワードスーツの上に、マガジンベルトなどを装着していたわけだが、今回はその上に、M65フィールドジャケットを着て、さらにマガジンベルトを装着している。ジャケットを翻しながらジャンプし銃撃する自分を想像すると、厨二病入ってて少し恥ずかしかったが、それがこの異世界で必要なスキルならばやっていくしかない、と言うかジャケットの前は閉じてるから翻りはしないか、そんなことを思いながら俺は、牙狼の迷宮のある東の森へと降り立った。




◆◆◇◆◆◇◆◆




「こんにちは、牙狼の迷宮に入りたいのですが」



 俺は牙狼の迷宮の管理棟へ入り、受付窓口へとギルドカードを提示し受付担当として座っていた警備兵のような男性へと話しかけた。



「ご苦労様です。それではこちらに、お名前と本日の探索計画を記入してください。ギルドカードを確認させてもらいます」



 出された記入用紙に名だけを書き、探索計画として探索日数1日、探索階層1~5階と記入し警備兵へと返した。

 この異世界に落ちて一つ気付いたことがある。それは文化や文明の発展・進化に違和感を感じることだ。今記入した記入用紙、つまり紙だ、この異世界には元の世界ほどの紙ではないが、和紙に近い質感の紙が使われている。その割には書く道具は羽ペンだ。他にも、水洗トイレのような水の流れるトイレがあるのに風呂がない、正確には風呂が大衆向けに作られていない。 


 他にも、元の世界で見たことのある、ボードゲームの亜種のような物が多数売られているのを見かけた。こうピンポイントで見かけると、考えたくなくとも考えてしまう、自分以外の異世界転移者の存在を……。



「ギルドカードをお返しします、迷宮探索では決して無理をしないでください、探索者の役目は、迷宮討伐はもちろんですが、死なずに帰還することが一番の役目ですからね」



 俺が初探索だとわかったからだろうか、警備兵の男性はそう忠告してくれた。たしかに、無謀な探索を続けて迷宮の糧になるのは、探索者として一番やってはいけないことなのだろう。俺は俺と同じ様な異世界転移者の存在については頭の隅へ置き、警備兵の男性へ礼を言い牙狼の迷宮一階へと向かった。




◆◆◇◆◆◇◆◆



 牙狼の迷宮一階へと降りて行きながら、P90とFive-seveNにタクティカルライトやサイレンサーを取り付けていく。普段から付けたままでもいいのではと思うかも知れないが、付けたままだとバランスが少し崩れるので、持ち運ぶ時に違和感があったり、重たくなったりするので、基本的に移動中は外している。


 今日は地下一階から五階までの、行けるところまで行くつもりだが、基本的に各階層のマップを全て埋めてから、次の階層に行く予定でいる。


 FPSというゲームをプレイする上で重要なポイントの一つが、マップや地形・高低差などを、全て頭に叩き込むことだ。そこから自分にとって有利なポジション、敵が潜伏しやすいポジションなどを覚え、活用していくことで戦闘を有利に進められる。それはきっと迷宮探索でも同様であろう。

 迷宮内には基本的に、即死するような罠のギミックは無いらしい、なので警戒すべきは魔獣や亜人種のみだ。ソロで探索する俺は、常に有利な態勢で敵を迎え撃つように、立ち回らなくてはならない、その為のマップの補完だ。




 迷宮一階のマップ補完の為に、昨日通った地下二階へのルートから外れ、一つ一つルートの先の行き止まりまでマッピングしていく。今向かってる先にも、資料館でキャプチャーしてきた地図によれば、小部屋があるはずだ。すでに俺の耳には、3匹ほどの何かが蠢く音が聞こえている。


 見えてきた小部屋にいるのは……《ホーンラビット》って奴だな。


 小部屋にいたのは、体長50cmほどで頭に長い角の生えているウサギだ。毛は茶色だが目は赤く光っている。

 基本的に、大部屋の敵はこちらが部屋に侵入しないと襲ってこないが、小部屋の敵は、見つかれば部屋から出て襲いかかって来るそうだ。現に今も、3匹のホーンラビットがこちらへ向かって駆け出している。


 こちらもホーンラビットへ向かい駆け出す。まだ距離があるうちに、まずは先頭を走る奴に狙いを定め、走り状態からそのままダウンサイトし、クロスヘアとアイアンサイトのラインを合わせ、低い姿勢で走るホーンラビットの胴体へ向け、3~5発ほどを目安に指切りバーストして発砲していく。


 サイレンサーによって殆ど発砲音はしないが、被弾したホーンラビットの驚愕の奇声が響き、そして転げていく。その後ろを走る二匹は、先頭の奇声に戸惑うことなく、こちらへ低い姿勢のまま、角を前面に突き立ててて飛び込んできた。


 俺は前方へのダッシュから一転、左前方へと回避しながらの、低いスライドするようなジャンプをする。

 明確なシステム用語があったわけではないが、VMBではパワードスーツによって強化された脚力で、超低空の横滑りするようなジャンプをスライドジャンプと呼んでいた。これにより俺は、左へ4~5mほど一気に移動し、その勢いを殺さず、今度は右前方へと、ストレイフジャンプをしながら振り返り、二匹の後ろを取ると指切り-指切りと2連射してホーンラビットを斃していく。



「ふぅー」



 思わず深く息を吐く、斃れたホーンラビットは黒い靄に包まれ迷宮へと沈んでいく、そして残った魔石を回収し、俺は小部屋の中を確認する。


 小部屋の中には何もなく、土壁に囲われた空間があるだけだった。


 迷宮内の小部屋や大部屋は、低確率でマジックアイテムが置いてある。しかし、地下一階からは流石になかったようだ……俺は小部屋を離れ、地下一階のマッピングを続けていく。道中の通路で、相手の接近に気付けば待ち伏せし、相手がこちらに気付き襲い掛かってくれば高機動ムーブでかわして斃していった。


 小部屋や大部屋に留まっている集団には、M84フラッシュバンの他に持ってきた、M67破片手榴弾やTH3焼夷手榴弾の、この異世界での使用感を確かめながら進んでいく、地下一階のMAPが全て埋まったところで、俺は地下二階へと降りて行った。




 地下二階も、一階と変わるところはなく、地下道の道幅は6~10m程と相変わらずの広さだった。Dランク昇級試験を受ける前日に、総合ギルドの資料館で調べたマップ画像をTSSに表示し、地下三階までの大まかな道筋を覚え、メインルート以外の横道へ入りマップを埋めていく。


 迷宮の内部は、おおよそ5層ごとに趣きを変えるらしい。それは迷宮が力を貯め、拡張する時に増える階層の数がだいたい5層らしく、拡張から次の拡張までの間に、迷宮の近くへと誘き寄せた魔獣や亜人種を、新たな階層に現出させる。


 牙狼の迷宮では、5層まではゴブリンと東の森に生息するグラスウルフやホーンラビット、それにまだ見たことない熊の魔獣、《レッドベアー》がいるらしい。 


 地下二階のマップを埋めるべく、メインルートから外れに外れて進んでいくと、段々と白光草の数が減ってきているのが、目に見えてわかるようになってきた。  俺はマガジンベルトに括り付けてきた小さな布袋に手を入れ、中から白光草の種を取り出し、暗くなっている部分に放り投げていく。

 これも探索者の大事な役目らしく、魔素で育つ白光草で、迷宮内の光源を確保し、少しでも危険を減らすことや、逆に光源が減ることにより、その道が正道ではない事を知らしめたり、探索者が余り通っていない事を示す目安となる。


 蒔いた種がどうなるのか少し見ていると、迷宮の地面に触れるとすぐに種から小さな緑の芽が吹きだした、やがて芽が伸び、茎となり、その先に蕾をつけるとほんの数分で白い花が開き、淡く周囲を照らし出した。



「すごいな、こんなにも早く発芽して花を咲かせるのか」



 まるで花の成長を録画したビデオを、早送りしているかのような成長に、思わず声が出た。しかし、その感動的な生命の輝きに見惚れているわけにも行かない、俺が進もうとしている道の先から、重い重量感のある足音と荒い鼻息のような物が聞こえてくる。これまでに斃してきた、ゴブリンやグラスウルフのものではない、となると……



 レッドベアーか……




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― 新着の感想 ―
[一言] 1人もしくは仲間だけなら閃光弾手榴弾等の爆弾系も有りだけど見知らぬ他人が居ると巻き込むから使えないよね(笑)
2019/11/24 16:32 退会済み
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