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 大魔力石ダンジョンコアを確保して玉座の間へと戻ってきた俺を待っていたのは、オフィーリアとヴァージニアを含めた山茶花サザンカのパーティー。

そして、ドラグランジュ辺境騎士団の六名から連なる計十二名の捜索部隊だった。


十二名の先頭に立つのは霧氷舞う細剣を構えるオフィーリア。その横には銀色の短杖と小盾を構えるヴァージニアの姿もある。今回は最初から参戦し、オフィーリアのサポートをするつもりなのだろう。

 緑色の軽装鎧を纏う辺境騎士団の六名は俺の動きを警戒しながら、取り囲むべくゆっくりと周囲へ展開していく。


 後方には山茶花の四人――フラウ、ミーチェ、マリンダ、ルゥが迷宮の門を塞ぐように陣形を組み、俺の逃げ道を無くす役割を担っているようだ。


 だが、一つ気になることがある――それは辺境騎士団の装備だ。


 緑色の軽装鎧は正式な騎士団装備なのだろうが、手に持つのは打撃重視の戦棍メイスと、二枚重ねで防御性能を向上させた分厚い大盾。

 一目見れば装備の目的が判る。スケルトンアバターを選択している俺対策の武器に、明らかに銃器による攻撃力を知っている防御手段。


 眼前に広がる騎士団たちの後方で、フラウさんの口元が僅かに緩むのが見えた。


 直接見ていないにも関わらず、俺――ヨーナがシュバルツとして見せた銃器の性能とほぼ類似した攻撃手段――つまり、血統スキル≪Arms≫を使用すると判断したか。


「各自、警戒を怠るな。奴が見知らぬ短杖を握ったら、急所を絶対に晒すな」


 鎧の擦れる音だけが鳴る玉座の間に、ヴァージニアの平坦の声が響く。それに答えるように、騎士団の男たちが威勢のいい声を返していた。


 まいったな……銃撃を完全に警戒されている。だが、そんな重そうな大盾を構えて、俺の攻撃を捌き切れるのか?


 両手で握るスレッジハンマーの柄を強く――軽く――強く握り込む。


そして右前方へとダッシュからのスライドジャンプ、着地と同時にスレッジハンマーを横振りし、囲まれる前に右端に立つエルフの騎士団員を大盾ごと叩き飛ばした。


「密集隊形、通常のスケルトン型アンデッドだと思うな! ヴァージニア!」


「はっ! ~~~、~~~、~~、石廊ストーンコリドーロ!」


 騎士団員が大盾ごと吹き飛ぶのを見て、瞬時にオフィーリアの指示が飛ぶ。ゆっくりと広く展開しようとしていた騎士団員達が集結し、前二人後ろ三人の密集隊形をとった。


 同時に――ヴァージニアの魔言詠唱と魔法名の宣言がなされると、俺の左右の床から石壁が迫上がり、それがアーチ状に重なり合って石造のトンネルとなった。

 トンネルの長さは陣形を組む騎士団員達から、俺を通り越して後方にまで伸びている。


 囲まれた?


「押し込め!」


「「≪チャージ≫!!」」


 前に並ぶ二人が叫び、不自然な加速と共に大盾を立てて突撃してくる。回避……は無理だな、石壁で囲んだのは確実に押し込むためか。だが、この位置ならフラウさんには見えないだろう。


 一歩踏み込み、CBSサークルバリアシールドを展開して突撃を受け止めた。


「なに?!」


「なっ?!」


 スキルと思われる突撃が俺に直撃する瞬間、不可視の何かによってその動きを止められたことに、騎士団の二人が驚きと疑問の声が上がる。しかし、律儀に答えるつもりも説明するつもりもない。

 ≪チャージ≫と宣言したスキルの威力に僅かに後ろへ押されたが、その勢いがなくなったところでCBSの展開を解除する。

そして目の前に突き立てられた二枚重ねの大盾上部を鷲掴みにし、力でもって反撃の隙間を作り出す。


「くっ――!」


 大盾の反対側に身を隠す騎士団員と目が合う――彼も必死に大盾を保持しようと力を入れているようだが、パワードスーツの力を同化させた俺の方が単純にパワーで優っていた。


右手に持つスレッジハンマーの柄を手の中で滑らせ、ハンマーヘッドの根元を握る。殺しはいない――狙うは左肩。こじ開けた隙間にスレッジハンマーを振り下ろした。


軽装鎧を陥没させ、その下の鎖骨を砕く。


 鈍い打撃音と骨を砕く感触、そして息を吐き出す騎士団員の声にならない叫びを聞きながら、体を内へ滑り込ませてもう一人の騎士団員ごと石壁へと押し込む。

 石壁に亀裂が入るほどの衝撃と、大盾の重量に押しつぶされるように二人は倒れ込む。

それを踏みつけながらスレッジハンマーを再び両手で握り、砲丸投げのように回転しながら奥で大盾を構える騎士団へと投げつけた。


VMBではスレッジハンマーを投擲するという攻撃手段はなかったが、トマホークや投げナイフなど、投擲可能近接武器を何万回と投げ続けた感覚から、間違いなく直撃すると投げた瞬間に確信できた。


大盾を構えながらこちらを様子見していた三人の騎士団員が驚愕の表情を浮かべ、すぐに大盾へと身を隠して防御体勢へと入るのが見える。

その瞬間――騎士団員たちからも、その後方にいるオフィーリアとヴァージニアからも俺が見えなくなる――腰のホルスターに手を廻し、PSS特殊消音銃を引き抜くと同時に、装着されているマガジンを破棄し、新たに召喚した演習用マガジンへと換装する。

 PSSの模擬弾ならば、どこにヒットしても死にはしないだろう。だが、拳で殴られる程度の衝撃は喰らうだろうが……。


 そして甲高い衝撃音が鳴り響く。


 投擲されたスレッジハンマーが直撃したのは向かって右の大盾、パワードスーツによる人を超えるパワーで投げつけられた衝撃は想像以上だった。

 大盾ごと騎士団員を弾き飛ばし、スレッジハンマーは上部へ跳ね返ってアーチを組む石壁を突き破っていく。


 PSSを構えた先に見えるのは――弾き飛ばされて倒れた騎士団員と、突然の陣形崩壊に目を向けてしまったヴァージニアの横顔。


 人体の急所であるテンプルにAim――狙いをつけ、トリガーを二連射。続けてクロスヘアを滑らし、倒れ込む騎士団員に引きずられるように体勢を崩していた隣の騎士団員にAimし、顎を撃ち抜く。


「ヴァージニア!」


「くっ! ≪チャージ≫!」


 急所へヒットした無音の射撃により、ヴァージニアと騎士団員の一人が糸の切れた人形のように崩れ落ち――それをオフィーリアが支える。そして、左端に盾を構えていた騎士団員が、二人を守るように突撃して来た。


 大盾を前面に押し出して突撃してくるこのスキルを、受け止めることは出来る。だが、オフィーリアの攻撃体勢が崩れている今がこの戦闘をいち早く終わらせるチャンス――。


 こちらもアーチ状に迫上がった石壁に向かって駆ける――そのままウォールランに移行し、石壁を駆けて上部にまで到達した。

 真下を通過していく騎士団員は俺の動きを追い切れていない。しかし、オフィーリアはしっかりと俺の動きを追ってこちらを睨んでいる。


 だが、お荷物を抱えていては防ぐことも躱すことも出来ないだろう。


 アーチの上部を駆け抜けながら左手にテイザーガンを召喚する。


「くっ、逃がさんぞ!」


「ニゲはしないさ、オマエの動きを止めるまでは、ナ」


 ヴァージニアを抱えるオフィーリアを追い越して着地――テイザーガンとPSSを両手に構え、魔法武器マジックウエポンの細剣を大剣に変化させて盾にするオフィーリアと、その奥で標的がいないことに気づいて振り返るマヌケな騎士団員を狙う。


 銃型スタンガンであるテイザーガンに正確なAimは必要ない、大剣で隠しきれない部分を狙えばいい――二つのクロスヘアが視界を踊り、軽装鎧で覆われていないオフィーリアの脚と騎士団員の眉間に重ね、トリガーを引いた。


「きゃぁぁぁー!」


 五万ボルトの電撃を喰らい、オフィーリアから聞いたことのない黄色い叫びが響く。その後方では、眉間に模擬弾を撃ちつけられた騎士団員が仰向けに倒れていくのが見えた。


 体を痺れさせながらも、歯を食いしばりながらも電撃に耐えるオフィーリアが、俺を目力だけで刺しかねないほどに睨みつけ――気を失った。


 崩壊したドラム要塞でも、この坑道の迷宮でも、俺はまともにオフィーリアと剣を交わすようなことをしていない。

 剣姫オフィーリアと呼ばれるほどの実力者、魔法武器と合わさったその剣技が間違いなく一級品だということは、ドラム要塞で攻められたときに判っている。

 そして実力があるからこそ、俺のナメプ――相手をなめた立ち振る舞いに苛立つのだろう。


 その気持ちもよく判る。俺もFPSプレイヤーとして何度も苦渋を飲まされた経験がある。もっと違う形だったなら……俺も心ゆくまで相手をしよう。


 だが、今はその時ではない。これから俺は、殺す気で殺さない戦いをしなくてはならない。


 本気にならなくてはあの四人――山茶花サザンカはこえられない。





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