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 冒険者としての初依頼を受け、そして達成した翌日。俺は城塞都市バルガの南に広がる商業地域にある、マリーダ商会バルガ支店に来ていた。昨日の初依頼の帰りに、魔獣の群れから偶然助けることになったマルタさんに、その魔獣の売却を約束していたからだ。


 マルタさんのマリーダ商会は、城塞都市バルガの商業地域を縦断する大通りに面した、3階建ての大きな建物だった。昨日助けた時は、護衛も付けずに馬車で移動するなんて、行商中心の商人なのかと思ったが、この商会建物が支部であるなら、本店はもっと大きい大商会であると予想できる。


 商会の1階は、冒険者向けの武具や道具を売るフロアのようだ。色々な物を売る百貨店と言うよりかは、高級武具やアイテムを取り扱う、上級者向けのブランドショップのような雰囲気がある。


 中に入っていくと、すぐに店舗の従業員がにこやかなスマイルと共に近寄ってきた。



「いらっしゃいませ、本日はどのような御用件でしょうか?」



「ええ、こちらにマルタさんはいらっしゃいますか? 魔獣の素材の売却の件でこちらへ出向いたのですが」



「これは御足労をおかけして申し訳ございません。ただいま呼んで参りますので、奥の応接室でお待ちいただけますか?」



 そう言って案内された応接室へ向かいながら、俺はこの従業員に、この商会で魔石が売っているかを聞くと、このマリーダ商会というのは、元々は魔石商からスタートした商会らしい。

 各地の迷宮から持ち帰られる魔石を集め、需要があるところへ運び販売する。その輸送と販売を纏めて行なう事で、より高い需要のあるところへ、より安く販売し、利益を上げ続け、やがて魔石以外の商品も扱うようになり、大きく成長してきた商会だそうだ。



「お待たせ致しました、シュバルツさん」



 従業員に案内された応接室で、出されたお茶を啜りながら商会の話を聞いていると、マルタがぽっちゃりしたお腹を揺らしながら部屋に入ってきた。



「いえ、美味しいお茶を頂いてましたから」



「お口に合いましたか? 王都でも中々手に入らない東国のお茶です。ささ、商談をまとめてしまいましょう。シュバルツさんが斃された、グラスウルフ5匹とダイアー・グラスウルフですが、どれも毛皮の損傷が少なくて、大変綺麗な状態で剥ぎ取れました。

 まぁ、ダイアーの方は腹の部分が穴だらけでしたが……あれはどのような武器、もしくは魔法を使われたのでしょうか? あまり見たことがない傷跡でしたが」



 それまでニコニコ顔のマルタさんだったが、武器や魔法について言及した瞬間の目は、鋭い光を放っていた。商人として何か思うところがあったのだろうか。   しかし、あれはですねと馬鹿正直に説明しても理解はできないだろう。



「ははっ、まぁ、そこはあれですよ、秘密です」



 これはもう正直に言うしかないだろうと判断し、正直に秘密にした。



「これは手厳しい、いや、でも失礼いたしました。冒険者の強さの秘密は最大の財産、それを安易に散財させるような質問をするべきではありませんでしたな、忘れて下さい」



 マルタさんの顔は再びニコニコとした柔和な印象に包まれていた。そして部屋に入ってきた時に持っていた袋から、買い取り金を取り出し始めた。



「続きと行きましょう、グラスウルフは1匹あたり銀貨3枚、ダイアーは銀貨60枚で買い取らせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか」



「ええ、それで構いませんよ。ところでマルタさん、マリーダ商会は魔石売買を中心におこなっているとお聞きしましたが」



「はい、私が王都からバルガへ来ているのも、魔石の買い付けのためです。噂で4つ目の迷宮が発見された、と聞きましてね。新しい迷宮が発見されれば、バルガで取引される魔石の量も更に増えます。この商機を見逃しては商人失格ですよ」



「私はまだ迷宮へは入れないのですが、参考までに魔石の取引価格をお聞きしてもよろしいですか?」



「ええ、構いませんよ。それにシュバルツさんなら、すぐにでも迷宮へ入れるようになるでしょうし、迷宮でも大いに御活躍されるでしょう」



 そうしてマルタさんから聞いた魔石に関しての話は、非常に参考になった。しかし、話が長くなりすぎて昼食まで御馳走になり、この日は依頼を受けに行くことは不可能になったが。




 魔石には、火、水、風、土、闇、光の基本6属性と、それらが複合した雷、氷、木、空というレアな4属性と、無属性を合わせた計11属性があり、核となった魔獣によって属性の付き方にバラつきがある。


 更には、道具袋や転移装置を動かすエネルギー源になったりする、空間属性の空魔石は魔獣や亜人種からは摂れることが無く、迷宮内に落ちているのを拾うことでしか、得ることができないと言う。 

 

 そして実際の取引価格だが、基本的に無属性は数が取れるので供給量が多く、価格はそこまで高くない、基本6属性も銀貨数枚で取引されているらしい。

 しかし、レア4属性は中々入手できず、空魔石に至っては拾うことでしか入手できないのでさらに高く、価格も魔石の大きさによって、銀貨数十枚から金貨にまで幅広く取引される。 

 その為、基本的に魔石の価格は変動しやすく、平均の最低値で取引する総合ギルドよりも、マルタさんのような商人と直接取引することを強く勧められた。と言うかマリーダ商会を強く、それはそれは強く薦められたわけだが……。



「これも何かの縁だ、マルタさんのところで魔石を取引するのは問題ないな、それに無属性魔石を安く売ってくれたし……」



 今日の商談の帰りに、さっそくとばかりに無属性魔石の値段を確認し、売却金として得た銀貨75枚の内、40枚分の無属性魔石を買いあさり、宿に戻って全てをCPへと変換した。 

 そして次の日から討伐系を中心に依頼を受け、知識の足りていない自然界での狩りに悪戦苦闘しつつも、少しずつだがギルドポイントを貯めていくことになる。


 総合ギルドの敷地内には、資料館と言ういわゆる図書館のような施設もあり、俺の一日のサイクルは、早朝に依頼を受け、昼過ぎまでに達成しバルガへ戻る。

 完了報告後は資料館に立ち寄り、この異世界の常識や魔獣・亜人種の知識、採集依頼の対象になりやすい、薬草や鉱物の知識を集め、夕方に宿へ戻る、このような生活を続けていた。


 資料館では、さすがの情報量に普通では記憶しきれないが、そこはちょっとした裏技でもないが、ヘッドゴーグルにはスクリーンキャプチャー機能があり、それを使って魔獣図鑑や薬草図鑑を片っ端からキャプチャーし保存していった。このキャプチャー画像は、TSSからいつでも見ることが出来るので、出先で採集物の確認などに大いに役に立った。


 そして3週間後、俺は総合ギルド別館で今日の依頼達成を報告していた。今回も受付はレズモンドさんだ。別館の窓口は数あれど、この人の列は待ち時間は短いし、仕事は丁寧だし、結局は毎回ここに並んでいる。美人や可愛い受付嬢は横から愛でればそれでいい。



「おめでとうございます、シュバルツ様。今回の依頼達成により、ギルドポイントが規定値に達しました。Dランクへの昇級試験が受けられるようになります」



「ありがとうございます、昇級試験を受けるには、どうすればよいのでしょうか?」



「本館にあります、冒険者登録受付窓口で申請が可能です」



「あそこですか、わかりました、ありがとうございます」



「いえ、シュバルツ様のより一層のご活躍を期待しております」



 これであとは試験に合格すれば迷宮へ入れる! 迷宮へ行けば、俺の今後の生き方が見えてくる! 俺は気持ちを新たにし、冒険者登録窓口へ向かった。




  

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