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 海洋都市アマールの護衛船団による、海賊船団”海棠カイドウ”討伐作戦が終了し、護衛船団がアマールへと帰港した。


 先に戻っていた俺は、船団の専用桟橋に向かい同様に集まっていたアマールの市民たちと一緒に、その帰還を出迎えた。



「おかえり、アシュリー。それにシャルさん」


「ただいま、シュバルツ」


「ちょっとシュバルツ! なんであたしはおまけみたいな言い方するのよ!」


「――おかえりなさい、シャルさん」


「なにか引っかかるけど、まぁいいわ」



 桟橋に降りてくる二人を出迎え、この後どうするのか確認していくと、まずは船団本部へ戻り後処理の指示や捕虜の扱い、救助した他国民の扱いの決定などの事務仕事を少し行って、邸宅へ戻る事になるという。


 船団本部にまでついて行く訳にもいかないので、今夜の夕食をゼパーネル邸で一緒に摂る約束をし、一旦解散する事にした。

 アシュリーとシャルさんが、船団員に指示を飛ばしながら帰港作業に戻っていくのを見送っていると、輸送船とは別の護衛船団の帆船から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。



「早く作業を終わらせろ! 副船長! 本宅に使いを出せ! 討伐報告後、ヨーナ討伐作戦にすぐに出航するんだぞ!」



 あぁ、生きてたのかアレ……まぁ、直接は狙ってないからな、それに……決して見つからぬ幽霊を、いつまでも追っていればいい。




 その日の夜、ゼパーネル邸で夕食を共にし、海棠討伐の話をアシュリーとシャルさんから聞くことが出来た。だが、俺しか知らない部分もあるし、アシュリーにしか話せない部分もある。


 結局、アシュリーと二人で話せるようになったのは、シャルさんがお酒に潰れ、ゼパーネル家の執事であるレスターさんに、抱えられるように連れて行かれた後だ。



「それで、シュバルツ。海棠のリーダーであるカダはどうなったの? 本拠地で捕縛した海賊達からはアンデッドに消されたとしか聞けていないの」


「間違いなく殺した。体を粉々にして海に落ちたよ。最初は捕縛するつもりだったけど、手加減できる相手ではなかったよ」


「そう、貴方がそう言うなら間違いないわね。それと、本拠地に転送魔法陣があったと聞いてるのだけど」


「それは俺が回収したよ。転送先は王都のかなり北だとしか分からなかったけど、山の中にある大型倉庫と山小屋しか周辺にはなかった」



 転送先で捜索した山小屋や、留守役と思われる二人の男の特徴などを話し、そこがどこだったのかを話し合った。アシュリーの予想では、王都の最北部のドラグランジュ辺境伯領、もしくはそこと国境を境にするドラーク王国だ。

 

 ドラーク王国はクルトメルガ王国よりも歴史が長い内陸の国で、国内に生息する小型の亜竜、アルアースを飼いならした竜騎士の国らしい。

 そして、このドラーク王国とクルトメルガ王国は、現在は停戦条約を結んでいるが、数十年前まではドラーク王国が海を求めて何度も南下し、小競り合いを続けていたそうだ。


 だがそれも、迷宮から持ち出された転送魔法陣の存在が決め手となって落ち着いていたはずですが……とは、アシュリーの言葉だ。


 それと、基本的にこの世界では国境の境を海上に引いていない。内陸ならば曖昧ながらも国境があるそうだが、海上にはそれがなく、無人島の扱いもかなり曖昧らしい。

 海棠は中継地点の無人島を襲ったことはなく。クルトメルガ王国とフィルトニア諸島連合国の両方の船舶を海上で襲っていた為、クルトメルガ王国だけを意図的に狙ったと判断するのも難しい。

 最終的に、この問題は上に丸投げすることになった。つまり、ゼパーネル家の宗主である永世名誉宰相ゼパーネルに報告し、それで終わりだ。



「そうね、宗主様にはその話は捕縛した海賊達から聞いたことにするわ。帰路で聞き出した話とそう違ってもいなかったし。回収した転送魔法陣はシュバルツに保管しておいて欲しい、あれは容易く市場に流したりしていいものではないし」


「宰相に黙っていても大丈夫なのか?」


「たぶん、すぐに見抜かれるわ……でも、なら……話してくれるの?」



 小さなテーブルを挟み、向かい合ってソファーに座る形で俺達は話し合っていた。この応接室には俺とアシュリーしかいない、テーブルの上には食後の紅茶だけが載っていた。


 アシュリーが何を言いたいのかはすぐに判った。手に持つカップとソーサーをテーブルに置く――。



「――すまない」



 夕食時の会話も、二人だけになった時も、アシュリーは幽霊船長ヨーナの話も、Uボートの話も、本拠地の海棠が壊滅していたのも、あまり話したがらなかった。

 その全てに俺が関わっている事が判っていながらも、俺から話し出すのを待ってくれている。


 随分と前に、俺のVMBの力を血統スキル『Arms』だと言って誤魔化したことがあった。あれからアシュリーにはVMBの色々な力を見せた、そのこと自体には何も悔いはないし、失敗したとも思っていない。しかし、それら全てを血統スキルの一言で誤魔化すのは限界に達しようとしている。


 だが、言えない……。言うならば全て、言わないなら何も――、中途半端に小出しに話すのは……違うだろう。



「――いいの。わたしは三日後くらいを目安にシャルを連れて王都へ行くわ。貴方はどうするの?」


「三日後か、なら俺も王都へ行くよ。とは言っても、俺が行く目的はオークションだけど」


「オークション?」


「あぁ、マルタさんに大魔力石ダンジョンコアをオークションに掛けてもらうように頼んでおいたんだ。そのオークションがもうすぐあるらしい」


「もうすぐあるって……王族主催の王競祭ですか?!」


「いや、名前は知らないけど……」


「王競祭は王族が主催するだけでなく、出品される物によっては王自ら出向く事がある唯一のオークションよ。大魔力石を出すなら、もしかしたら国王が参加されることも……」



 一番格式が高い、ならば参加者の格も一番高くなるか……。この国の王か、ちょっと興味はあるが、果たしてくるのだろうか?





7・6の更新は急用でお休みします。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんか中途半端やな
2019/11/24 20:47 退会済み
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