プロローグ
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その日、俺は毎日繰り返している習慣で、会社から帰るとすぐさまゲーム機に電源を入れ、そのソフトを起動していた。《Virtual reality Multiple Battlefield》通称VMB、これは長年やり続けてきたFPSという一人称視点でのゲームが進化した、シューターゲーマーが待ちに待った、仮想現実世界でのシューターゲームだ。
PvPはもちろん、ソロから複数人数でのPvEもある様々な戦場を体感できるゲームで、近未来設定ではあるがWWIやWWII好きにもプレイしてもらえるよう、実銃モデルも多数取り揃えた隙のない出来で、オンラインプレイヤーは全世界で常時接続500万を超えるモンスタータイトルだ。
俺が今夢中になってるゲームモードはソロでのPvEコンテンツ、これはプレイヤーvsモンスター型エネミーで、敵はAIではあるがとても狡猾で嫌らしい挙動が多く。いま攻めてる天空庭園のステージでは、マップに浮かぶ小島をパワードスーツで強化された身体能力と、ジャンプで飛び移りながら移動していく。しかし、その移動の瞬間を狙ってくる憎たらしい敵が多い。
「ふぅ、やっと半分ほどか」
MAPの中間ほどにある大きな岩のある小島で一息吐くと、そこへ背を預けながら左腕のガントレットを操作する。半透明なB5サイズほどのスクリーンモニターをタッチ操作しながら、ここまでで得たクリスタルポイント(CP)で装備品の弾薬を補充する。
今使ってる主兵装は『H&K MP5A4』だ、ドイツのヘッケラー&コッホ社の名器であり、様々なバリエーションを持つMP5シリーズの中でのA4は、低反動・高精度でありコントロールもし易い発展系で、点射機能が追加されたモデルだ。
その弾丸は9x19mmパラベラム弾であり、マガジン込みで4本選択すると目の前に光の粒子が現れ収束していく。ほんの数秒でそれは黒い補給BOXへと姿を変えた。
BOXを開けて中からマガジンを取り出すと、補給BOXは再び光の粒子となって消えていった。取り出したマガジンの一本をMP5A4へ挿し、残りをマガジンベルトへと挿す。
VMBでは、仮想現実であっても現実の銃社会や、銃への知識や影響を少しでも抑えるために、実際に必要な初弾装填等の、取り扱いのための基本的な構造を排除している。その為、マガジンを挿して安全装置を解除すればすぐに発砲が可能となる。
「よし、行くか!」
岩陰から起き上がり、次の小島を目指しパワードスーツで強化された脚力で、普通の人以上の速度で助走をつけて飛び上がったそのとき、視界のヘッドゴーグルに浮かぶMAP情報に、敵を意味するシグナルが二つ表示された。
ジャンプ中でありながらすぐさま体勢を変え、敵が来る方へと体を廻す。同時にスリングで背中へ掛けていたMP5A4を腰だめに構え、安全装置をフルオートへと廻した。
ヘッドゴーグルにHipFire用のクロスヘアが出現する。最初は片手でトリガーを引きつつ敵にクロスヘアを合わせていく。襲ってきたのは空中庭園の空飛ぶハンター『スカイイーグル』だ。
こいつらは空中からの突撃しか出来ないが、それを空中で食らうと、運が悪ければ目指す小島へは着地できずにMAP外へと落下し死亡となる。弾をばら撒きながら片手から両手へ、腰撃ちからアイアンサイトへとダウンサイトし、より精度の高い状態へともって行きつつ、1匹目を空中で撃ち抜いた。
目指していた小島へと横向きに着地する事が出来たが、目の前にはもう一匹のスカイイーグルが着地の隙を狙ってか突撃を合わせて来る。俺は着地したその勢いで後方へと再びジャンプし、その突撃をかわすと共に銃弾を撃ち込んで二匹目を排除する。
「あまいわ!」
口癖になってる煽りを、光の粒子となって消えゆくスカイイーグルに入れながら着地……出来なかった。
「え?! うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
後方確認不足、マヌケな俺はMAP外へと落ちていった。
使用兵装
MP5A4
ドイツのヘッケラー&コッホ社製のサブマシンガン、世界でもっとも使用されているサブマシンガンであり、そのバリエーションも非常に多く。軍隊、警察、対テロ部隊等、幅広く活躍する名器である