私は誰、ここはどこ?
私が目を覚ましたそこは、木々に覆われていた。
木々の間から溢れる木漏れ日が眩しい。
―――――――――ここは一体、何処なのだろう。
―――――――――何故、私はこんなところに?
・・・ああ。
そうだ、私は。
逃げてきたんだ―――――――――――――
つまらない毎日が嫌で、
自分を理解してくれない親が、友達が、教師が嫌いで
必死で逃げてきたんだ。
じゃあ、どうして。
自分で逃げたくてここまで来たはずなのに、何故ここがどこか私には分からない?
どうして、私は――――――――――――
「そう、キミはキミを知らない」
頭上から、穏やかな声が聞こえた。
見上げればそこには
「て、んし・・・?」
凛とした表情で、ファンタジー小説にでも出てきそうな天使の翼に似た何かを広げる一人の男。
貴方は誰、私を知っているの。
「知っている?愚問だね。僕を呼んだのはキミさ、マスター?」
マスター?
何を言ってるの、貴方は馬鹿なの?
それとも今流行の厨二病?
疑問を投げかけてみれば、そいつは困ったようにはははと笑う。
「何を言っているんだい、マスター。困ったものだね」
「勝手に出てきて勝手に困られても困るのはこっちだわ」
「おっと・・・これは本格的に記憶が飛んじゃってるのかな」
ゆったりと地上に降り立ったそいつは、静かに私に歩み寄る。
そして
「キミはマスターなのさ。僕は天使。キミに使える者だよ」
「天使?天使なんて今時信じてる人殆どいないわよ」
「それがいるんだな~。現に僕は、ここにいるじゃない」
「そんな証拠何処にもないでしょう」
「あるさ」
「どこに?」
誰もが思うような素朴な疑問を投げかけてみれば、自称天使は私の背後を指さした。
「な、何これぇ!?」
―――――――――――そこには紛れもない、トリの羽のような何かがあった。