3プレイ
「お前…3プレイしたことあるか…?」
勤務回数15回目のある日の休憩時間、そんな話がどこからか聴こえてきた。さすがに休憩中とはいえ、ここは現場であり職場。僕は背中に冷たい水をたらしながら、心の視線をどこかにやろうとした。その間にも会話は続き、次の一言が放たれた。
「3…、3プレイ?!!あの?」
僕は思わず見渡し、会話の元を捜し当ててしまった。会話の元は、すぐ横の男子学生だった。あぐらをかきながら、ひとりのオレ系男子がスマホを、もうひとりのボク系男子はガラケーを手に画面を注視しながら会話をしていた。学生の話題の豊富さに微笑ましいが、「生々すぎないか。」と苦笑いしながら、ボク系男子の顔を観察してみるとが少し赤くなっているではないか。あまりない経験だし、楽しそうだったからこのまま見知らぬまま耳を澄ましてみることにした。
「オレさ…怒られたんだよ…
「えぇ!あぁ、うん。って、え?」
「オレ、呼び掛けて三人だけでも頑張ったんだぜ?。だってよ…他のひとにも声かけてるのに、『手が離せない』て終わらされるんだぜ?やり切れないよな?やるならペアだよな?そしたら、イケイケな奴がやって来て、1人仲間入りしたんだけどよ、『何していやがる!3人でやるな!』て怒鳴り込んできたんだよ。いや、人数を増やすってどんなプレイだよって。持つところが無いし、ポジションの問題もあるのによ。解っているんだよ、でも辛いんだよ。2人でやってもツライし、4人じゃ狭いからよ。」
「す…、すごいハードだね。ボクには…」ボク系の学生は手で口を隠しながら返事したので何かの異変に気づき、オレ系の学生がふと顔を上げて真顔で口にした。
「すんげーっ、気持ちよかったぜ。…って、お前、なに勘違いしてんだ?イヤらしい話じゃねぇぞ?オレ…仕事の話として会話してたんだけど。」
隣で聴いていた僕もだんだん恥ずかしくなってきたのだが、オレ系男子の一言で雷が走った。そう、あぁ…そういうことか…と。
「お前だって始めのときは怒られていただろう?『奇数でやるな!協同して運んで、組み立てていって、ステージを作れ』って…、機材は壊れやすいんだよ、重たいものはあぶねぇんだよ、大きいものは前が見えねぇんだよ、だから奇数でやるなってことだろ?
しかしお前は相変わらずだな…。馬鹿でアホのカワイイブスだよな。んじゃ、オレ…トイレ行ってくるから。」オレ系の学生は髪の毛を整えながら、立ち上がって目の前を通りすぎていった。
もう一方のボク系の学生は、僕が観る限りなんだか怒られているのに微笑んでいるように見えた。
引きこもりという期間もあってか、こういう話しも悪くないなと楽しみながらもなんだか恥ずかしくなってきて目のやり場に困りカバンから水筒を取り出しお茶をがぶ飲みした。
そう、たしかに現場の連係プレイは楽しい。
『よし、行くか!持つか!せーの!』がグッとくる。『仕事してるんだっ』て自覚が湧く。
……それより、そんなイヤらしい連係プレイも楽しいのだろうか。この言葉自体に気になっていること自体、意味を知っていることになるのか?
帰り道になってもなお、今日の話題に恥ずかしさを覚えがら布団の中で眠りについた。