差し込む光
あの日から少しずつ、彼の顔がぼやけて声も忘れつつある。
いつの間にか雪もアスファルトに融けては降り積もり、今はうっすら白化粧して春に備えていくような感じがした。
バイトは意外と順調に通い続けられている。大きな声を出されながらも、「お前は役に立たないことぐらい解ってるけどよ」と、どさくさに紛れて言う人もいるなかでも、特別に嫌なことをされてる訳でもない、話し合える仲間が居てくれることで保てられている。もしかしたら、仲間こそがこの仕事場にいる理由なのかもと思っている。
ただ今は、自信を無くして声を出すのに躊躇したり、仕事につかえてつまづくのが嫌になって、違う道への一歩、怖くない一歩が…今、踏み出せるんじゃないかって思いもし始めている。
別に彼のせいだからじゃない。逆に彼のおかげで、僕は3か月という呪縛から4か月へと『社会の中で、まだ生き残りたい』渡り橋の役目をしてくれたのだから。
『彼………、手塚さん。』
手塚さんの本名は、「純」でいいのだろうか。
それとも公平的な意味を持たせて…「純平」なのだろうか……。名前は人の第2の顔でもあるとよく聴く、それによって道が大きく影響してるときもあると囁いて自覚している…だって、芸能人みていたらそう想うんだ。
僕はどんな道でもいい。ただ誰かの太陽になれるように、何かしてあげたい。
12月はもうすぐそこ。国会が捩じれて、選挙や増税やらで、問題が抱えてすごている。誕生日が迎えれば、2年目の成人生活が始まる…一体この先になにがあるんだろうか。
「節約、節約」と、カッコいいこと口にして、心を温める愛すらも棄ててる世界にはなっていかないこと、僕は願いたい。
太陽がまぶしいくらいに、家の窓をとおして光をプレゼントしてくれた。
彼のおかげで前を向いて進めていける、気がする。
『ありがとう』と云えないのは、悲しいけど…会わない方がきっと感謝できるだろう。
それに、仕事にようやく足が地に下り立ったようだ。後輩たちのぎこちない動きが、もどかしさを感じる。だけど…恥とためらいを棄てられないから、バイトの留場で固まったまま。
そんなときのおじさんは、特効薬になりつつあるかもしれないな。




