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第九話

「ふう、おいしかったのです!」


 うどんというのは本当においしいものです。あのつるんとしたのど越し、あっさりしつつもコクのある汁に、どっさりとのった薬味。あれはおにぎりにも負けない美味です!!

 本当に、ミラさんの教えてくださる和食は素晴らしいものばかりです。いつか私もレシピを教わりたいものです。健康的でおいしい料理は幸せのもとなのです。


「そんなに気に行ったの?」

「はい、とてもおいしかったです!」

「喜んでもらえて嬉しいわ。やっぱり和食は万国に受け入れられるのねぇ」


 嬉しそうに笑うミラさん。はい、やはり最初の冷たい氷のような印象はないです。小さな子供が母親に褒められた時はこんな顔するのかなぁ、という感じです。親しみやすくていいですが。でも本当に最初と印象が違うのですよ。


「この後はどうするの?」

「あ、そうですね。魔術の練習でもしようかと思っているのですよ」

「魔術の練習……ね。ちょっと見学してもいいかしら?」

「はい、大丈夫ですよ。でも何の面白味もないと思いますよ? 私、魔術は不得意ですし」

「いいのよ、別に面白さを求めてるわけじゃないの。私が見たいのは、貴方の魔力よ」

「魔力……ですか?」


 気にしなくていいわよ、とミラさんは言いましたが、気にならないわけもなく。

 魔力を見るのなら、いつもしている錬金魔術の時でもいいのでは? それに魔力なんか見てどうするつもりなんでしょうか。まったくもってミラさんの考えがわかりません。

 断る理由もないので特に問題はないのですが。


「そう、ですか? まあ構いません。ちょっと杖をとってくるので、小屋の近くの練習場で待っていてください。案山子がいっぱいあるのですぐにわかると思うのですよ」


私は魔術が苦手なので、補助として杖を使うことが多いです。杖には魔力が込められた宝石が嵌められていたり、魔力を帯びた木が使われていたりするので、魔術を使う際に魔力量を調整してくれるのです。それに杖を起点として魔術をイメージする方が威力や精度も増すのですよ。なので他にも補助のための道具はありますが、補助と言ったら杖というのが常識です。

 私の杖は魔術と錬金魔術、兼用です。錬金魔術で魔力を込めただけの木の棒を杖として使えるように形を整えたものです。なのでけっこう消耗品として使っています。私は無駄に魔力保有量が多いので、制御を補助する杖にも負担がかかるのです。

 

 ミラさんと別れて自室に向かいます。杖は一応小屋に置いていかないようにしているのです。もしも盗まれたら錬金魔術は使えなくなりますからね。

 クローゼットの中で衣服と並ぶように仕舞われた杖を取り出します。この杖もそろそろ壊れそうです。予備の杖も持って行こうと、かなりの数が並んだ杖の中からさらに一本取り出します。

 一本一本の価値はそんなに高くないですが、私はひどいときには一週間で杖がダメになることもあるので大量に杖を備蓄しています。そろそろ消耗品ではない、ちゃんとした杖が欲しい所です。

 ですがほいほいと贅沢ができるほど我が家は裕福ではないのです。王都の学院に通うのにも結構お金がかかるでしょうし、お父様と我が家の財政に無駄な負担をかけないようにしなくては。

 クローゼットをきっちりと閉めてから部屋を出ます。ミラさんをあまりお待たせするわけにはいかないので、少しだけ足早に。落ち着きがないと言われない程度に急ぎます。


 今日練習するのは火の魔術です。午前中に火の魔術についての本を読んだので、さっそく実践です。やはり実際にやってみないとわからないことも多いですからね。火の魔法は室内でちょっと練習、ということができないので、細かい事でも屋外でやる必要があるのです。

 ちなみに、私が得意なのは雷属性と水属性の魔術です。得意と言っても、基本的に魔術が得意とは言えないのでそんなに得意と言うほど得意ではないのですが……。ええ、まあいいのです。

 水の魔法は一般的ですが、雷属性の魔力は少々珍しいものです。威力を簡単に強くできますし、相手を痺れさせたりもできて、結構使い勝手のいい属性なのです。無属性の魔力で雷の魔術を使う琴もできますが、効率が悪いらしいので雷属性の魔力を使える者以外で雷の魔術が得意な人はほとんどいないと聞きます。そんな雷の魔術も、私の魔力制御が下手すぎて宝の持ち腐れ状態なのは忘れましょう。それでも雷の魔術は十分威力があるのです、細かい手加減ができないだけなのです。


 とりあえず、もう少しまともな魔力制御を身につけたいところなのですよ……。

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