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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第一章 異世界でぼっち篇
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第八話 団長と交渉!

 リュージの周りには自警団の団員が二、四……八、どうやら金髪髭面野郎ことオリアスを保護する為の時間稼ぎをするつもりの様だ。


「副団長を護れ~! この先は一歩足りとも通してはならんぞ!」


「「「「「「「おう!」」」」」」」


(はぁ~ぁ、別に殺しゃぁしないよ。おっ? どうやらオリアスの回収が完了した様だな)


「なぁ、オリアス回収されたぞ? 撤退したらどうだ?」


「団長の留守を任された我々に、撤退の二文字は無い!」


「えっ? それ、本気で言ってるの? ……団長命令って命に勝るの? 全員の総意なの?」


「っ! 馬鹿にするな! これは命令なんかでは無い!」


「「「「「「「そうだ!」」」」」」」


 忠誠心と結束は非常に固く、団員達の連携も悪く無い。それだけに疑問が残る。


「なぁ、あんたらみたいなのが何故、トイレの水を飲めみたいな、虐待紛いの対応をしたのかな? 俺は、容疑者では有ったかもしれないが、犯人では無いぞ?」


「「「「「「「「なっ!」」」」」」」」


 どうやら、牢での事は見張りの独断であり、誰かに指示されていた訳では無いらしい。少なくとも、この連中は知らなそうだった。自警団の仕事に対する姿勢と、一部の団員が時折見せる暴走とも取れる行動がチグハグに感じる。


「ほっ……本当にスパイじゃ無いのか?」


「馬鹿なっ! まっ……まさか信じるのか?」


「だ、だが……あれだけの力が有るのなら……」


 ガヤガヤと意見の衝突が起こり揉め始める団員達。何を相談しているのだろうか? リュージからは、攻撃をするつもりは無いのだが、敵を前にして、この対応はいささか暢気のんき過ぎるのではないだろうか。


「そろそろ良いか? いい加減、増援も有りそうだしな……これ以上の時間稼ぎに付き合う気は無い。来るなら、覚悟を決めて貰おうか!」


 リュージの言葉に絶望的な緊張感を漂わせ、唾を飲む団員達。緊張がピークを迎え、無謀にも一斉に飛び掛かろうと膝に力を入れた時に、静止の声が掛けられた。


「双方ともに、そこまで!」


「「「「「「「「団長!」」」」」」」」


 バルザックの登場で、団員達の表情に希望の色が分かり易く表れる。


「おい、小僧……俺の留守を狙って脱走とは、なかなかやってくれるなぁ!」


「別に狙った訳じゃ無いさ。我慢の限界が思っていたよりも早く来ただけだよ」


 リュージは、肩を竦め、掌を上に向け、首を傾げる……悪い事など何もしてないからと、余裕でポーズを決めて見せたのは挑発のつもりだろう。


「ふむ、お前がスパイ等では無い事など百も承知だが、手錠と足枷を壊した上に、牢を派手に破壊。副団長に、全治三ヶ月の大怪我を負わせたにもかかわらず罪が無いと? 器物損壊、建造物破壊、傷害、殺人未遂も付くかな!」


「どういう事だ? なら何故、手錠に足枷まで付けられ牢にぶち込まれねばならない?」


 バルザックの発言に、余裕の態度が脆くも崩れ去り、狼狽うろたえてしまう。役者としては、相手の方が数段上らしい。


「小僧、短気は損気って知ってるか? こちらにも少々訳が有ってな、簡単に話す事は出来ないが、時間が必要だったのだ」


「時間……? 俺だって大人しくするつもりだったし、していただろう? だが、水を要求すれば、トイレの水を飲めと言われた! 牢に入れられた事もそうだが、流石に我慢の限界だ!」


「それだって本来は、ここまでの事にはならん。精々、怒鳴り散らすのが関の山だ! その愚か者は再教育を施すが、そいつも不運だな。お前に、これだけの事をしでかす力が無ければ、問題にすらならなかっただろう」


「なっ!」


 バルザックの言い分に怒り半分、呆れ半分といった感じで絶句してしまう。こうなっては負けだろう、口では勝てない。


(……こうなったら、実力行使しか無いか? しかし、スパイじゃ無い事は分かっていると言ったな。どうする? どうしたら良い?)


 迷った挙げ句に、思考がループし始めた俺の意識を引き戻したのも、やはりバルザックだった。


「取引と行かないか?」


「どういう事だ?」


 突然の提案に素で質問を返してしまう。交渉を有利に進める為には、隙を見せるべきでは無いのだが、流れは既にバルザックが握っている様だ。


(不味い……誘導された)


「何、簡単な事だ。今回の罪を不問にする代わりに協力して貰いたい」


「……断ったら、どうなる?」


「別に? 事が事だからな、手配書なんかが関係各国に出回り、賞金首として常に狙われる位じゃないか?」


 やはり、ペースを握られてしまった様だ。恐らく、この後の展開も予想済みなんだろう。


 リュージは、バルザックの満面の笑みに、渋面を作る事しか出来ない。何かないか? 起死回生の一手を探りながら交渉を続ける。


「中々どうして、嫌な選択を強いてくれるもんだな」


「そうか? お前なら、全てを返り討ちに出来るだろう? 無理を強いている訳では無いと思うが?」


「それもそうだな、面倒臭くなったら国ごと滅ぼすか」


 何となく呟いた一言に、バルザックの笑みが消える。普通なら出来ないと思うだろう。その傲慢な物言いに怒りをあらわにする者も居るだろう。だが、バルザックの表情からは警戒感が滲み出ていた。


(よしっ! ここからは、俺のペースで行かせて貰う)


「そんな事が、本気で出来ると思っているのか?」


「ふぅ~、出来る出来無いじゃあ無く、やるかやらないかさ! それに、俺はまだまだ強くなる!」


 本気である事が伝わったのだろうか、バルザックの余裕は崩れ一触即発の緊張感が辺りに漂う。


「子供達を助けたい」


 しかし、ピリピリとした緊張感を破ったのは、リュージでもしてやバルザックでも無かった。そこに現れた第三の声の主はハゲマッチョのウルバインだった。相変わらず上半身は裸だが。


「……それは、機密事項の筈だが?」


「目標を述べただけ……」


 ハゲマッ……では無く、ウルバインはポージングしながら、素知らぬ顔で答えた。これにバルザックも、してやられたという顔で肩を竦めるのみだった。


(ここで子供の事を聞いたら、またペースを握られるか? しかし……)


「オリアスが駄目になった……代わりが必要」


「代わり?」


 またも、ウルバインが要点のみをこぼすが、分かり難いので聞き返してしまう。


 だが――


「……そう!」


「……」


 華麗にポージングをしながら、たったの一言で会話が終了してしまう。


(何これ、凄くやりづらい!)


「はぁ~ぁ、分かった事情を話す。だが、こんな場所では話せん。……付いて来い」


 仕方無いとばかりにバルザックが折れた。どうやら、事情を明かしてくれるらしい。


『交渉術Lv1を獲得したニャン?』


 突然、頭の中でAIの声がしたが、交渉術スキルを覚えた事を教えてくれたらしい、今までは一々確認しないと分からなかったので、非常に助かるのだが……何故に疑問形なのだろうか? 会話は出来ないのか、する気が無いのか……返答などは無かった。ついでとばかりにステータスを確認しておく。


 AIを設定したからなんだろう。上がったステータスが分かり易くなってるが、無駄な表示が目立つ。ニャンっていうのは必要なのだろうか? 新しく得ていた交渉術は伐採と入れ換える。今、伐採を使う予定無い。


(何処かで鑑定スキルも覚えたいよなぁ、バケモノ呼ばわりされちゃったし……普通って、どれくらいなんだろ?)


 そういえば、レベルも上がらなかった。オリアスは、要するに雑魚だったって事だろうか? 剣スキルも上がらず、不満がたまる。切って無いからだろうか?


(躱させた所に突っ込んでぶん殴る。うん、やっぱりスキル使ってないや!)


 打撃か拳闘か……新たなスキルは素手では無く、剣の柄で殴った為に覚えられなかったのだろうか? オリアスが弱すぎて経験値が得られなかったとしたら……。


(それだと不味いな、簡単にはレベルが上がらんって事にならんか?)


 リュージが、そんな事を考えている内に連れて来られたのは、比較的に大きな家だった。てっきり自警団の見張り小屋に行くかと思っていたが、違った様だ。


「見張り小屋じゃないのか?」


「あそこは、お前が壊した牢を直すのに集まった人数が多い、ここは里長の屋敷だ」


 それは、失礼しましたと肩をすくめて中に入ってゆく。


「ここで暫く待ってろ、里長を呼んで来る」


 そう言ってバルザックは奥に消えて行った。正直な話、このハゲマッチョと二人きりにはしないで貰いたい。リュージは、内心でそう思っていたが声には出さなかった。今も何やらポージングをしているからだ。


(れ、練習だよな? 変なアピールとかじゃないよな?)


 既に、この男にかなりの苦手意識を植え付けられているのだが、このあまりにも特異過ぎる行動を苦手に思っても、誰にも責められないだろう。そんなウルバインからジワジワと、しかし確実に距離を取って、待つ事五分程だろうか。それは、一時間にも二時間にも感じる、長い長い時間だった。


「待たせた様じゃな。わしがこの里の長をしているオラドゥールじゃ!」


 それは、元気な爺さんだった。眼光は鋭く、未だ現役だと言わんばかりの風体で、こちらに視線を向けてくる。


「……リュージで良いです」


「そうかそうか……では、リュージ! 話しは、バルザックから聞いた。オリアス達がすまん事をしたの」


「何故、謝るんです?」


「おんしは、悪いと思っても謝らんのか?」


「いえ」


 里長から、いきなり謝罪され……困惑する。てっきり脅迫でもされるのだろうと身構えて居ただけに肩透かしを喰らった格好だ。


「実はな……あやつ等にも暴走するだけの理由は有るんじゃよ。言い訳になってしまうんじゃがな」


「理由ですか」


「そうじゃ、おんしには直接関わりの無い事じゃが、聞いて貰えんかの?」


 こうして、リュージは捕らえられる原因になった事の顛末を里長から聞かされる事になった。

 因みにステータスは、こんな感じです。


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属

 種族   異世界人


 レベル  2

 生命力  456/956 

 魔力   ∞

 力    753   

 体力   765    

 知力   2046    (5up ニャン↑)

 素早さ  1208  

 器用さ  276

 運    46     (5upニャン↑)

 魔素ポイント 99998498


 《スキル》

[電脳Lv2] [電化Lv2] [方向感覚Lv2]

[鵜の目Lv2][鷹の目Lv2][気配察知Lv1]

[剣Lv1]  [槍Lv2]  [交渉術Lv1]

[投擲Lv1] [潜水Lv3] [泳法Lv3]

 蹴撃Lv1   料理Lv1   盾Lv1

 登山Lv1   伐採Lv3


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