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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第一章 異世界でぼっち篇
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第五話 海を渡って初遭遇!

 水平線の彼方に沈む夕日を、観賞しながら食べている鯵の塩焼きに舌鼓を打つ。


(いや~旨いな! 六匹とも塩焼きにしたけど、ご飯も欲しくなるな)


 食べ応えが有って全部は食べきれなけど、アイテムBOXに保管して置けば、熱々の状態で何れくらい持つかの実験も出来る。まさに、一石二鳥であった。


 日も落ちて、辺りもすっかり暗くなった頃、折角なので魔法の練習をしてみる。ただ暇を持て余しただけとも言うのだが。


(焚き火を利用すれば楽かな……?)


 焚き火の炎を、魔力で操作出来ないかと念じてみるが、微動だにしなかった。


 何が悪いのか、魔力はあるはずだ! では、魔力が出て無いのだろうか?


(魔法を使うなら、魔力を操れないと駄目って事かな? 魔力と気ってのは別物なんだよね?)


 しかし、何処かで師に教えを乞う訳でも無く独学で身に付けるならば、例え間違っていたり遠回りだったとしても、やれる事をコツコツやるしか無いだろう。少なくとも、今は……。


(まぁ、焦らず地道に行けば良いか)


 魔力の操作なんてピンと来ないが、漫画の知識を総動員する。気功がどうとか、チャクラが何とか? 取り敢えず、座禅を組んでそれらしい事をしてみる事にした様である。


 暫くの間、無心になり内なる声に耳を傾けてゆく。やがて身体を循環する血流を感じる。足が痺れた訳ではない、正座では無いのだから。昔は、ここまでは感じなかった。空手だとか剣道だとか武道系の部活動の合宿なんかでは、お決まりだとばかりに、座禅を組む時間が設けられたりするけど、眠くなるだけだと思っていた。


 昔と今で違うのは魔力の有無だろうか? そして、無限だと言うその魔力が体内に充満している。違和感など無いので、異物とまでは言わないが、この僅かだが大きな違いが切っ掛けになってくれそうな気がした。


 イメージで言うと、氷? 石や鉄、固体だろうか? 固まっていて動かない状態だ。どうやら、これを解して動く様にしなければならないらしい。要するにリハビリだろうか?


(いや、あれは完全に戻らない上に痛かったからな、凄く痛かった! 手術したばかりなのに癒着するからって曲げたり伸ばしたり、二時間置きに自分で動かすとか、どんな苦行だよ! ……かといって、笑顔の先生に動かされるのは地獄だったし。いやいや、話が逸れたな、え~と? 難しいけど痛みが無いから頑張れるな。楽かは分からないけど、リハビリに比べたら増しだろう)


 何処までやれば良いのだろうか? 流動させるなら、血液の様に液体のイメージか? それとも気体なのか? 血流で運ばれる酸素のイメージか? そもそも取り込まれて血流に乗った時点で、酸素は気体なのか? 様々な疑問が浮かんでは消える……明確なイメージの邪魔をする。


(駄目だ分からん! 分からない事を、難しく考えても駄目だな。そんなのは学者先生の仕事だし……兎に角、自然体になろう。イメージ、イメージだ!)


 やはり、独学では駄目だろうか。独学どころか、感覚でしかなかったのだから。


(考えるな……感じろ! ――って、あのスーパースターも仰っていたじゃあないか、何となくイメージで乗り切ろう。そういう風に出来ているんだと思おうじゃないか!)


 身体の動かし方など教わらなくも、赤ん坊は動く! 生き物は元からそう出来ているんだから。そんな事を考えていた。正解に近いかも分からない、そもそも辿り着ける道なのかも。だが、入り口だけは見付けた気がする夜だった。


(もう、真っ暗だなぁ。あれっ? 月が無いな。昨日も無かったけど、見えないだけか?)


 この時はスルーした、今まで月齢なんて気にして来なかったし、詳しく無いから、楽観的にそんなもんかで済ませてしまった。知っていても何も出来ないのだが。


 一時休憩とばかりに、燦然さんぜんと輝く星空を見上げ、何となく気になっただけの事、そんな事を知るよしも無いので、深くは考えずに魔力操作の練習に没頭するのだが、いつの間にか寝ていた。


 自然体になろうと目を閉じている内に、気持ちが良くなって寝落ちしてしまうのは仕方無いのかもしれないが、座禅の姿勢で寝れるのは在る意味才能だろうか?


(ぬぅ~おぉぉぉぃ……あっ……足がぁぁ……腰がぁぁぁ……!)


 自業自得だが、寝るには不自然な姿勢で長時間過ごした為に、暫く足腰がバキバキで動けず、奇妙な唸り声を上げる不思議生物の姿があった。


 爽やかな早朝には、全くもって似つかわしく無い姿ではあるが、夜の海風に吹き晒されても風邪を引いていないのは、膨大な魔力の賜物たまものか、それとも焚き火に投入した余りの丸太が、火事さながらに燃え続けた結果だろうか。


 良い子の皆さんは真似しないで下さいね! って言われちゃう所業である。


(ちゃららららららんらん! ちゃららららららん!)


 暫くの後、漸く落ち着いた足腰を伸ばす為に、簡単にだがラジオ体操をして身体を解す。今日は、いよいよ未知なる海に漕ぎ出すのだ。帆を張るから漕がないのだけれど……。


 朝食として、アイテムBOXから昨日の鯵を出してみる。冷める事を知らないとばかりに熱々なそれは、二日目でも飽きないだけの旨味を有していた。アイテムBOXには、やっぱり時間の概念が無いのだろうか? 二日くらいは全く問題が無い事も分かり、腹も満ちたのでテントを解体する。


 帆の替わりとして利用するには、打ってつけでこれ以上は無いだろう。少なくとも、現在の所持品の中には無い。これを帆柱に括り付ける。まだ、テントとしても使い倒すつもりなので、破けたり穴が開いたりしない様にビニール紐で慎重に縛り付ける。


 完成した筏は重すぎて、押しても引いても動かない! ――って事で、アイテムBOX登場! 一旦、アイテムBOXに収納して移動。


(海の上でボチャン! アイテムBOXマジ便利!)


 簡素に……何の感動も無く終わった進水式。


 立志は、俺が組んだんだから当たり前的な雰囲気でさっさと乗り込み、帆に風を当てる。


 帆は、左からの風を受けて前に進む、今は南から風が吹いている様だ。冷たい北風じゃなくて良かったなどと、割りとどうでも良い事を考えてる間にも筏は進んでゆく。


 航海は順調だ。スキルのおかげでも有るのだろうか? 目が覚めて不様に動けない間に、装備中のスキルを入れ替えてみたが成功だろう。


 鵜の目が意外にも使える事が分かった。名前の感じから鷹の目の下位互換かと誤解していたが、似て非なる全くの別物だった様だ。確かにジャンル的には同種にあたるのだが、能力面で差別化が図られているらしい。鷹の目が高い場所から俯瞰ふかんして、全体像を捉える全体把握に特化した能力であるのに対し、鵜の目は獲物の動きを読む、行動予測に特化した能力だ。


 西へ西へと取る進路は順調過ぎて、帆の角度を調整する事もあまり無い。帆船は風を受ける揚力を利用して進む。風に対して大体、四十五度位の角度だろうか。これは筏だが原理は同じだ。このまま南からの風が吹いていれば、その内着くだろうと、呑気に魔力操作の練習をしていたのが悪いのか、いつの間にか頼りの風がピタッと止んでいた。


(おいおい、こんな場所で放流とか、勘弁してくれよ)


 幸いにして、鷹の目の能力も有り渡りたい陸地は見えている。向かおうと思っていた村は見えないが、大体の方向はわかっている。しかし、風が止み徐々にだが、北へ流されている様だ。このまま北へ流されて、別の村なり街が在れば良いのだが、そう甘くも無いだろう。仕方無く帆を畳み泳ぐ事にするが。


(こんな事なら、もっと小さい筏にすれば良かった)


 内心で愚痴ってみたが、疲れた時に休む為にも筏を放置して行く訳にはいかない。暫くの間、一生懸命に筏を押して泳ぐのだが、疲れての休憩中にアイテムBOXから水を出して愕然とする。


(そうだった。アイテムBOXに入るんだった)


 うっかりと言えばうっかりだが、体力より精神力の方を削るミスだった。


「これが、若さ故の過ちと言う奴か……」


 こんなお馬鹿な台詞を吐いてしまう程に……。台詞自体がどうこうでは無く、ただ言ってみたかっただけの台詞を、この状況で使うセンスの問題である。――認めたくは無いが、それからは順調に距離を稼いだ。途中で見付けた旨そうな獲物を狩りながら。お手製の銛で、鯵や鰹を突いてゆく。そこに現れしは黒光りする弾丸。あれは、鮪? 南から北上して来る鮪の群れは、一つの生き物であるかの様に集まり、直前まで迫っているのだが、目の前で上下左右に別れて障害物である立志を避けてゆく。


(逃がさんぞ! ……なっ!)


 狙いを付け、横から銛を刺すが。鮪はその勢いのまま直進し銛を抜こうとする。海中で暴れる鮪のスピードは凄まじく、逆に銛が折れてしまった程だ。しかし、その勝負も紙一重だったらしい。銛が刺さり弱った鮪は、アイテムBOXから取り出したブッシュマチェットにより、止めを刺されるのだった。


 勝負には負けたが、試合には勝ったと言うべきか。敵ながらあっぱれ! 美味しく頂こうじゃないか。そんな事を考えながら泳いでいると、漸く陸地に辿り着けた。島から見て対岸の陸地だが、名前は知らない。


(こんな事なら、カップ麺作ってアイテムBOXに放り込んでおけば良かった!)


 そういえば、飯を食って無かった……。予定では、昼過ぎ頃には辿り着くはずだったから、準備はしなかったのだ! 予定は、未定という言葉が頭を過る。海の上では火も起こせないので仕方無い事だが、腹が減っている立志は愚痴を溢す。


 だが、ここまで着たら人里まで行くべきだろう。見えていた村は近いはずだから! そう思って、辿り着いた海岸から奥に向かって歩き始めた。たぶん、こっちだと思うけど……と、方向感覚のスキルを信じて歩いてゆく。そのまま歩く事、四十分という所だろうか? 一つの村が見えて来る。やった! 着いたー! と思って駆け出そうとして気付いた。


(あれはっ、外人だ……ヤバい! 言葉通じるかな? 英会話なんて解らんぞ?)


 外国語が分からない中年のおじさんが、怖じ気付くのも分からなくは無いだろう。ただでさえ人見知り気味なのに、日本人では無い事が明らかなのだから。いざとなったら、ジェスチャーで乗り切るしか無いのだが、金も無い為に交渉は至難を極める事が予想される。気分としては、冷ややかな観客が待つステージに向かう、お笑い芸人の心境に近いのではないだろうか? 自分達の前の順番で駄々滑り……どうにか会場の雰囲気を温めないとならないプレッシャー。笑わす腕が有れば自信も付くが、その腕も無いのでは地獄……いや、死刑宣告を待つ心境だろうか。


 そもそも、ステータスに異世界人と表示されている事からも分かる通り、ここは異世界だ。人を見て、外人だとか英会話とか言っている時点で間違っている。だが、その勇気だけは買おう。意を決して先に進んだのだから――。


(あっ! 外人さんが気付いた様だ。見られている。何だろうか? 凄く見られているよ)


 無言の視線に耐えられず、声を掛けてみる事にした。


「ハ……ハロー? ハウアーユー?」


「……」


 突然、無言で逃げられた。


(あ、あれが脱兎の如くって奴か? ……いったい、俺が何をしたって言うの! 逃げたいのはこっちだよ)


 目の前で起きた出来事に、呆気に取られたものの……気を取り直して、他の村人を探す。村に着くまでに上がったステータスを確認しながら。


 また、随分と上がっていた。電脳と電化か、他もちょこちょこ上がってるが、スキルとステータスが、連動するのは何故だろうか? 誰か教えてくれる様な賢者はいないだろうか。そんな期待を膨らませながら、ひたすら歩く。


(村人……居ないなぁ)


 もうすぐ日も暮れる。この感じの村ならば仕事が終わり疲れた父親と、夕飯の支度をする母親……それを手伝う子供なんて言う、一家団欒の光景が繰り広げられている頃だろうか? 人の居ない田畑の畦道を通り抜け、声を掛ける村人を探しながら村を目指す。


(俺は悪く無い! 悪く無いぞ! 悪く無いんだ!)


 そんな立志は……いつの間にか、むさ苦しいおっさん連中に取り囲まれていた。理由は、分からない……果たして、コミュニケーションは成立するのだろうか。

 今回のステータスは、これ!


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属  

 種族   異世界人


 レベル  2

 生命力  456/456

 魔力   ∞

 力    253

 体力   265

 知力   2041 

 素早さ  708

 器用さ  276

 運    41 

 魔素ポイント 99999998



 《スキル》

[電脳Lv2] [電化Lv2] [方向感覚Lv2]

[鵜の目Lv2][鷹の目Lv2][気配察知Lv1]

[剣Lv1]  [槍Lv2]  [伐採Lv3]

[投擲Lv1] [潜水Lv3] [泳法Lv3]

 蹴撃Lv1   料理Lv1   盾Lv1

 登山Lv1



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