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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
ダンジョン攻略篇 ~ラストック~
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第五十話 ダンジョンアタック!(四)

 声を掛けて来た探検者達は、一週間掛けて探索した帰り道だったらしい。今現在の実力的に地下四階までが比較的安全に潜れる限界との事で、それより先の詳しい情報は得られなかったのだが、実際に見て来た生の声は貴重な情報である。どんな感じか聞きながら、図書室に在った情報と擦り合わせつつ雑談に興じていた。


「槍はぶっ壊れてたが、あの剣はスゲーな! 何で出来てんだ? 高いのか?」


「馬鹿! 当たり前の事を聞くな……悪かったな」


 未だに、巨大千足の体を張り付けにしているツヴァイヘンダーを見て、興味津々なマックスが臆面も無く材質やら値段を聞いて来るが、ロベルトが止めて謝って来た。


「いや、普通の剣だと思う。心配だったから魔力でコーティングしただけ――」


 リュージは、言葉を発しながら手にしたバスタードソードを鞘から抜いて見せる。だが、現れた剣は買った時とは全くの別物であった。


 輝きが失せているのは理解出来るのだが、目の前で起こったであろう現象とその存在に困惑し、言葉に詰まってしまう。


 慌てて巨大千足を縫い止めたツヴァイヘンダーを引き抜いて回収するが――やはり、同じ事が起こっていた。


(なんだ、これっ! どういう事だ?)


『恐らく、魔力が濃縮する過程で金属に何らかの変化が起きたのではないかと推測しますニャン』


 魔力でコーティングした二本の剣は、膨大な魔力に晒され化学変化でもしたかの様に色合いが変わっていた。


 鈍い光沢のある鉄色の剣から、金と銀の粒子を練り込んだかの様な漆黒の剣――燦然と輝く星空を写し取ったと思わせる幻想的な剣へと変化し、魔力を宿しているのが感じられる。


(これは、良いのか悪いのか……どっちだ?)


『見た目は綺麗ですニャン。質は試してみない事には分かりませんニャ』


 剣を触ってみるが、特に脆くなったという印象は無い。リュージは近くに転がった触角を拾うと、試しに斬り付けてみる。


 無制限に魔力を使ってコーティングした時程では無いにしても、ただの剣であった時とは比べるべくも無い切れ味に嬉しくなる反面、何が起こったのか分からないという不安が過る。


『御主人、ほぼ全ての物に魔素が含まれているそうですニャン。剣に僅かに含まれた魔素が御主人の魔力に反応して活性化したのか、物質が膨大な魔力で変化したのか……本当の所は分かりませんが、御主人の魔力で起きた事なら変な事にはならないと思いますニャ!』


(そうだな、考えても分からないし。こいつらはもう、俺の相棒だからな……何とかなるか!)


 慰めモードになったクゥーの言葉を受けて前向きに考える事にしたリュージ。何だかんだ言っても、良いコンビである。


「なぁ、どうしたんだ? いきなり」


「悪いな、剣の見た目が違ったんで驚いたんだよ。最初は普通に鉄の剣だったんだけどな」


「ほぅ、見せて貰っても良いだろうか?」


「ん? 良いよ」


 リュージの挙動に疑問の声を上げるマックスに理由を説明すると、ロベルトが見せて欲しいと言って来る。既に戦闘中の輝く剣も見られており、コーティングした事も漏らした後なので、特に隠すつもりも無いリュージはすぐに了承した。


 鞘ごと渡されたロベルトは、慎重な手付きで剣を抜き――感嘆の溜め息を吐いた。


「魔鋼にも似ているが、少し違う気もするな。専門では無いので詳しくは分からないが、ラストック辺りでは早々お目に掛かれない品物だろう。これが本当に鉄の剣だったと?」


「あぁ、買ったのもラストックだから。クロードの武器屋って知ってる?」


 専門では無いと言いながらも、それなりに武器を見て来たのだろう。真剣味を帯びた表情で観察する様は鑑定士と見紛うばかりである。


 本当に鉄の剣だったのかと真偽を問われたリュージは、ここでの証明は無理でも問い合わせれば分かるだろうと、買った店を教えたのだが――。


「マジっ? 俺達もそこの常連なんだよ! なぁなぁ、こいつもあんたの剣みたいになんね~かな?」


 どうやら同じ店を利用しているらしく、同じ方法で剣を強化出来るのではないかと欲を出して来たのだ。ところが――。


「駄目だ! 過ぎた武器は厄介事を呼び込む、諦めろマックス。だいたい失礼だぞ」


「えぇ~っ何でよ? そりゃね~よ!」


「そうだな…他の探検者は兎も角、貴族なんぞに目を付けられでもしたら、笑い話にもならんな。うちの馬鹿が悪かった忘れてくれ」


 他の二人は冷静な判断を下し礼節もわきまえている様だ。すぐにハワードがたしなめるのだが、未だに不満気なマックスを余所にロベルトが意見を纏める様に撤回するのだった。何れにしても、怒られたばかりなのに懲りない男である。


 確かに、大して親しくも無い相手に随分と気安い感じではあるが、これもマックスのキャラクターなんだろう。リュージとしては、嫌な印象は受け無かったので、試しにやってみても良いかと考えていたのだが、話を聞いてみれば納得が行く理由も有るので、実行はしなかった。


 形が変わった訳では無いので、普通に現状の鞘に収まるのだ。つまり、抜き身を見られなければ目立つ事も無い、自慢して見せびらかさなければ大丈夫だろう。


 だが、マックスを見れば分かる通り、それこそが心配の種である以上は軽々しく渡す事は出来ない。それが原因で死なれても寝覚めが悪いし、何より奪われる事で気に入らない奴の手に渡るのは我慢出来ない。


 また、それを知らない内に高値で転売されるくらいならば、自分で売る事を考えた方が利口である。


「何だよ! お前らだって欲しい癖によ~。折角、俺が聞いてやったってのに馬鹿呼ばわりする事はね~だろが!」


 納得が行かないとばかりにブツブツと文句を言うマックスに、当たり前の様にリーダーとしてロベルトが注意をする。このメンバーのお決まりのパターンなのだろう。


「お前が考え無しに失礼な事をするからだろ、会って間も無い相手に言う事か? 況してや命の恩人だぞ?」


「えっ? 巻き込んだのは俺の方だけど」


 ここで、予期せぬ言葉がハワードから出て来て動揺が隠せないリュージ。何でそんな話になるのかが分からなかった。


「いや、勇者殺しがこの階層に居たのならば、遅かれ早かれ出会った筈だ」


「そうだな、帰りがけに出会ったのが俺達だけだったとしたら。その時、リュージが居なかったなら犠牲どころか全滅も有り得ただろう」


「いやいやいや、可能性がどうであれ事実は変わらないんだから! そんな事言ったら、一つ間違えただけであんた等を殺してたかもしれない俺はどうなるのさ? やめてくれ! チャラだから! 結果オーライOK?」

 

 ハワードの言葉を引き継ぐ形で、ロベルトがたらればの話をする。二人の言いたい事は分かるのだが、そんな不確かな可能性だけで恩人扱いなどされては、背中どころか全身がむず痒くなって敵わないだろう。況してや、自分のミスを無かった事にしたいリュージにとっては、不都合な考え方である。


「そんなつもりでは無かったんだがな……分かった。でもなぁ、それほど嫌な事か?」


「あぁ、感謝される様な状況じゃ無いからな! 買い被られるのは好きじゃ無いんだよ。寧ろ侮られるくらいの方が楽で良い」


 何とか言い含めたのは良いのだが、確認する様に再度疑問を呈するロベルトに、リュージは正直な気持ちを打ち明ける。


「はぁ~っ? 俺なら自慢して廻るけどな! 正当な評価は受けるべきだろ? 侮られるなんて真っ平御免だね!」


「そりゃあ、お前はそうだろうよ」


「……だな」


「あぁ~……、俺にも分かった」


 残念ながらマックスとは意見が合わないらしく、自分の主義主張を高らかに宣言し始める。それを聞いて、長い付き合いになるのだろうロベルトが呆れた様に首肯しゅこうすると、ハワードもそれに続く様に相槌を打った。


 ――だが、会って間もないリュージにも言いそうな事が分かったと伝えると、誰となく「ぷっ」っと吹き出したのを切っ掛けにして笑いが巻き起こる。


 三人だけでゲラゲラと笑いこける中、笑い者にされた上に除け者にされた形のマックスだけは、不満たらたらで抗議するのだが、それがまた面白かったりするので始末が悪いのだった。






 一頻り笑った後、今後の事を話し合うのだが言わずもがなリュージは挑戦し始めたばかりであり、“勇敢な同志タップファーカメラート”は帰還中なのだ。


「俺は来たばっかりなんでな……ダンジョンの討伐を目指して更に潜るさ!」


「そうか、俺達は帰還中だからな……食料も尽きるし、残念だがここで失礼するよ」


 ロベルトも残念そうにしているが、食料が無いのでは仕方が無い。


「あんたでも簡単には行かないだろうけど、近い内には攻略しちまいそうだな! ところで、あれはどうする気なんだ?」


「あぁ、アイテムBOXに入るから。そうだ! 解体のやり方って分かるか? 解体方法の教本は読んだが、見た事無くてな。参考に教えてくれたら半分やるよ!」


 実は、ずっと気になっていたのだろうか。マックスはリュージを激励しながらも、巨大千足の死骸を親指で指し示しながら確認して来た。


 リュージは、マックスの言いそうな事を予測していた。アイテムBOXと言った時の表情から察するに、大きくは間違って無いのだろう。そこで急遽、解体の手本を見たいと切り出してみたのだが、いつかは必要な事なので決して損では無いと判断した様だ。


「マジかよっ! 任せろ! 今やろ! すぐにやろ! ひゃっ――ふぼっ! ぐふっ!」


「うちの馬鹿が申し訳無い。もしかして、気を遣わせちまったか? 有り難い話だが、報酬にも相場ってのが有るからな。教えるのは構わないが多過ぎる」


「馬鹿の教育にも良く無いな」


 飛び跳ねて喜ぶマックスの頭に、拳骨を落としたロベルトと腹にワンパン入れたハワードが、適正な報酬を教えてくれる。しかし――。


「でも、俺も魔石以外はそんなに要らんからなぁ。あっ! そうそう、持ち運びの事なら地下一階の骨蝙蝠はマッピングがてら全滅させて来たから、復活してなければ姿を現さないんじゃないかな? 油断するべきじゃないけどね」


 さらっと伝えた爆弾発言に驚くロベルトとハワードを余所に、うずくまって頭と腹を抱えるマックス……それほど痛かったのだろうか、今よりも馬鹿にはならない事を祈りたい。


 結局のところ、解体した甲殻は作業が予想以上に大変だった事も有り、リュージの意見が採用されたのだが、今度はロベルト達には運搬が難しいとして、後日ギルドに預けて置くという事になった。


 探検者は普通ならこんな約束は絶対にしない。信用していたとしても、生死が関わるダンジョンに絶対は無いのだから。それでも、成立したのはリュージの強さを見たからだろうか。意気投合したのは事実だが、それだけでは無いだろう。


 こうして、お互い無事の再会を約束した二組は、それぞれに目指す方向へと足を向ける。気の良い奴等に手を振りながら、リュージの目指す先には地下への縦穴が口を空けていた。


 リュージは、穴を覗き込むと無造作に飛び込み、壁を蹴って勢いを殺しながら下りた場所は地下三階である。


 地下二階で随分と時間を潰したが、ここからは探検者にも注意しなければならないと気を引き締めて進む。


 魔物は兎も角、探検者相手であれば隠形スキルを常時発動していれば見付からないのではないだろうか。単独行動なので魔物と間違われるなんて事にも気を配る必要が有るだろう。自らが間違う側を経験したばかりなのだから。


 この階層には見るべき場所は無い様だ。時折、ねずみの魔物が現れるが雑魚でしか無い。数はやたらと多く数匹で集まっている事もあるが、必ず群れで行動すると決まっている訳でも無い。


 大食いフィールフラースラッテなんて名前で体長五十センチメートル程だろうか。足元をチョロチョロして、かなりウザいのだが蹴るのに丁度良かったりもする。


『蹴撃LvMAXだニャ~』


(何匹くらい蹴ったんだ? 沈没船じゃあ有るまいし……エンカウント率高過ぎるだろ!)


 ギルドの資料では、放って置くと際限無く増えるらしいが、何処まで本当かは分からない。餌が無ければ共食いするという話だが、それで何故増えるというのか。


 仮に事実だとすれば、恐るべき繁殖力と成長スピードを持つ事になるのだが、今度は餌の量が問題になるだろう。もしかしたら、魔素を取り込む等して食事の必要が無いのかもしれない。


 だとすれば、魔物にとって食事はデザート感覚であり、必ずしも必要では無い。或いは殺戮衝動のみの行動であろうか。


 噛まれたら病気になりそうな大食い鼠を、蹴り飛ばしながら死骸をアイテムBOXに回収して進んだ先に、大部屋を発見して中に入る。


「なんだこりゃ…何にたかってんだ?」


『普通に考えれば……探検者ですかニャ?」


(人の気配は既に無いけどな)


 リュージが見たのは、山の様に集まって何かを喰っている大食い鼠の群れ。人の気配は感じないので、既に事切れた探検者だろう。


 リュージは、魔法による蹂躙を選択する。


「消え失せろ、ネズ公……桜火爛漫!」


 魔法により生み出された桜吹雪が舞う度に、触れた大食い鼠のみを燃え散らせる。


 花弁の絨毯も大食い鼠が燃え尽きると、白っぽい灰を残して消えてゆく。


『カラ~ン……カラ~ン』


(これだけ燃やせばレベルも上がるんだな。まぁ、それは置いといて――)


 大食い鼠を蹂躙し部屋に静寂が訪れると、探検者の遺体で検索を掛けるリュージ。視界に八つのマーカーが表示され、目標の位置を教える。


(八人居ても殺られたのか)


『数の暴力に抵抗するのは至難ですニャ! 戦闘中に集まって来た大食い鼠に囲まれて、逃げる事も出来ず……手に負えなくなった者から、徐々に殺られたパターンじゃないかと推察しますニャン』


 探検者パーティーと思われる八人の遺体を灰の中から引っ張り出し、装備品を探ってギルドカードを見付けた。所属はラストックになっているので、家族が居れば見付かるだろう。


(家族には見られたくないんじゃないかな)


『家族の意思に任せたらどうですかニャ。御主人が悩まなくても、ギルドが上手くやりますニャ!』


(それもそうだな、ギルドに丸投げしよう!)


 恐らく生きたまま喰われたのだろう無惨な遺体を、どうするべきか一瞬だけ悩んだのは顔も分からなくなっているからだが、それでも会いたいという家族が居るなら連れて帰ってやろうと、ギルドカードで分かる様にしてからアイテムBOXに収納するのだった。

 ステータスはこんな感じです。


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属   隠れ里

 種族   異世界人

 

 レベル      14 (1upニャン↑)

 生命力   1303/1600

 魔力       ∞

 力       1147  (1upニャン↑)

 体力      1049  (1upニャン↑)

 知力      4406  (1upニャン↑)

 素早さ     2036  (6upニャン↑)

 器用さ     745  (1upニャン↑)

 運       478  (11upニャン↑)

 魔素ポイント 99968458

 所持金    62521マアク25ピニ


 《スキル》

[電脳Lv4]      [電化Lv4]

[心眼LvMAX]     [鷹の目LvMAX]

[魔導の心得Lv1]   [剣術Lv1]  

[蹴撃LvMAX]  1↑ [隠形Lv3]

[夜目LvMAX]     [音波感知Lv3]

[忍歩Lv4]      [発見Lv4]   1↑

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

木工Lv3 盾Lv1 登山Lv1 投擲Lv1 伐採Lv4 斧Lv1

錬金Lv4 石工Lv1 槍術Lv1 海中遊泳Lv3 交渉術Lv3

調理Lv1


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 テクニシャン

イジメっ子 笑う切り裂き魔 三助 温泉伝道師

大蛇殺し 海洋生物 盗賊殺し トレジャーハンター

子供の味方 賞金稼ぎ 巨蟲殺し

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