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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第三章 旅立ち篇 ~ラストック~
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第四十四話 嫌がらせという名の悪戯!

お待たせ致しました。

台風一過、暑いですね~。

 さて、手配書を作る事は確定だが問題は紙をどうするかであろうか。この世界にも一応、紙らしき物は有るが主に羊皮紙と呼ばれる物であり、手軽に大量に手に入れる事は難しいだろう。


 古代エジプトにはパピルスという物が有った筈である。異世界であっても、中世位の文明レベルなので存在していても決しておかしくないのだが、庶民が目にする程は出回って無いのだろう。


 輸入するにしても物流が未発達なので、更に価値が上がるだろう。羊皮紙にしても製法を守る為に職人達がギルドを設立して管理しているし、獣の皮から作る以上は数に限りが有るだろう。また、大量に買おうとすればそこから足が付く。


 やはり、自前のプリンター用紙を使うしか無いだろう。剰りにも質の良い紙で目立つだろうが、写真にするのなら今更でもある。光沢紙は普通紙よりも少ないが、通販サイトで箱買いした方が安かったりするので、今のところ十分な枚数が有る。インクカートリッジは心配だが、いざとなれば魔素ポイントで増殖も有る……尤も、代官が住む屋敷やギルド等の主要箇所の周りだけでも、十分な注目を集める事が予想されるので、二十枚も作れば良いだろう。


 リュージは、早速とばかりにデジカメの機能を利用して出力したクゥーの記憶から、男爵夫人の顔がハッキリ分かる部分を抜き出してプリントする。男爵夫人とオイゲンが浮気しているかの様な合成写真を作成する事も考えたが、それは切り札にする事にした。


 懸賞金額は五万マアクにして、文面等はヴァルターと相談したので、形だけは間違い無く手配書である。本物を見た事が有る者が他に居なかったので仕方無いのだが、偽物とバレても警戒させれば良いだけなので問題は無い。


「出来た! こんな感じでどうだろう?」


「すっ、凄いですね! こんな詳細な絵は見た事が有りません。これなら誰が見ても男爵夫人だと分かるでしょう」


「ねぇ、リュージ。これって私達の絵も出せるのかしら」


「あ~、出せますけど……また今度にして下さい」


 初めて写真を見た皆は一様に驚いくのだが、今回の作戦の成否を気にしているのはヴァルターだけの様で、イヴァンジェリン等は自分の写真が欲しくなったらしい。ヴルバインもポージングしていたので、恐らく欲しいのだろう。


「午後は、どうするかは決めてるんですか? 因みに自分は、これを貼った後は探検者ギルドでダンジョンについて調べようかと思ってます」


「私とリオは、宿で大人しくしています。折角の作戦を、台無しにする訳にはいきませんから」


「リアちゃんが心配だから、私も残る事にするわね」


「……疲れた……」


 ヴァルターとリアは宿で待機で、イヴァンジェリンも護衛として待機となる。コリーンはそれなりに大きな魔法で疲れたそうで、少し眠そうにしている。昼寝をすれば、気持ち良く休めるだろう。ヴルバインはスクワットを始めたので、宿でトレーニングでもするのだろう。結局、出掛けるのはリュージだけだった。


(寂しくは無いさ)


『御主人、クゥーが一緒ですニャ』


(あぁ、そうだな。クゥーが一緒だもんな)


 街の主要な施設は中央に集まっているので、大きくて目立つ建物の壁に手配書を貼り付けて廻る。若干コンパクトだが砦を思わせる造りをした男爵の屋敷の周りを多めにして、各ギルドの正面にも……探検者ギルドは、内部にも貼っておいた。リュージの素早さに、心眼スキルと忍歩スキルをもってすれば造作も無い作業である。


『隠形Lv1を獲得したニャン?』


 心眼スキルで周囲を警戒しながら、忍歩スキルで音も無く移動し周囲の視線が完全に逸れた一瞬の内に手配書を貼り付けて行く。目にも止まらぬ早業というか素早さで、作業を繰り返す内に新しいスキルを獲得したのだが、微妙に納得が行かない。


(隠形って……呪術とかで、隠れる事を言うんじゃ無いのか? よく知らないけど)


『可能性として呪術と魔法は体系や呼び方が違うだけで、元は同じなのかもしれませんニャ。ここは異世界ですが、御主人は元の世界で呪術なんて物を見た事が有るんですかニャ? クゥーにも分かりませんが兎に角、仕様なんですニャン』


 最近、分からない事は全て仕様で片付けようとしているのではないかと思いつつも、リュージに答えが出せる筈も無いので流す事にした。スルースキルは獲得しないのだろうか。

 

 二十枚の手配書を貼り付け終わったリュージは、何食わぬ顔でその場を離れそのまま二階にある図書室へと向かうと、予定通りに色々と調べる事にした。


 リュージは頭に装備した魔道具の効果で、字を書く事は出来ないが会話や読書は可能である。だからこそ、図書室へと足を運んだのだが目的は時間を掛けて読む事では無かった。


「こんにちは、初めて利用するのですが何か決まり事は有りますか?」


「ギルドカードは有りますか? 無ければ利用料として一回の入室で十ピニとなります」


 リュージは昨日作ったばかりのギルドカードを取り出して確認して貰うと、説明の続きを聞く。


「はい、確認しましたのでお返し致します。新人探検者のリュージさんですね? それでは簡単にご説明致します。当ギルド会員つまり、探検者の方は無料で図書室の利用が可能ですが、室外への持ち出しは不可となっております。室内での閲覧は自由ではありますが、汚したり破いたりした場合には賠償金として、かなりの金額をご請求する事になりますのでお気を付け下さい。万が一にも持ち出そうとした場合は、窃盗の罪で手配されますので、くれぐれも馬鹿な事はお考えになりません様にお願い致します」


「持ち出し禁止との事ですが、書き写す事も駄目なんでしょうか?」


「それは可能ですよ。こちらで羊皮紙やインクの販売もしておりますので、宜しければご利用下さい」


「ありがとうございます。必要になったらお願いします」


 説明を聞いたリュージは、予想通りのルールだった事に安堵し内心でほくそ笑んでいた。室内から出さずに汚したり傷付けなければ自由であるなら、まるまるコピーしてしまっても問題は無い。現に書き写す事が可能なのだし方法の指定も無かったのだから。


 図鑑の様に分厚い本が並んでいるのだが、紙も厚いので思った程のページ数は無い様だ。ここに在るのは約一千冊という所だろうか、感覚的には少なく感じるが全て手書きと考えれば多いのかもしれない。よく見ると、二~三冊のダブリが在るので種類は三分の一くらいになるだろう。


 盗んだと誤解されたくないリュージは、棚から取り出さずに一冊ずつアイテムBOXに放り込む。複合プリンターのスキャナー機能を利用して全てのページをデータとして高速で取り込むと、次の本に取り掛かる。


 アイテムBOX内に手を入れずに出し入れする事を考えれば普通なのかもしれないが、考えただけで魔力によって自由自在に操れる。ページを捲るのにも何の苦労も無いので、一冊取り込むのに掛かる時間は平均すると四十秒という所だろう。


 四時間弱で、三百四十六冊の本を取り込んだが、ダンジョンに出てくる魔物の情報や解体方法等が書かれた物が約半分であり、残りは魔物の素材に関してや薬草の採集方法と、魔法について考察する物から初心者用の教本まで有ったり、僅かに周辺各国の語学に関する本や童話の形で残されたダンジョン誕生のあらまし等、種類は多岐に渡るのだが恐らくスペースを埋める為だと思われる。


 図書室を出ると昼に来た時と比べて雰囲気がおかしい。食堂は何かの噂話で騒がしく、一階も探検者というよりギルド職員の方がピリピリしている様だ。手配書が見付かり対応に追われているのは想像に難く無い。


 リュージは探検者ギルドを後にして宿に向かって歩くのだが、やはり街全体が喧騒に包まれている様だ。衛兵が街を巡回して警戒しているのも原因だろうか、午前中と比べると衛兵と頻繁に擦れ違う様になった。


(これだけ衛兵を巡回させていれば俺達を探すどころでは無いだろうけど、もう一押しくらいしておくかな)


『クゥーの為にお手数をお掛け致しますニャン』


 自分が狙われる立場だからか、リュージが更なる作戦を示唆すると労をねぎらう様な発言をするのだが――。


(いや、ダンジョンに潜る為にも後顧の憂いは絶っておきたいから構わないさ。どちらかと言えばヴァルター父娘の為だろうな)


『クゥーは、クゥーの事はどうでも良いんですかニャ?』


 何処と無く焦った感じで、自分は心配じゃないのかと訴えかけて来るクゥーの悲痛な声は真に迫っていた。


(はっ? そんな事は言って無いが……お前、ダンジョンに行かないの? 俺と一緒なら関係無いだろうよ)


『そっ、そうですニャ! クゥーは御主人とず~っと一緒なんですニャン』


 リュージの言い分を理解したのか、先程までの悲痛さは微塵も感じさせないテンションで宣言するクゥーは、嬉しそうであった。肝心な所で察しが悪いのは、主人との少なく無い共通点の一つかもしれない。






 宿に戻ったリュージは、皆で食事を済ませた後に外出していた。駄目押しの作戦の概要を伝えた上で、一人の方が動き易いと説得したのだ。日が落ちて闇夜に包まれたラストックの街中。空に瞬く星明かりは建物の影を照らす迄には至らない。


 建物の壁を背にして進む様は、一昔前のバラエティー番組でよく見た忍者の典型だが、その動きは三倍速くらいだろうか。赤くも無ければ角も付いてはいない、況してや軍曹とは呼ばせていても少佐では無いのだが……。


 リュージは、目立たない様に黒っぽい服装を選んだ。炎のバックプリントの黒いロングTシャツに黒いジーンズを合わせている。更に、蜘蛛の巣模様の黒いバンダナを覆面代わりにして顔を隠す念の入れ様である。


 そんな姿で潜入しようとしているのは、言わずと知れた男爵の屋敷である。正面は広い通りに面しており、潜むには不都合が多いので裏手に廻ったのだが、警戒が厳重なのは火を見るよりも明らかだろう。にも拘わらず裏口を確認したのには一応の理由がある。


 獲得したばかりの隠形スキルを試すと共に、育てる為である。尤もこれは後付けであり、男爵夫人への嫌がらせと自分なら大丈夫だろうという、根拠の無い自信が有ったからこその挑戦というのが真実だろう。昼間に調べたダンジョンの情報には、人よりも遥かに感覚の優れた魔物の情報も数多く存在したのだ、そんなダンジョンを攻略するからには力押しだけでは無く、時には隠れる必要も有るのではないか? ならば、この程度の警備は気付かれる事も無く容易く突破してみせねばならないのではないか――と。


 単なる自己満足ではあるが、それだけの事をしてのけるだけのポテンシャルが有るのは間違い無いと、信じて疑わないリュージはダンジョンの前哨戦として、面白半分に嫌がらせを決行するのだった。

 久々のステータスです。


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属   隠れ里

 種族   異世界人


 レベル      8

 生命力   1303/1303

 魔力       ∞

 力       915

 体力      932

 知力      4305  

 素早さ     1985

 器用さ     618  (5upニャン↑)

 運       392  (5upニャン↑)

 魔素ポイント 99968458

 所持金    62333マアク85ピニ


 《スキル》

[電脳Lv4]      [電化Lv3]

[心眼Lv4]      [鷹の目LvMAX]

[魔術の心得Lv3]   [剣Lv4]

[錬金Lv4]      [槍術Lv1]

[夜目LvMAX]     [調理Lv1]

[忍歩Lv2]      [交渉術Lv2]  

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

木工Lv3 盾Lv1 登山Lv1 投擲Lv1 伐採Lv4 斧Lv1

蹴撃Lv3 石工Lv1 音波感知Lv1 海中遊泳Lv3

発見Lv1 隠形Lv1 new


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 テクニシャン

イジメっ子 笑う切り裂き魔 三助 温泉伝道師

大蛇殺し 海洋生物 盗賊殺し トレジャーハンター

子供の味方

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