第三話 確認しようステータス!
立志は、逸る気持ちを押さえて、ステータスを確認してみる。
(え~と? ……おかしくね? 魔力のこれって無限って意味だよな? 使い放題って事か?)
その違和感は際立っていた。目立つ訳では無いのだが、記号はこれだけだからだ。
(魔力って事は、魔法が在るって事になるんだよな? ……誰かに教われば覚えられるのかな?)
ステータスの基準値は不明だが、極端に低い訳では無いだろう。その無限の魔力を支える器が、必要なのだから。
(他におかしいのが、魔素ポイントって奴か。約一億ってのは、何の為のポイントだ?)
疑問を浮かべ意識を傾けた為だろう、説明文がポップアップされる。簡単なヒントくらいはある様だ。
(何々、……世界に充ちる高濃度の魔素を吸収する事で獲られる……高濃度じゃないと駄目って事か? 違いが分からないな。それよりも、まずはポイントだな!)
この大量にある魔素ポイントは、ステータスかスキルに割り振る事で自分の強化が出来るらしいのだが、果たして――。
(やってみる方が早いか? どうするかな)
魔素ポイントを割り振るつもりで、意識を集中する。ステータスに於いては力、体力、知力、素早さ、器用さ、運の六項目の数値を上昇させる事が出来る様だ。試しとばかりに力に一ポイント加算しようと意識する。
決定で宜しいですか? [はい][いいえ]という表示が現れ、[はい]を選択するが実感は得られない。
(一ポイントじゃ、実感も何も無いな。誤差の範囲ってくらい少ないのか?)
決定後にキャンセル出来るか確認するが、消費したポイントは戻らない。つまり、キャンセルをするのならば決定前でなければならないのだ。当たり前だが、重要な事でもある。ポイントは沢山あるが無限では無い。スキルの事も考えると、無駄には出来ないだろう。魔素ポイントがボーナスポイントであるのならば、今後は増える見込みが無いのだから。そう考えた時に、もう一つ確かめるべき事がある。ステータスの最大値の確認だ。魔素ポイントを振り始めると、数値がぐんぐんと上昇してゆく。あっという間に百を超え一千を簡単に超えると四桁までで止まった。
(カンストか? 約一万……今は止めとくか)
魔素ポイントは充分に足りる。だが、人の平均値も分からない。不用意に数値を上げて化け物呼ばわりは御免被る。況してや、魔王として討伐対象にされるなど以っての外だ。今はキャンセルして、スキルの方を確認する。
《スキル》
[潜水Lv1] [料理Lv1] [方向感覚Lv1]
[伐採Lv1] [登山Lv1] [気配察知Lv1]
[剣Lv1] [盾Lv1] [鷹の目Lv1]
(潜水? びしょ濡れだったのが関係してるのか? 料理は割と自信があるんだが……。よく分からないが、ここに来てからやった事か? 方向感覚って、方位磁石を見ながら歩いただけで出たのか?)
不意に足元に転がる幾つかの石を拾い集める。仮説が正しければ新たなスキルを得る筈だ。約十五メートル先の立ち木に狙いを定めて、全力で投げ付ける。コントロールにはそこそこ自信が有ったのだが、長いブランクの為なのか当たらない。軽く練習を繰り返すと、立ち木に当たる確率が格段に上がる。スキルを確認すると投擲Lv1が増えていた。少なくとも、現時点ではスキルを覚える為に、魔素ポイントを使う必要は無いようだと結論付ける。
そこでスキルの検証は一端保留し、さっさと島の外周を廻ってしまう事にする。気が付いたら海岸付近まで来ていたからだ。海沿いをひたすら歩くが船舶の類いも見当たらず、何の成果も得られなかった。代わり映えの無い景色に若干の飽きを感じ始め、そう言えば確認して無かったかなとメニュー欄のアイテム、称号、装備、コンフィグについて考えながら歩く事にした。
称号は空欄だった。獲得方法も不明である。装備は、布の服になっており、靴は履いてない。布の服でも間違いでは無かったが何故かを考えているとジャージに変化した。謎は多いが、装備の名前は主観も反映される様だ。コンフィグは要検証という事で保留にする。設定変更が出来る様だが、ある項目を発見して試したくて仕方が無い様だが、じっくり腰を据えて臨みたかったのも事実だろう。
最後にアイテムだが、ゲーム好きにはお馴染みでラノベ好きには予想通りだろうか。メニュー欄にはアイテムBOXが存在した。これも容量の確認など要検証だ。そんな事を考えている内に、何事も無く島の外周を廻り切ってしまった。ここから北に向かえば野営地が在る筈だ。島を廻って来た感想だが、海を渡るのなら西側が良さそうだった。陸までの距離が一番近そうだし、何よりも村だろうか、山に登った際に小さい建物が幾つか見えた。
(太陽の位置が真上に近いし、もう昼くらいかな? 午後から筏を組んでも、今日中に渡るのは無理だな。いや、スキルでどうにかなるか?)
何にせよ、いろいろ試さなくちゃならないので、急いで戻る事にする。途中で野犬の気配がしたが襲われる事は無く、逆に逃げていった。今朝の残党だろうか? 恐らくは、この辺りが縄張りなのだろうが、襲って来ないでくれるのならどうでも良かった。
(結局、この島では野犬くらいしか見なかったなぁ。人が住んでる気配も皆無だしな。さっさと出て行くのが正解かね?)
野営地に戻ると、カップ麺で昼食を済ませ検証作業に入る。カップ麺が好きなんだなという突っ込みは無しだ。他に無いのだから仕方が無いだろう。玉葱、人参、じゃがいも等の野菜は買い置きしてあり、冷蔵庫の中にもいろいろと有るのだが、調理道具等が一切無い。焚き火で焼いたじゃがいもに、バターを塗って食べる位が関の山だろう。
冷蔵庫の中の食材と調味料を保護する為、賞味期限と状態を確認して問題無い物をアイテムBOXに収納する。家具や家電も全部アイテムBOX送りにしたが、手で触れさえすれば大きさも関係無い様だ。容量が見当も付かない程、大きい事が分かった後は、楽しみにしていたコンフィグの検証である。どうしても気になる項目を見つけていたのだ。
《コンフィグ》
[表示言語] [日付と時刻設定]
[単語の登録/編集] [辞書の登録/編集]
[機器の接続設定] [初期化設定]
分かるだろうか? 気になる項目とは機器の接続設定という奴だ。機器とは、電化製品の事ではないだろうか? であるならば、濡れて壊れてしまったかもしれない我が子達の状態を、確認出来るかかもしれない! そう考えたのだ。
(壊れていたら接続出来ないだろう。でも、無事だったらアイテムBOXで持ち帰れるかな? 少なくとも、パソコンのデータだけでも吸い出せないだろうか)
微かな希望を背に機器の接続設定を選択すると、アイテムBOXに保管した家電が表示される。メーカーや通信機器の有無等は全く関係無い様で、パソコンはもちろん各種AV機器、冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、電子レンジ、エアコン、掃除機、全部が繋がった。これで、どうなるのだろうか? 何も起こらない? 訳も分からず、アイテムBOXから家電を取り出すと接続が切れた。
(ん? ……アイテムBOXの中じゃないと駄目なのかな? どうやって使うんだろ? ……まさか、接続だけで使えないとか?)
再度、アイテムBOXに家電を収納して接続し直すが、見た目は何も変わらない。何か変わってないかとステータスを呼び出すと運以外の数値の桁が変わっていた。理由が分からずスキルを確認すると、電脳Lv1と電化Lv1が増えている事が分かる。
(電脳ってのは、あれだな、パソコンだ。確か中国語でパソコンは電脳って書くって聞いた事がある。読み方は知らないけど! 電化ってのは電化製品の事だろうか? 俺自身が家電好きが高じて機械化か? いやいや、電化であって機械化では無いな。ヤバイな訳が分からなくて混乱しとる。説明とか無いのかな? ……在るな)
立志は、それぞれのスキルに意識を集中して、説明文をポップアップさせる。
(え~と? 電脳は、思考の高速化及び最適化に加え神経伝達信号の高速化による身体強化。レベルアップ毎に知力と素早さが上昇。電化は、各種の電化機器との接続による能力の上昇。レベルアップ毎に力、体力、器用さが上昇?)
これ程の急激な上昇は、正にチートだと言えるだろう。電脳Lv1の補正で知力が九百九十九、素早さが三百三十三も上がっている。電化Lv1の補正では力、体力、器用さに百十一ずつの上昇だ。電脳Lv1の後だとパッとしないが、十分に凄い数値だろう。
(あれっ? 計算が合わないな、力と器用さが五ずつ増えてるのは投擲か? ……スキルを覚えるだけでもステータスが伸びるのか!)
生命力も上昇した様だ。確認すると最大値が上昇したのだが、要するにHPの事だろう。最大値が四百四十一だから百十一上がったという事になる。恐らく体力に連動するのだろう。初めてステータスを確認した時の生命力はダメージを受けた記憶も無いのに、最大値から三十も減っていた。つまり、減ったのでは無くレベルアップで最大値が三十も伸びたという事だろう。
「よしっ! よっし! テンション上がるなぁ~」
興奮して大きな独り言を溢すのだが、無人島に聞き咎める者は居ない。
現在のステータスは、こんな感じです。
《ステータス》
名前 鈴木立志
性別 男
年齢 42
職業 放浪者
所属
種族 異世界人
レベル 2
生命力 330/441
魔力 ∞
力 132
体力 129
知力 1022
素早さ 350
器用さ 145
運 21
魔素ポイント 99999998
《スキル》
[潜水Lv1] [料理Lv1] [方向感覚Lv1]
[伐採Lv1] [登山Lv1] [気配察知Lv1]
[剣Lv1] [盾Lv1] [鷹の目Lv1]
[投擲Lv1] [電脳Lv1] [電化Lv1]