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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第三章 旅立ち篇 ~ラストック~
38/72

第三十六話 盗賊アジトは森の中!

何とか投稿出来ました…。

 あれから、更に二日……。


 幸いにして、盗賊の類いは見ていない。――ただ一人を除けば平穏無事の旅程と言えるだろう。


「た~びじをは~しっていどうちゅう~ニャ!」

「「旅路を走って移動中~」」


「ラ~ストックまではあとよっか~ニャ!」

「「ラストック迄は後四日~」」


 リュージに付き合わされる形で走っているのが降伏して生き延びた盗賊のヴァルターである。


「おいっ! 声が小さいぞ!」


「はっ! もう声が出ません!」


「馬鹿野郎っ! これは小さい子供を残して身を誤ったお前への罰であると共に、性根を叩き直す訓練でもある! 文句を言う暇が有るなら声を出せっ!」


 こうして、リュージのしごきを受ける様になってから一日半になるのだが……今、述べられた理由は後付けであり、真相は成り行きである。


 盗賊を殲滅した後、【魔法破誕】により魔法をキャンセルして地形を元に戻した。当然、イヴァンジェリンの【氷山アイスベルク】も消えている。


 この時点で面倒臭くなったリュージは、燃やすつもりだった死体を後で纏めて始末する事にして、全てをアイテムBOXに放り込んだのである。


 その後、近くに盗賊の馬車が隠してあるとヴァルターから聞き出して回収した為に、馬は八頭になっていた……。どうせ旅の商人等を襲って手に入れた物だろうが、二頭立ての馬車を三台も所有していたのだ。


 リュージは、盗賊が使用していた馬車は全てアイテムBOXに収納して、六頭の馬には馬車を牽かせる事にした。直接乗る事も考えたが、くらあぶみも無い馬に乗るのは難しいので、諦めたのだ……練習しても良かったのだが、ヴァルターの事を考えれば必然と言えるだろう。


 元々が二頭立ての馬車なので、八頭もの馬を繋ぐ為の金具等は無い。他の馬車から拝借した物をコリーンが錬金術で加工して接続した。これにより一頭あたりの負担を軽減しスピードアップを図ったのだが、世話が大変な事以外は概ね成功したと言えるだろう。


 そんなこんなで、ヴァルターも初めは普通に馬車に揺られて大人しくしていた……。念の為に後ろ手に縛られてはいたが、虐待も無く穏やかな時間だけが過ぎ去って行く。だが、時間が経つにつれて緊張が緩和されたのだろう。周りに目を配る余裕が生まれると、余計な好奇心が頭をもたげるものなのかもしれない。


「あの……、馬車が有るのに何で走っているんですか?」


「ん? 興味が有るのか? そうだな馬車に揺られるだけじゃあ暇かもな……よしっ! お前も走れっ!」


「えぇっ!」


「ロープを解いてやる。良いか……ケイデンスコールを唱和するんだ! 人数が少ないからな……その分は声を出してカバーしろ! これは羞恥心を無くすと共に弱い自分を奮い立たせる為の物だ!」


「ちょっと聞いただけで、なんでこんな事に……」


 あながち間違いとも言えない適当な理由をでっち上げ、強制的に走らせるリュージだが……単なる暇潰しなので限界を超えて無理をさせるつもりは無かった。


 しかし――


「クゥー、頼む!」


「了解ですニャ! か~わいいこ~どもをほっておき~ニャン!」

「可愛い子供を放っておき~……ほら、声を出せ!」


「じ~ぶんはと~ぞくい~みふめい~ニャ!」

「「自~分は盗賊意味不明~」」


 こうして罪悪感を煽りながら、じわじわと追い込まれて結果的に洗脳されて行くのだが、好奇心は猫を殺すなんてことわざもあるので自業自得だろうか……。






 その後は興が乗ったリュージにより、鬼軍曹よろしく扱かれるが倒れたら馬車に放り込み休ませて貰えたりもするので、意外と大丈夫そうにしていたりする。


「軍曹殿、あの木の横から森に入った先がアジトであります」


「そうか、狭いな。馬車はどうしてたんだ?」


「はっ! 擬装してありますが、退かせば馬車も通れるであります」


「ねぇ、リュージ……その軍曹ごっこ? そんなに面白いのかしら……ヴァルターまで微妙にノリノリなんだけど」


 そう、ヴァルターはいつの間にかリュージを軍曹殿と呼ぶ様になっていた。犯人はクゥーであるが、少しだけ悪乗りした事も否定出来ない事実であり、言葉に詰まるのだった。


「ごっことは心外ニャン。御主人の部下が上官を階級で呼んで何がおかしいニャ?」


「……リュージは軍曹なの?」


「新人隊員を扱くのは軍曹だと相場が決まっているのニャン。何が不満なのニャ?」


「いえ……そもそも軍曹って何かな~なんて……そういう物だって事は分かったけど」


「イヴ先生、様式美らしいですよ? 俺も諦めました……今更ですけどね」


 馬車は予定を上回るペースで街道を進み、盗賊のアジトが在るという森の入り口に到着していた。速度自体はそれほど変わらないのだが、休憩の回数が減った事で結果的に行程が短縮されたのである。


 ヴァルターには当然ついて来れないペースだったが、馬車が見えなくなる程に離れたらリュージが片手で持ち上げて走るという行為を繰り返したのである。馬車から離れている為にクレームを付ける必要も無かったが、何が有ったか分からないイヴァンジェリンは徐々に変わってゆくヴァルターに困惑するしか無いのだった。


「……何気に頭良いな」


「意外に大掛かりな仕掛けですニャ! 戻ったら活用しますかニャン?」


 アジトへの入り口となる森には、通り道は見付からない……擬装が施されているのだから当たり前なのかもしれないが、思った以上に巧く隠されていたのだ。葉の生い茂った低木や雑草等が植栽された馬車の荷台に擬装を施して目立たない様に置いてある。


 高さも有り、一見して通り抜けられるとは思えないが、車輪が付いているので移動すると道が現れる……かなりの重量が有るのでそれなりの人数か馬が必要だが、リュージには関係無い事であった。


 そんな道の先を進むのはリュージとヴァルターの二人だけである。馬車で入るのは簡単だが、罠や奇襲が有った場合に方向転換が出来なければただの的になるからである。


 アジトへと続く道は馬車一台がやっと通れる幅になっており、明らかに侵入者への対策が取られていると思わせるのだ。これなら森の中から矢を放つなり魔法を打つなりすれば、通り抜けるまでに仕留められるかもしれない。途中で足止めは勿論、分断も容易ではなかろうか。


 だが、そんなリュージの分析は杞憂に終わる。アジトには誰も居らず、奇襲どころか罠すら無かったのだから――恐らく、偶然の産物であり考えて作った物では無いのだろう。入り口が巧妙だっただけに深読みし過ぎたが、脳筋のボスは勿論アビーにしても行き倒れの真似事とか、頭が良かったとは思えない。残念な盗賊である。


「ここか? 案内は任せるぞ」


「はっ! お任せ下さい軍曹殿!」


 それは洞窟であった、鬱蒼うっそうとした森の中を奥に進むと、背が低く目立たない岩山に洞窟が在ったのだ。その岩山はそれほどの高さは無いが、遥か昔に岩盤が隆起して出来たのだろうか? 隠れる様に空いた洞窟の入り口はある程度近付くまで見えなかった。


「奪った金品の隠し場所は知ってるか?」


「いえ、知りません!」


「そうだろうな……知ってるのはボスだけか、もしかしたらアビーくらいだろうな」


「御主人、宝探しですかニャ? 試してみたい手が有りますニャン」


 クゥーの言う手とは、ダウジングである。だが、ただのダウジングでは無く魔法を併用して宝を探し出す道具を作り、捜索を行うとの事だった。


「本当に上手く行くのか?」


「この世界には魔素が満ちてますニャ? 目に見えない場所や隠された場所にも魔素は存在しますのニャン! だったら魔素に探させれば良いのですニャ。成功率は高いと思いますニャン」


「理屈は分かる気がするが」


「そこでダウジングですニャ。後、鮑玉は有りますかニャン?」


 鮑玉――鮑から出て来た歪な形の真珠である。この世界での価値は不明なので、アイテムBOXに入れっ放しだったのだが、これに魔法を掛けてダウジング用の道具にするらしいのだが、価値が有ったらどうするのだろうか。


「御主人には、この鮑玉に【如意宝授にょいほうじゅ】を掛けて欲しいのですニャン」


「如意宝珠……観音様が持ってる珠か? なんで鮑玉が必要なんだ?」


「そうですニャ。思いのままに願望を叶える宝珠の事ですニャ! 宝を探し出すイメージで、思いのままに宝を授けられる魔法にするのですニャン。鮑玉は真珠の呼び名ですニャ? 真珠の石言葉は幾つか有りますが【富】を意味しますのニャン」


「成る程……」


 名前からすると無制限に宝が手に入りそうだが、無から有を造るのは難しい……無限の魔力が有るとはいえ、そんな事をしたら魔素ポイントが減るのは想像に難くない。だからこそ、存在する宝を探す魔法であり、ダウジングにするのだろう。


「分かった、探し出すイメージだな……如意宝授!」


 アイテムBOXから取り出した鮑玉を握り締め、財宝を探し出すイメージを込めつつ魔法名を唱える――発動した魔法が吸収されるかの様に鮑玉を満たしてゆくと、形が変わっている様な感じがすると共に、指の隙間から七色の光が漏れ出して来る。


 手を開いてみると某有名ゲームに出て来るスライムの様な形になった鮑玉が煌々と光を放っている。やがて光が収束し、ある一点を指し示した。それは、壁際の地面……手を動かしてみても光の指し示す位置は変わらないので、間違い無さそうだとその場所を探ってみる。


 砂を払ってみると一抱えは有る岩に蓋の様な跡が見付かったので開けてみると、くり貫かれた岩の中は銀貨が詰まっていた。


「銀貨?」


「いろんな銀貨が混ざってますね……」


「御主人、アイテムBOXに入れて貰えれば仕分けますニャン」


 ヴァルターの言う通り大小様々な銀貨が適当に放り込まれており、クゥーと共に全ての銀貨をアイテムBOXに収納して少し待つと、仕分けが終わったのか六種類の銀貨が出される。


「この銀貨の単位って何になる?」


「軍曹殿は他国から来たばかりでしたか……この四種類はピニ銀貨で残りがマアク銀貨ですよ」


 何やら髪の色と骨格を見て納得した様だが、彫りの深い顔の人と比べれば確かにのっぺりしているかもしれない。それはさておき、それぞれ違う大きさの銀貨はピニとマアクと呼ぶらしいのだが、小さい順に五ピニ、十ピニ、二十五ピニ、五十ピニ、一マアク、五マアクとなるらしい。


 価値としては百ピニで一マアクになり、十マアクでローリン金貨になるそうなのだが、ここに金貨は無い。日本円と比べるのは物価が違い過ぎて無駄だろう。砂糖が万能薬などと呼ばれて、金よりも価値があるとされているのだから。


 恐らく物価の高い日本よりも更に高いのだろうが、実感出来るとしても他国と行き来する様になってからではなかろうか。


『御主人、計算が終わりましたのニャ。六万三千四百一マアクと七十五ピニになりましたのニャン。内訳は必要ですかニャン?』


(いや、総額が分かれば良いや)


『それから、発見Lv1を獲得していましたニャ!』


(あぁ、外に居たからアナウンスが無かったのな)


 それは兎も角、果たしてこの金額で何が出来るのだろうか。そもそも、貰ってしまっても問題は無いのだろうか? 猫ばばになるのなら届けなければならない。


「これは拾得物になるのか? 所有権とか分かる?」


「報告すると、没収される可能性が高いと思います……腐った役人が多いですから。建て前として持ち主に返却するなどと言うでしょうが、持ち主の特定など不可能ですし」


 価値観は人によるので、実際に見ないと判断は難しいのかもしれないが、あまり良い国では無いのかもしれない。盗賊とはいえ、国民にここまで信用されない役人が多いのなら、期待は出来ないだろう。


「盗賊に批判されたら役人も終わりだな……じゃあ、猫ばばして俺達が有効活用した方がまだ増しかな?」


「俺達、でありますか?」


 ヴァルターは何を言われているのか分からないといった表情でポカーンとしていた。呆気に取られたというのが一目瞭然である。


「何だ? 子供を預けるにしても、金は要るだろう? この場所を教えた情報料だな」


「っ! あっ、ありがとう……ございます」


 金額などは一言も言って無いのだが、リュージの気持ちを察したのか言葉を詰まらせながら感謝するヴァルター。――その目には涙が浮かんでいたのだった。


『御主人も、甘いですニャ』


(も、って何だ! も、って……ヴァルターの為じゃないさ。子供に罪は無いだろう? 馬鹿な親のせいで不幸になるなんて間違ってるんだよ……全ての子供を救えるだなんて思い上がってる訳じゃないが、気付いていて無視するのは違うだろ!)


 リュージ自身は間違い無く愛情を以って育てられたが、父は親戚をたらい回しにされたらしい。戦後の日本という厳しい時代背景を思えば仕方が無い部分も有るだろうが、そんな父の武勇伝を親戚を通して聞かされる度に、誇らしい気持ちになるのも早くに亡くなってしまったがゆえだろうか。


 リュージの父は決して善人では無い。若い頃などは特に……生まれ育った環境のせいか、どちらかと言えば恐れられるタイプの人種だったのだから。愚連隊などと呼ばれ、遠くから姿を見ただけで家に逃げ帰った者がガタガタと震えて出て来なくなる程に、相当な無茶をやらかした人物だが子供が生まれた途端に足を洗った。


 ヤクザだなんだと蔑む者も居るだろうが、人当たりも良くカリスマ性のある父はリュージにとってはヒーローであり、憧憬に値する男であった。敵対する者には容赦しない様はダークヒーローかもしれないが、決して狂人では無く……加減も知っていた。


 そんな父の影響を過分に受けたリュージは、子供には特に甘くなる傾向がある。自分の様にはなるなと言い続けた父を見て育った為に、子供を大事にしようとする心は間違い無く受け継がれているのだろう。






 閑話休題


 そんなこんなで財宝を手に入れたものの……自然破壊は不味いだろうと、アジトを吹っ飛ばすのは中止したリュージだが、盗賊の遺体はここで燃やす事にした。面倒事の方が多そうなのが厄介だが、貰える物は貰って置こうと首を残して荼毘に付すと、皆と合流して旅を続けるのだった。

 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属   隠れ里

 種族   異世界人


 レベル      8

 生命力   1303/1303

 魔力       ∞

 力       915

 体力      932

 知力      4300

 素早さ     1985  (10upニャン↑)

 器用さ     613

 運       382  (20upニャン↑)

 魔素ポイント 99968458


 《スキル》

[電脳Lv4]      [電化Lv3]

[心眼Lv4]      [鷹の目LvMAX]

[魔術の心得Lv3]   [剣Lv4]

[錬金Lv4]      [槍術Lv1]

[夜目LvMAX]     [調理Lv1]

[忍歩Lv2]   1↑  [蹴撃Lv3]

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

木工Lv3 盾Lv1 登山Lv1 投擲Lv1 伐採Lv4 斧Lv1

交渉術Lv1 石工Lv1 音波感知Lv1 海中遊泳Lv3

発見Lv1 new


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 テクニシャン

イジメっ子 笑う切り裂き魔 三助 温泉伝道師

大蛇殺し 海洋生物 盗賊殺し トレジャーハンター new

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