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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第三章 旅立ち篇 ~ラストック~
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第三十四話 街道沿いを行こう!(前編)

 翌日、全員が熟睡し過ぎて寝坊していた。旅で高揚した気分が油断を誘ったのかもしれないが、見てみれば周りを囲う高い壁が朝の日差しを遮っていた。夜明けと共に目覚める事が習慣とはいえ、これだけ薄暗ければ仕方が無いのだろう――里には時計など無かったのだから。


 馬の世話をウルバインに任せて、朝食は珍しくリュージが作る様だ。里の朝市で手に入れたいちごを焦がさない様に砂糖で煮詰めてジャムを作る。本当なら、ヨーグルトも欲しい所だが今は無い……。辺りに漂う苺の香りに女性陣は待ち切れ無い様で、味見をせがむのだった。


「二人共、味見は良いですけど……熱いから火傷しないで下さいよ?」


「大丈夫よ……う~ん、美味しい!」


「……フゥ~、フゥ~、甘い……」


 新鮮な野菜を洗って簡単に切っただけのグリーンサラダに胡麻ドレッシングを掛ける。和風ドレッシングやマヨネーズも有ったが、今日の気分は胡麻だったらしい。これに昨夜の残りのスープを出せば、朝は十分ではないだろうか……いや、目玉焼きも作ってパンもお好みでトーストに出来る様にスライスしておく様だ。


「わざわざ切らなくても良いんじゃないかしら?」


「いや、トーストにするのも良いかと思いまして!」


「……トースト? ……」


「焼きたてなんで、このままでも良いんですがカリカリに焼いたパンに、バターやジャムを塗っても美味しいんですよ。お好みでどうぞ」


 トーストはオーブンレンジを使えば放っておいても簡単に焼き上がるのだが、何故こんな事が出来るのか……今更ながら疑問が沸いたのが昨夜の事である。通常は、アイテムBOX内には時間の概念が働かないので、パンも焼けない筈だがリュージはそれを可能にしていたのだ。


 そもそも、パソコン等を始めとした機器が起動する時点で、普通に考えれば時間の流れがある筈だ。だが、食材は変化しない為にその結論には至らなかったのである。身体を手に入れたクゥーがやりたい放題する中で、思い至った疑問をヒントにして検証した結果、アイテムBOXという閉鎖された空間内は、魔力さえ有れば物理法則に捕われない様だ。


 魔力とは、指向性を持った魔素の集まりである。魔力さえ有れば時を止める事も可能なのだから、部分的に解除するくらいは容易いのだろう。リュージは無意識にそれを行っていたからこそ機器が起動している訳だが、クゥーに言わせれば仕様なんだそうだ。


 アイテムBOXとは魔力によって時の流れを切り離した空間を利用した物らしい。だからこそ、アイテムBOXの容量は保持魔力に依存するのであり、作り出すにも相当な魔力量が必要になる。しかし、リュージの場合はひと味違う……無限の魔力を持ち、アイテムBOX内にも濃密な魔素が充たされているのだから。


 アイテムBOXに生き物は入れない。これは、事実であるが正確でも無い! 一定の魔力に対する抵抗力を持った生き物は、魔力が反発するので入れないのである。死ねば抵抗力も下がるので問題にならないし、微生物の様に抵抗力が小さ過ぎる物はスルーである。


 リュージの分身であるクゥーは魔力も同じである為に中に入れるのだが……ならばこそ、この空間を管理する事も出来るのではないか。その考えのもとに試したところ、特に制限を受けずに行動出来る事が分かったのが昨夜の話であり、謎の解明が少しだけ進んだのである。今は何処までやれるか……何が出来るか調査中だったりする。


 因みに、アイテムBOXは時空間魔法という分野で研究されているが、理論的な説明が出来る者は存在しない……オリジナルの魔法所有者が死に絶えて久しいからだ。現在は魔道具として僅かに残されているだけである。





 

 閑話休題


 朝食を済ませて出発の準備を整えると、囲っていた土壁を元に戻す事にした。里に近い場所に妙な痕跡は残せないからである。


(さて、どうした物か……イメージは良いんだが、名前がなぁ~。立つ鳥跡を濁さず、原状回復、原状回帰……駄目だ! 助けてクゥー!)


『御主人……○び太君みたいな呼び方はやめて欲しいですニャン。クゥーは猫型でも、青いロボットでは無いですニャン』


 寝る前にアイテムBOXから中に戻っていたクゥーを、国民的人気アニメの主人公の様に呼んでみるリュージ……洒落だと分かっていても、流石に良い気はしないらしい。


(いや~、魔法名はやっぱりクゥーだと思って!)


『そうですニャ……【魔法破誕まほうはだん】とかが良いですかニャ? 魔法を破談……キャンセルするという御主人のイメージに合いますがそのままも面白く無いですニャン。「誕」には騙す、偽る、大きい、欲しいまま、生まれる、育てる等の意味が在りますので魔法を嘘にして壊すとか、壊して生み出す……キャンセルするだけじゃ無く作り替えるのにも融通が効きますニャン』


(前にバリエーションがどうとか言ってなかったか?)


『勿論ですニャン! ですが、多すぎても覚え切れ無いのではないですかニャ? この魔法は属性に捕らわれない大規模な物で、無限魔力を持つ御主人くらいしか使えないから良いのですニャン!』


 尤もらしい事を言ってはいるが普通に「マジックキャンセラー」とか「リターンマジック」じゃあ駄目なのだろうか? 外国語が苦手なだけで漢字で縛っている訳ではないのだが、名付けが苦手なリュージは余計な口出しなど一切せずに丸投げである。


「よしっ! 魔法名が決まったので早速ですが……壁から離れて下さいね~。……魔法破誕!」


 リュージの魔法発動と共に、ガラガラと大きな音をたてて崩れ去る土壁は、やがて何も無かったかの様に元の大地に戻ってゆく。昨日は日が落ち初めていたので、全く同じかは分からないが違和感が残らない程度には戻っている。これなら今後も安心して壁を造れそうであった。






 今日は春の七十九日目、第十二週の火の日である。皆で寝坊した日から八日経った事になるのだが、これまでに二回も盗賊に襲われた……。


 街道に辿り着いたのが二日前で、そこから北西に向かって街道沿いを走らせているのだが、日に一回のペースで盗賊が現れているのだ。


「この分だと今日も現れるわね」


「イヴ先生……変なフラグを立てないで下さいよ」


「……来た……」


 街道を封鎖する様に倒れている女がいる…この手口は初めてだが、美人局つつもたせだろうか、剰りにも不自然過ぎて本物の行き倒れにも見える。


「ほらっ、イヴ先生~!」


「えっ、本当に!」


「……不自然な行き倒れ……」


 ウルバインは、斧を構えてポージング――仕方が無いなと、溜め息を吐きながら近付くリュージ。その足取りは軽く、警戒感など微塵も感じさせないが演技なのか自信の表れなのか。


「すみませ~ん、生きてますか~? もしも~し」


「……」


 うつ伏せに倒れている女性を、仰向けにひっくり返すリュージ。脈を取るだけなら手首でも首筋でも良いので、この時点でひっくり返す必要は無いのだが……恐らく女性という事もあり、顔とスタイルの確認だろう。


「……よしっ! 退かして先を急ごうか」


「うぅん……ここは……貴方は?」


 顔がタイプでは無かったからか演技を見破ったのか、置いて行こうとした途端に目覚める女性……怪し過ぎるタイミングだが、バレて無いと思っているのか白々しく名前を聞いて来る。演技派では無いらしい…。


「名乗る程では有りません。助けるつもりも有りませんから……道の真ん中で邪魔だったので退かそうとしただけですよ。それではお大事に!」


「えっ、ちょっと――」


 そそくさとその場を立ち去るリュージ、ウルバインも避ける様に馬車を動かしていた。何か言い掛けた様だが知った事では無いと先を急ぐのだが、案の定と言うべきか目の前には武装した盗賊が待ち構えており、後ろからも追って来たであろう盗賊の中に、先程の女性の姿も見える。


「おいっ! よくもこのあたしに恥を掻かせてくれたもんだね。覚悟は出来てるのかい?」


「あんな馬鹿な手に引っ掛かる人が居るんですか? バレバレでしたよ? 近くの森に八人ほど潜んでましたし。乗せたら乗せたで、人質でも捕って仲間を呼ぶつもりだったんでしょう?」


「うっ……うるさいガキだね。あんたぁ~! このガキにいろんな所を触られちまったんだよ、始末しておくれよ~!」


「はぁ? そん――」


「何だとコラー!何処のどいつだ、そのふてぇ野郎はよぉ!?」


 この八日間で訓練したり、盗賊を二回も全滅させたお陰でレベルは相変わらずだが、スキルも成長していた。鷹の目と夜目はMAXになり、練習に明け暮れた足並十法は忍歩に進化、槍も槍術に進化した……他にも上がったり進化したスキルが有るけれど今は良いだろう、料理とか……。

 

 お陰で近くに潜む盗賊にも気付いたし、女性の嘘も見抜けたが……やはり、こういうやからは避けられない様である。リュージ的には、「見逃してあげちゃう俺ってば優しぃ~!」とか思っていただけに、あの女性の言い種には腹が立つのだろう。そこに話の腰を折って、暑苦しい男が前に出て来たのだから尚更である。


「もう良いや。当然、殺られる覚悟が有って襲って来たんだよね……女でも容赦しないよ?」


「いい度胸じゃあないか! 殺れるもんなら殺ってみせてご覧よ。野郎共……この生意気なガキとハゲは殺っちまいな! 女は売れるからね、傷を付けるんじゃあ無いよ!」


「聞いたなお前ぇ~ら? こっちはハゲを殺るぞ! アビー、そっちはガキを殺れや!!」


「あいよ、あんたぁ~! いくよ野郎共!」


「「「「「「「「おおぉぉ~ぅ!!」」」」」」」」


 総勢三十名からなる盗賊に囲まれているが、余裕の態度を崩さないどころか挑発するリュージ。アビーと言うのが女盗賊の名前だろう、偉そうな言動と態度からボスの女ってところだろう。


 見た目から強いと思ったのだろう、ボスの方がウルバインに狙いを定め、アビーを含めた九人がリュージを相手にする様だ。数名は逃がさない様に囲みを作っているが、ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。だが――


「やれやれ……嶂壁!」


 魔法名を唱えるだけで、即座に発動する魔法はリュージ達を取り囲む盗賊を、更に囲む様に隆起する。何の溜めも無く――呆れを顔に滲ませながら発動した魔法は、馬車を中心にして半径五十メートル程の円を描く様に高い土壁を造ったのだ。


 突如として現れた壁の威容にひるんだのか。異様とも取れるその規模におびえたのか。哀れな盗賊達は絶望的な表情を浮かべるのだった。

 現在のステータスです!


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属   隠れ里

 種族   異世界人


 レベル      8

 生命力   1303/1303

 魔力       ∞

 力       915  (20upニャン↑)

 体力      932

 知力      4300  (45upニャン↑)

 素早さ     1975  (35upニャン↑)

 器用さ     613  (30upニャン↑)

 運       362  (50upニャン↑)

 魔素ポイント 99968458


 《スキル》

[電脳Lv4]      [電化Lv3]

[心眼Lv4]   1↑  [鷹の目LvMAX]1↑

[魔術の心得Lv3]1↑  [剣Lv4]    1↑

[錬金Lv4]      [槍術Lv1]   1↑進

[夜目LvMAX]  1↑  [調理Lv1]   1↑進

[忍歩Lv1]   2↑進 [蹴撃Lv3]   1↑

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

木工Lv3 盾Lv1 登山Lv1 投擲Lv1 伐採Lv4 斧Lv1

交渉術Lv1 石工Lv1 音波感知Lv1 海中遊泳Lv3


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 テクニシャン

イジメっ子 笑う切り裂き魔 三助 温泉伝道師

大蛇殺し 海洋生物 盗賊殺し new

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