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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第二章 隠れ里で魔法入門篇
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第二十六話 もしかして、桃源郷!(前編)

 決めねばならない事は多岐たきに渡るが、ここに居ても特にやる事も無いリュージは、邪魔をしない様に知り合いに声を掛けたら帰ろうと思っていた。だが――


(何か忙しそうだし、邪魔しちゃ悪いな……帰るか! 挨拶するのは、またの機会で大丈夫だろう)


 鋼蛇シュタール シュランゲをアイテムBOXに収納してから、きびすを返して帰ろうとすると、それに気付いた人物に呼び止められる。


「リュージ、帰るのか? ……別件で少し話があるんじゃが、どうじゃろう」


「別件……ですか?」


「あぁ、そうじゃ。なかなか顔を見せんから話す機会も少ない……折角じゃから、済ませてしまおうかと思ってな」


「先日、話したばかりかと思いますが?」


「何日前の話じゃと思っておるんじゃ? 年寄りと若いもんでは刻の進みが違うんじゃよ」


 呼び止めた人物は、里長のオラドゥールであったが何やら話が有るらしい。この前、里長に会いに来たのはいつだったか、五日……六日前だったか? 確かに微妙な日数かもしれない。有無を言わさぬ雰囲気に圧され、仕方無いなとばかりに付いて行くと数名の女性が待ち構えていた。中には知っている顔も居たのだが、知らない人物がメインなんだろう。


「紹介しよう……里の魔法使いでお前さんの教師役に立候補した者達じゃ」


「はじめまして、メーベルだよ。炎の魔法が得意なんだ! 使いどころが難しいから里一番はイヴァンジェリンさんだけど、攻撃力なら負けないんだから!」


「おはようございます。里で治療師をしております、アデルと申します。回復魔法は先代から学びましたが、他に居ないのです。是非とも、学んで頂きたいのですが」


「僕はスージーっていうの。土の魔法が得意なんだけど……コリーンさんに教わってるよね?」


 この三人が、残りの教師役らしい。見事に得意な魔法が別れている事から、完全な立候補での決定では無さそうだった。何より、報酬を貰いに行った日にはもっと沢山の女性が居たのだから、何かしらの競争が有ったのではないだろうか。三人ともタイプは違うが、ルックスで選ばれたと言われても疑う余地が無い程の粒揃いである。


 メーベルは、少し男勝りな雰囲気だが乱暴者という印象では無く、可愛らしい活発な女の子という感じだ。長髪が似合いそうな燃える様な真紅の髪をショートカットにしているが、動き易さを優先しているのかもしれない。その瞳の色も見る者を引き込む様な深い赤色をしているのだが、魔法の属性は関係あるのだろうか。


 アデルと名乗った美女は、ハニーブロンドとでも表すのだろう。腰まで伸びた蜂蜜色が、つややかに輝いている。第一印象は、メー○ルだろうか。落ち着いた茶色の瞳には慈愛の印象を宿し、そのたたずまいを四字熟語で表すのならば、窈窕淑女ようちょうしゅくじょという言になるのだろうか。それ以上の誉め言葉が見付からない。


 最後に挨拶をしたスージーという少女は、コリーンと比較されると思ったのか、自信無さそうに畏まっていたが、そのスタイルは圧勝である。髪は肩口で切り揃え、色合いは赤銅が近いだろう……赤よりも落ち着いた色調は、茶色よりも明るい。つぶららな薄茶色ヘーゼルの瞳と、気が弱そうな雰囲気は庇護欲ひごよくをそそる。


 この里が魔法使いの隠れ里なのは知っているが、美人が多すぎるのではないだろうか? 魔力が高いと美人になるのか。しかし、リュージの容姿は若返った以外は変わっていなかった。鏡は作っていないが、水に写った姿は確認していたのだから間違い無い。


「はじめまして、リュージと呼んで下さい。魔法の発動は出来る様になったので、自分の家を建てていたのですがラストックに行く事になったので、皆さんに教わるのは申し訳あり――」


「まぁまぁ、リュージ。そう結論を急ぐ事もあるまい」


 この機会に断ってしまおうかと挨拶がてら口を開くと、一瞬だけ空気が張り詰めた気がしたのだが、里長が途中で割り込んだ。


「リュージは、もう勉強しないのか? 炎の魔法は格好良いんだよ?」


「もう、戻っては来ないおつもりなんですか?」


「やっぱり、僕なんかじゃ駄目なんだね」


 三者三用ではあるが、不満が有る事は見て取れる。何がそんなに不満なのか……教師など、面倒なだけでは無いのだろうか。


「えっ? いえ、家も完成しましたし戻って来ますが、徒歩なら早くても往復八十日以上ですから、少なくとも一つの季節は終わりますよね?」


「そうじゃな、往復なら早くても夏の終わり頃かのぅ。途中で何か有れば秋になるかもしれんな……どうじゃ? 親睦も含めて、新居に招待してやっては。何、レッスンは戻ってからでも出来るじゃろう」


「何を企んでいるんです? どうにも腑に落ちないんですが……里の為って何なんですか?」


 どうにも怪しい里長に詰め寄るが、口笛なんかを吹いて誤魔化そうとしたり、チラチラと女性陣に助けを求める視線を送っている。そんな里長の視線を追って女性陣に目をやると、一人の女性が前に出て来た。


「里長……言って無かったの?」


「こう言う事は、本人同士の問題じゃし……リュージは未成年じゃろう? この年頃なら異性の好みや夢だって有るものじゃ。里の為でも、強制は出来んよ」


 目の前に出て来て里長と話をしてるのは、魔眼持ちのセシリーであった。先程、外で挨拶を交わしたからか今までは大人しく黙っていた様だが、割り込む形で里長への追求を反らされてしまう。他にもイヴァンジェリンやダーナの姿も在るのだが、イヴァンジェリンは不機嫌そうであり、ダーナは面白そうにニヤニヤしている。対称的な雰囲気ではあったが、黙って成り行きを見守っているのは同じであった。何を考えているのだろうか? 昨日の事も有るので、ろくな事では無いだろう。


「里長の考え方は立派だし好感が持てるけど、私が聞いた話だと、彼の歳は見た目通りでは無いらしいけど?」


「何っ? それは本当じゃろうか?」


 二人は、リュージの顔を見て確認を取ろうとするが、その表情はまたも対称的である。里長は驚愕と疑惑が半々という様な何とも言えない顔をするが、セシリーは確信に満ちた顔をしている。あの魔眼は他人のステータスが読めるのであろうか?


「歳ですか? 四十二ですが……何か?」


「「「「よんじゅうにぃっ!」」」」


 リュージの歳を知らなかった女性陣が、予想外の年齢に驚きの声をあげる。そう言えば、ダーナには言ってなかったかもしれない。だが、衝撃の事実はその後に告げられるのだった。


「わっ、儂と同い年じゃと!」


「「「「「「えぇっ!」」」」」」


 この場に居て驚かなかったのは告げた本人と、魔眼持ちのセシリーのみであった。やはり、ステータスが読めるのではないだろうか。


「それでは、里長? ご納得頂けたなら、後はお任せ下さいますね?」


「ふむ、リュージ。決して無理強いするつもりは無いんじゃが、このままじゃと近い将来に不味い事になるのも確かなんじゃ。よく考えてみてはくれんか? 詳しい話は、セシリーにでも聞けば良いじゃろう」


 怒濤どとうの展開に混乱するリュージを余所よそにセシリーと里長の間では話が決着していた。急に話を振られるが、話が見えないまま流されてゆく。


「えっ?」


「それでは、皆さん。リュージの家に、ご招待されましょうか!」


 知らない間に……招いても居ないのに招待する羽目になっている事にも驚くのだが、申し訳程度の確認すらもせずに女性陣が、「おぉ~!」という掛け声をあげてリュージを連れ出す。


「えぇっ!」


「あっ、リュージの家はあっちよ~」


 リュージは拒否する権利も与えられず、引き摺られる様にして帰宅のくのであった。案内を買って出たダーナが終始ご機嫌だったのは言うまでも無い。


「(すまんな、リュージ。これも、里の存続には必要なんじゃ)」


 里長は連れ去られるリュージを見送りながら、巧く事が運ぶのを願い……もし駄目でも、せめてトラウマにならない事を祈るばかりであった。当初の計画では、焦る必要など無いのでゆっくり時間を掛けて懐柔して行く筈だった。自然な流れでそうなる様に仕向けるつもりであったのに、何処で狂ったのだろうか。里長などと折衝役の様な事を務めてはいるが、女性の集団を抑えきる事は出来なかった…魔力という力のみならず数でも負けているのだから。


 生まれ育った環境や教育、または経験などによって育まれるのが価値観とも言えるだろう。余所から来た者には受け入れ難い風習や文化もあるかもしれない。里長がずっと心配していた事ではあるが、隠れ里の中で凝り固まった価値観は、里長の心配とは逆の意味で見落としている部分もあるのではないだろうか。






 逆らっても無駄だと諦めたリュージは、観光旅行の添乗員ばりに案内するダーナと、観光客気分の女性達を眺めながら自宅までの道程みちのりを歩いていた。


「(イヴ先生、これは一体何なんですか?)」


「(私も、里長と一緒に止めたのよ。でも、多数決だと勝てないし……ダーナがあの娘達をあおったせいで暴走気味だから、私の言う事なんて聞かないのよ)」


「(また、あの人のせいですか?)」


「(そうは言うけど、リュージも悪いのよ? ダーナを歳の事なんかでからかうから)」


「そこっ! 二人だけでコソコソしないの!」


 諦めはしたが気になって仕方無いので、イヴァンジェリンに理由を問うリュージだが、周りに聞こえない様に小声で話していたにも拘わらず、ダーナに聞き咎められて注意を受ける。風の魔法が得意なダーナの近くでは、内緒話も出来無いらしい。


「は~い、あちらに見えますのが、我等が目指すリュージ邸でございま~す!」


「おぉ~、屋根が三角で黒い……格好良いかも!」


「不思議な形をしているんですね!」


「ねぇ、誰か居るみたいだよ? お客さんじゃないかな」


 森の先に瓦葺きの屋根が見えて来ると、女性陣がはしゃぎ出した。そもそも、何故ダーナが案内しているのか? イヴァンジェリンには不評だった屋根も、メーベルには意外と好評だしアデルも悪い評価では無さそうである。スージーは、誰だか分からない先客が気になる様だが、この家に訪れる客なんて予想するまでも無いだろう。


「……ゾロゾロと、千客万来?」


「お早う御座います、師匠!」


「「「師匠?」」」


「……ん、おはよう、一番弟子」


「「「一番弟子!?」」」


 先客は、やはりコリーンであったが……入浴していない所をみると、恐らく来たばかりなのだろう。簡単に挨拶を交わすのだが、師匠! 弟子! と、呼び合った事に3人とも驚くが、声まで揃ってしまう程の衝撃なのだろうか。


「何か、おかしいんですか?」


「コリーンは、人見知りだから……リュージを弟子にしたのが、意外だったのかしらね」


「……人見知りでも、弟子は取る!」


 リュージの疑問にイヴァンジェリンが答えるが、コリーンの言い訳は無いだろう。イヴァンジェリンは、かなりオブラートに包んだ物言いをしたのだから。確かに……人見知りでも、機会が有れば弟子くらい取るだろう。だが、事がコリーンになるとそうはいかないのだ、外出しただけでも珍しいと驚かれる程度には、引き籠り生活を満喫していたのだから。


「あ~、成る程ね。ふ~ん、そうか」


「ちょっとセシリー、何してるの~?」


 先程からずっと黙っていたセシリーが、何かを調べている様子が気になったのか、ダーナがちょっかいを出し始める。


「いえ、この家の周りだけ魔素が多いから気になっただけよ?」


「そうなの? それより、お風呂に入りましょ!」


「「「「お風呂?」」」」


「そっ! お風呂~! お肌がね~トゥルントゥルンになって~、髪がサラサラでツヤツヤになるんだから~! それを、あの三人は自分達だけで内緒にしてたのよ~」


 魔素の濃淡まで見えているのか、家の周りを調査していたセシリーの疑問をぶん投げて露天風呂に誘うダーナ。気に入ったのは良いのだが、三人を吊し上げるのはどうなのだろうか。入浴する文化の無いこの里で、風呂を勧めるのは難しい。それは、バルザック辺りの反応を見ても明らかであったのだからリュージからしてみれば、冤罪である。


「もう、勝手にしてて下さいよ。俺は外壁でも貼ってますから」


「何を言ってるの~? リュージもこっちよ!」


「はぁっ、何でですか! 嫌ですよ」


「そんな事言って~。あの二人は洗って貰ったって言ってたわよ~! 三助って言ったかな~?」


 どんな風に話したのか知らないが、余計な知識まで覚えなくても良かろうに……教えた二人に視線を送ると、ばつが悪そうにしている。それでも、微妙に照れ笑いしていたりと反省は見られなかった。他の面々も、肌を晒すのに若干の気恥ずかしさは感じた様だが、女性の絶対数が多いからだろうか? リュージの前で、惜し気も無く全裸になった。


(赤信号、皆で渡れば! ――って奴かな?)


『御主人の見た目が、弟みたいでかわいいからじゃないですかニャ?』


(それは、俺がチビだからって意味で言ってるのかな……?)


『よっ、良い意味ですニャ! 若返って嬉しいニャン?』


 この里には、そもそも入浴の習慣が無いのだから、混浴が当たり前なんだと開き直ってしまえば良いのだが――惜し気も無く晒される美しい裸体に、気後れしてタジタジになるくらいは仕方が無い。平凡な人生を歩んで来た男としては、馴れる迄は要修業である。だからこそ、そういう意味ではこの場に居る女性陣の方がリュージよりも度胸があるのだろう。


 ここには、桃の花なんて咲いて無い。花どころか桃の木すら無いのだが、目の前には桃の精と言っても過言では無いだろう、美しい女性が七人も居り――大小様々な起伏に富む身体というキャンパスの中で、桃色の花が色付く様は桃源郷を錯覚させるのに十分な迫力を有している。それは、艶かしいくちびるであり、二つの山の頂きであったり、脚の付け根の交わる部分……或いは、紅潮する素肌その物である。


「リュージ。リュージ! さぁ、洗って~?」


「人妻ですよね? 良いんですか? 他の男なんかに触らせて」


「あれあれ~? リュージは、お姉さんを意識してるの? この身体に反応しちゃうのかな~?」


「えっ? 何処にお姉さ――ガフゥッ!」


 スーパーモデルばりの肢体をさらけ出すダーナに、本当に良いのか確認すると巫山戯ふざけた事をかすので、冗談半分の返答をしようとした途端に攻撃された。油断していたとはいえ、リュージの心眼ですら反応出来ずに肘鉄砲ひじてっぽうを喰らってしまう。


「ゴホッ……あっ、洗わせて頂きます。それにしても、お子さんを産んでるとは思えないくらいにお美しい身体ですね~! ははは……」


「ドリスを産んで、七年も経つんだもの! 体型くらい戻るわよ~。これでも、努力してるのよ~」


 一応、褒めたからだろうか? 上機嫌でドリスを産んでからの年数を喋るが、口が滑ったのだろう。ただし、問題はその娘の年齢の方であった。


「えぇぇぇっ! うそだぁ~? あのドリスが七歳なんて有り得ないですよ~! えっ、マジなんですか? 随分と大人っぽいですね。十七歳くらいかと思ってましたよ! 背も高いし……」


「リュージ、あなたは私を何歳だと思っているのかしら?」


「さっ、さぁ? イヴ先生も教えてくれませんでしたし? ドリスが七歳なら……にっ、二じゅ――グォホォッ!」


「そんなに、オバサンじゃ無いわよ! まだ、十九歳なんだから!」


 現在、ダーナが十九歳ならば七歳のドリスを産んだのは、十二歳と言う事になる。七歳のドリスを見ればおかしく無いのだろうか。日本でも戦乱で人の命が軽い時代は、早婚だったのだから……。現代日本の常識を捨てきれず、十八歳くらいで産んでいれば二十五歳かなと口に出そうとした瞬間、二度目の衝撃に襲われる。


(異世界の女性は、思った年齢から十歳以上若く言えば安全だろうか?)


『そもそも、女性の年齢を言うのが間違いですニャン』


(そうか……でも、そう考えるとイヴ先生とか師匠って、行き遅れ――ゾクッ)


『御主人、それ以上は不味いですニャン』


 この世界では、魔力が多いと若々しい姿を保てると聞いたが、細胞が活性化でもするのだろうか? 何故ならば、子供の成長速度がリュージの常識で考えても、尋常では無いからである。まさか、七歳の子供が十七歳くらいに見えるのだから――女子高生が、ランドセルを背負って小学校に通う姿を想像すれば、その異質さが分かるだろうか? リュージが異世界に渡る前、海外ではそういうのが流行っているらしいとテレビで見たが……。


 ――だが、ここでコリーンの正体という疑問が沸き上がる。何故、幼女なのか? 魔力の素養も高く、成長補正が有ってもおかしく無い筈の女性であり、錬金術師……謎である。


 気を取り直して、ダーナの身体を丹念に洗う。プラチナブロンドの髪を纏め上げて、その白いうなじを露出させると、丸みを帯びた柔らかい腕から洗い始める。左手を取り泡立てたタオルで優しくそっと擦り、次は右手へ……両腕が終わると、肩から背中へ――。


「ダーナさん、手を上げて貰えますか?」


「は~い、あっん……くすぐったい、んっ」


 腕を上げさせて脇から脇腹を洗っていると、脇が弱いのかくすぐったそうにするが、その吐息まじりの嬌声きょうせいは男の理性を吹き飛ばすのに十分な破壊力を秘めている。


「あの、ダーナさん? 声は我慢して貰えますか? それから、前は自分でお願いします」


「えっ? ん~、頑張ってみるけど~、ちゃんと前も洗ってね!」


「はぁ~、マジか(理性を保つのも大変なんだぞ!)」


「はやく~、優しくね。あっ、んん……はぁ……」


 仕方無いので後ろから――と思ったが、今のリュージの身体では抱き付きでもしない限り、腕のリーチが足りなかった。正面から見据える勇気は持てず右側へと回り込み、たわわに実る乳房を回す様に拭うのだが、時折引っ掛かる乳首が刺激によって固く膨らむ……。石鹸水で滑りの良くなった乳房で、つい遊んでしまうのは男の本能ではないだろうか。


「リュ、リュージ……はっ、んんっ、駄目よ……みんな居る、から……」


「あっ、すみません……つい」


「もう、……胸は大丈夫。ありがとう」


 ダーナは火照る身体を自覚しながらも、そのテクニックを誉めつつリュージを押し止める。これ以上は自分でも、歯止めが効かない恐れが有ったからである。胸はもう良いという事で足を洗い始めるのだが、火のついた身体はくすぐったい筈の指先や足の裏に、知らない快感をもたらす。必死に声を殺して我慢するのだが、足首から太股に掛けてゆっくり舐める様に上がってくるリュージの手の動きが、得も言われぬ快感を伴いダーナの秘部へと辿り着く。既にそこは石鹸水以外の液体で溢れており、いつでも迎え入れる準備が出来ていた。だが――


「あっ、くふっ、はぁん……ふぅ、ふぅ~……上手なのね、危うく本気になりそうだったわ~!(もし、その気があるならお祭りの時にしましょうね)」


「えっ!」


 そう言うと、我慢出来なかったのか……しなかったのか、キスをするダーナ。本番が出来ない代わりとばかりに濃厚なキスをして離れて行くと、逆上せた様に赤い顔で湯に身体を沈める。リュージは最後に小声で呟かれた言葉を、聞き返す事も出来ずに立ち尽くすしかなかった。

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