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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第二章 隠れ里で魔法入門篇
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第二十二話 石工と木工!

 気を取り直して、ガラスを切ろうか。目の前には、二十メートル角で厚さが三センチメートル程のガラスが鎮座している。厚さの事までは、考えていなかった……。フロート法では、ライン上を一定の速度で流れる間に、厚さを調整する工程も含まれるだろう。だが、厚さの事などすっかり忘れてたので、全部の材料を流して固めてしまったのだ、溢れなくて良かったと安心するべきか。


 イヴァンジェリンは、このガラスの透明度に驚いていたが、リュージからすればそうでも無い。配合比率の問題なのか、それとも不純物が混ざったのかは分からないが、若干の曇りがある。厚さが三センチメートル近くあるから、余計に目立つのだろうか? 何れにしても、水族館の大型水槽には敵わない。水族館のガラスの厚みなんて知らないけれど、三センチメートルどころの厚みじゃあ無いだろう。


 現在、異世界で流通するガラスよりも透明度は上らしいが、耐久力はどうだろうか? 嘘か本当かは知らないが、ガラスは鉄よりも引っ張り強度が強いらしい。では、何故割れてしまうのかというと、製造過程でミクロン単位の細かい傷が付いてしまうからだそうで、ガラスが圧縮応力には強いが引張応力に弱いとされるのは、この傷が拡がる様にして力が加わるので割れてしまうらしい。だが、ガラス素地を流し込む以外は、移動させずに固めてしまう今回の方法なら、傷は無いのではなかろうか? もし、理論上の強度が実現するなら、十割がガラスの建造物は鉄骨鉄筋コンクリート造を上回るって事だ。曇りガラスにすれば、プライバシーも保護され、採光も最高か?


「……ュージ……リュージ、切らないの?」


「へっ? あっ……あぁ、考え事をしてました」


 イヴァンジェリンに身体を揺すられて、漸く気が付いたけど、考え事に没頭するあまり、ぼっーとし過ぎた様だ。


「……考え事…何の?」


「いや、ガラスの家の実現性の検証……?」


「あぁ、王宮は綺麗だものね」


「えぇっ!」


「えっ?」


 コリーンの質問に、ただ答えたリュージに驚愕の事実が告げられる。イヴァンジェリンの口から告げられたその事実は、出来れば知りたく無い物であった。


(何? その知らなかったの的な顔? 知らないと不味いの? クリスタルパレスとか呼ばれたりするのかな? 第一回の万国博覧会でロンドンに作られたのは、水晶宮たったか。鉄骨とガラスで作ったプレハブ建築の先駆けだって話だったが、こっちは王宮だもんな。流石にプレハブな訳は無いだろう、ガラスブロックなのかな? 一回見てみたいなぁ)


「ちっ、違うのよ? こんなに透明で大きなガラスじゃあ無いの、小さなガラスが組み合わさっていて、キラキラしてて綺麗だなぁって、別に他意は無いのよ?」


 イヴァンジェリンが、一人で言い訳みたいな事を口走っているのだが、何の事やら意味が分からない。今は、放っておく方が無難だろう。それよりも、小さなガラスって事は張り付けているんだろうか? ガラスブロックでも無さそうだ。


(ふぅ~、俺の驚きを返してくれ!)


 考え事やびっくりしたりで色々と有ったが、そろそろ工事を再開する事にした。この分厚いガラスを切るのに、振動剣は使えるだろうか? ひびが入りそうなのが心配なんだが。いや、やっぱり普通にガラス切りみたいに傷を付けて割るのが安全だろうか。


『御主人、水の刃をお奨めするニャン、名付けて【水塹すいざん】なんて、どうですかニャ?』


(……いきなりだな、名付けって必要なのか?)


『詠唱と同じだニャン! 名付ける事でイメージが固定化するニャ。水で土を掘るって意味で付けたのニャン!』


(そのまま、水の刃じゃ駄目なのか?)


『バリエーションは必要だと思うニャ。基本的に硬い岩盤や鉱石を水で切る為の魔法名で、使いどころは少ないニャン。取っておいた方が良いと思うニャン!』


(……分かった、任せる)


 結果的に分かった事がある。AIのクゥーに任せるだけで楽に魔法が使えるって事と、魔法名を付けるだけで格段に楽になる事だ。クゥーは、電脳と直結してるので、スキルレベルを上げる有効手段としては、こうやって兎に角クゥーを使うのがベストだろう。魔法を使う際も、細かい計算等はクゥーがやってくれるので、使いたい魔法と結果を意識するだけ良い。魔法名も、有ると無いとでは発動までのロスが全然違う。マニュアルとオートマチックの違いくらい負担が減るのだ。それをクゥーに任せたら、それこそテレビゲームだな。表示された魔法を選択するだけで、自分のターンに発動するのと同じ様なものなんだから。


『御主人、切り終わったニャン!』


(あぁ、ありがとう。助かった)


『これからも、クゥーに任せて下さいニャン!』


 ガラスは、かろうじて繋がってはいるだけで、殆んど切れている状態になっており、組み立て前のプラモデルの骨を連想してしまった。意図してやった訳じゃ無いんだが、これはこれで良いかとガラスをパキパキと割って外す。


『石工Lv1を獲得したニャン?』


(はぁ? 何で今更……しかも、ガラスで?)


『恐らくは、ガラスを真っ直ぐに割る為の作業が石工に必要な経験と見なされたものと思われますニャン!』


(あぁ、そうなのか? まぁ、良いか……)


 手を切らない様に慎重に割り進む。一枚一枚がかなりの大きさになる為、いい加減な作業をしていると事故の元となるだろう。


「あっ~! リュージ、私にもやらせなさい」


「ガラスで切らない様に気を付けて! 出来れば、手袋とか軍手があれば……」


 面白そうに見えたのか、やって来た二人に注意を促し作業を手伝って貰うが、大丈夫だろうか。


「……楽しい」


「コリーン、ずるいわよ!」


「あ~っほら、危ないから! 二人ともこの軍手を使って下さいってば!」


 果たして、軍手が何て翻訳されてるかは知らないが、簡易手袋だって事は分かった様だ。二人とも手に付けて、ガラスを更に割り始める。


(そんなに楽しいだろうか? それにしても、三センチメートル厚のガラスなんてよく持ち上げるなぁ、何キログラム有るんだよ。まぁ、魔法を使っているのは間違い無いんだが、逆らわない方が賢明かもな)


『御主人、ふぁいと~ニャン!』


(お前、案外良い奴だったんだな、これからも頼むな)


『はっ、はいニャン! クゥーは心を入れ換えて、これからも頑張る所存でありますニャン!』


(ガラスの方は、張り切ってる二人に任せよう。変な口出しは、知らない内に地雷を踏む危険性が高くなるからな)


 ガラスを納める窓枠を作り始める事にしたリュージは、開口部の方へ向かう。殆んどの内装は木製なので、これも材質は木で良いと思う。


(アルミの押し出し成型とかやってられないからな。何より、昔は当たり前に木製だったじゃないか!)


 今の日本では、歴史のある立派な旅館にでも泊まらないと、木製サッシュは中々見れない物だ。いや、最近は見直されて来てるんだったか? 北欧には気密性の高い木造住宅があって、窓枠も木製だがガラスも三層構造なのが有名な様だ。それくらいじゃないと尋常じゃない寒さに耐えられないのかもしれない。


(クゥー、少ないが窓枠の図面データが有ったよな? ……作れないか?)


『検索するニャン……アルミサッシュの図面データが有りますニャ! ガラスの厚みとサッシュの材質が違うので、そのまま作るのは無理ですニャン』


(そりゃそうか、素直に彫って作るか~)


『御主人、木製建具の図面データから利用出来そうな物が見付かったニャ! これを加工すれば時間短縮が可能ですニャン!』

 

 頭の中に画像データがイメージとして表示されてゆく。それを見て、クゥーの言わんとしている事が分かった。框戸を参考にして窓枠を作れば良いって事だ。戸の回りを框っていう部材で囲うだけで、中はガラスに入れてしまえば良い。これなら、それぞれの開口部に合わせて、サイズを調整するだけだ。


(クゥー、ここの開口部に合わせた寸法で部材を切り出せないか?)


『お任せ下さいニャン………出来たのニャ!』


 クゥーの協力で、正確に切り出された部材の両端に、仕口を付けて斜めに加工する。非常に面倒で大変な作業なんだけど、釘を出来る限り使わないなら必要な手間だ。しかし、この斜めの仕口がかなり曲者だ。接着剤が発達して品質の向上が著しい現代では、建具でここまでの加工はしていない筈だ。慣れてないので、向きが変わると混乱するが何とか一つが出来上がった。


『木工Lv1を獲得したニャン?』


 木工?仕口の細工がスキル獲得のポイントか? それじゃあ、柱や梁を加工した時は何で駄目だったんだろうか? スキルの獲得条件は明らかにされておらず、依然として不明のままである。何処かに研究機関でもないだろうか。


(クゥー、柱や梁の時じゃない理由は分かるか?)


『柱や梁などは大工の領分ですニャン!』


(大工は、まだ無いんだが?)


『未完成だからか、経験の不足かは不明ですが、条件が未達成ですニャン!』


(成る程な、一応は理解は出来る解答かな。納得が出来るかは別なんだが、文句を言ってみても解決はしないんだろうしなぁ。分からないなら、先に進めるしか無いか)


「……リュージ、持って来た」


「リュージ、全部割り終わっちゃったわよ?」


「二人とも、有り難う御座います。疲れたでしょう? これでも飲んで、一服しませんか?」


 アイテムBOXから出したのは、冷たいピンクの飲み物! そう、イチゴミルクだ。他に無いから仕方が無いってのもあるが、疲れた身体には糖分の摂取も必要だろう。先日の風呂上がりに、初めて飲んだ時からお気に召した様で、何かと催促されるのだが、何とか自分達で作ってくれないだろうか? 砂糖が無いなら蜂蜜とかで! 砂糖も作らないとなぁ。


 休憩中にステータスを眺めながら、作りたい物や欲しい物をリストアップするのだった。




 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属   隠れ里

 種族   異世界人


 レベル      5      

 生命力   1079/1079 

 魔力       ∞

 力       771   

 体力      798

 知力      3138 

 素早さ     1564

 器用さ     399 (35upニャン↑)

 運       179 (25upニャン↑)

 魔素ポイント 99998498


 《スキル》

[電脳Lv3]      [電化Lv2]

[鵜の目Lv4]     [鷹の目Lv3] 

[方向感覚Lv4]    [気配察知Lv3]

[魔力感知Lv3]    [魔法の心得Lv4]

[石工Lv1]  new  [料理Lv3]  

[錬金Lv3]  1↑   [木工Lv1]  new

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

蹴撃Lv1 槍Lv3 盾Lv1 登山Lv1 投擲Lv1 伐採Lv4 交渉術Lv1 剣Lv3 音波感知Lv1 海中遊泳Lv1 夜目Lv1


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 ムッツリ助平

イジメっ子 笑う切り裂き魔 三助 温泉伝道師

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