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異世界ゆったり立志物語  作者: sawa
第二章 隠れ里で魔法入門篇
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第十四話 美女と混浴、そして告白!

(……え~と、不味いな)


 延々と吹き出る温泉を眺めながら、問題に気が付く。舗装などされていないのだから、このままだと里が泥だらけになり、いずれは浸水してしまう。湯量が半端無いし、何とかしなければ。確かに、慌てていたとは思う。しかし、ある意味では冷静だったのだろうか。使える様になったばかりの魔法で、咄嗟に露天風呂を造り上げたのだから。


 流れ続ける温泉を止める為に、直径五メートル程度の範囲を陥没させる。深さは、大体七十センチメートル程だろうか。温泉が溜まり始めると、噴き出す湯量が落ち着いて来たが、土が溶けて折角の湯が茶色い。ならば、岩をイメージして周りを固めてしまえば良いと、地中から砂や岩を集めて表面を固めてしまう。まだ、茶色いのは噴出している穴からだろう。掘った穴の中も、同じ様に表面処理を施し、サイズを調整すると湯量も落ち着いた様だ。


(村に流れない様に、北側に溝を掘って……うん、言いたい事は分かるよ。埋めちゃえば良いんだって言うんでしょ? でも、練習は大事だからね)


 現実逃避していながらも、作業を続けるリュージに、質問の声が上がる。


「リュージ、それは何なのかしら?」


「えっ! 露天風呂ですが、何か?」


「露天風呂? どうして、お湯が地面から噴き出してるのかしら?」


「何処でも湧く訳では有りませんが、地熱で温められた地下水が温泉ですよ。外が嫌なら、小屋を建てるとか、水着で入浴すれば良いんですよ」


「水着? ……入浴?」


 イヴァンジェリンにそんな説明している最中に、噴き出した温泉を見たのか誰かが通報したのかのどちらかなのだろう。バルザックを始めとした自警団員が数人と、近隣の住民が見に来ていた。


「小僧、何の騒ぎだ?」


「騒がせたのは反省しているが、いい加減に小僧は止めないか? これでも四十二なんだがな」


「四十二? ……何がだ?」


「何がって、歳がだよ。こんなでもな!」


「「「「「えぇぇ~っ!」」」」」


(何だ? お前ら、俺を何だと思ってるんだ? 身長か? 身長なのか? よし、そこに並べ! ぶっ飛ばしてやる!)


「まっ、待て! お前は、俺より歳上だと言うのか?」


「さあな、バルザックの年齢なんて知らん! だが、俺が四十二なのは変わらぬ事実だ」


(今更だけど、あんた等はいくつなのよ? って言うか、温泉は良いのか? 俺は、風呂に入りたくて仕方無いんだけども。こっちに来てから、身体は拭くだけで、湯に浸かってないのだよ! 分かってる? 温泉だよ? 温泉! 中々無いよ、自分で掘った温泉なんて!)


 温度はちょっと高いが匂いはあんまりしないから単純泉だろうか。いや、塩味だから塩泉になるのだろう……海も近いし。詳しい成分が分からないから、これ以上の分類は難しいが、アルカリ性ならば美人の湯などと呼ばれるだろう。


「んっおほん、あ~なんだ、リュージあれは何なんだ?」


「だから風呂だよ。露天風呂! 温泉は知らなくても、風呂は分かるだろ?」


「「「「「……?」」」」」


「マジかっ! 身体を洗う為に、湯を溜めて入るんだよ。これは、温泉だけどな」


 皆が愕然とした顔をしているが、そんなにおかしな事を言っている訳では無い筈だった。ここが異世界……いや、文化の違う国だと理解してさえいればたが――


(そんな、変態を見る様な目で俺を見るなー! 見ないでくれー!)


「そんな身体に悪い事して、大丈夫なのか? 病気とかにならないか?」


「はっ? 逆だろ! 身体に良いんだよ? 健康になるんだよ」


「……」


(うわ~、何だ? その、疑わしい目は、信じないなら入るなよ! 別に頼んで無いよ~だ)


「そうか、それでは騒ぎは起こすなよ」


 そう言って風呂を知らない連中は、ぞろぞろと帰って行ったが、この国には風呂の文化は無いらしい。


「(勿体無い、良い物なのに)……イヴ先生、有り難う御座いました! お陰様で魔法発動の切っ掛けが掴めました」


「えっ、終わり? まだまだ教える事が有るのよ?」


「また、分からない事が出来たら、質問に来ますよ」


 リュージは、それで話しは終わったとばかりに、露天風呂に向かうとシャツだけ脱いで、入ってみる。入れなくはないが、やはり熱い。評判も悪いので穴を塞いでしまい、魔法で出した水で調節する。


「ふぅぃぃ~ぃ、あぁ~生き返る~!」


「わっ、私も入ってみようかな~」


「えっ!」


 突然、何を思ったのかイヴァンジェリンが、そう宣言すると湯に浸かり始めた。リュージも含め本来は身体を洗ってから入るべきだが、風呂と言うよりは水溜まりに近い造りであり、まだ若干濁った湯に試しに入るだけなので、問題は無いだろう。


「はあぁぁぁ~~っ、気持ち良い~~、はぁ~っ、これが、入浴」


(いやいやいや、混浴とかご褒美ですか? 着衣でも、色っぽ過ぎて拷問なんですが!)


 突然の混浴宣言に、リュージは反応が遅れてしまった。生憎と着衣だったが、イヴァンジェリンの色気の前では関係無く、その雪の様に白い肌が薄桃色に染まる様は、直視するのがはばかられる程の妖艶さであった。


「リュージ」


「はっ? えっ? なっ、何でしょう?」


「リュージのアイテムBOXに、船が丸々入ってるって聞いたけど、本当かしら?」


 イヴァンジェリンが徐々に詰め寄って来るが、その動きに合わせて湯が身体に張り付き、その肉感的な肢体を浮かび上がらせる。


「はぁ、まぁ、情報源はダーナさんですね?」


「何処で、どうやって手に入れたのか、聞いても良いかしら?」


 気候的には五月頃であり、それほど厚着はしていない為に破壊力は抜群であった。そんな最終兵器がもう目の前に迫っているのだ、理性を保つのも限界に近い。


「それは、構わないんですが、その~、あまり近くに、こっ、来ないで貰えませんか?」


「あら、どうして? 良いじゃない。それで?」


(俺は、今どんな顔をしているのか……赤い事は間違い無いな! だが、それはイヴ先生も同じだし、温泉で血行が良くなっているからだ! 分かってる、アイテムBOXの事が知りたいだけだろう。それでもだ! それでも、こんなシチュエーションの経験は無い、どうしよう? どうしたら良い? 話すも何も、知らないのに!)


 あぁ、近寄って来る。何故だろうか? 凄く色っぽいと思っているし理性も限界だが、冷静になろうと努力するリュージの頭の中では、あの主題歌がリフレインしていた。シチュエーションも雰囲気も……何もかもが違うのに! ……きっと来る~。


「あっ、あの、イヴ先生? 俺も流石に逆上せそうなので、上がってから話しませんか?」


「逆上せる?」


「え~と、血行が良くなって起こるんですが、長く湯に浸かっているのは、良くないので」


「ふ~ん、そうね、じゃあ、そうしましょうか」


 そういって、立ち上がったイヴァンジェリンの姿は……どう表現すれば良いのだろう。兎に角、物凄くエロかった。身体に張り付いた衣服は、濡れている為にラインが、はっきりくっきり丸分かりであり、衣服から滴る湯が余計に想像を掻き立てる。


(透け透けだし、ご馳走さまです!)


 リュージは、目が離せなかったが肝心な部分を見逃していた。湯船から上がろうとしていたイヴァンジェリンが、突然倒れて湯船に沈む。


(えっ、既に逆上せてたって事?)


 急いで駆け寄り、抱き起こすが意識が無い様だ!だが、直ぐに助けたので、湯を飲んだり呼吸が止まったりはしていない為人工呼吸の必要は無さそうだった。


(……チッ!)


 イヴァンジェリンを家の中に運ぶが、濡れた衣服は、どうするべきだろうか……魔法で乾かすか、身体に影響を与えずに衣服のみを乾かす。言葉では簡単だが、果たしてそこまで制御出来るだろうか?使えると言っても、さっき初めて使える様になったばかりだ。


 逆上せてる事を考えると、いっそ脱がせてしまった方が良いのかもしれない。だが、意識の無い女性を脱がすのは非常に躊躇われる。イヴァンジェリンの着ている服は、ボタン等が見当たらない為、脱がすのは一苦労な上、あちこち身体を触らないといけないだろう。


(ある意味役得なんだが、その後が怖いな~。氷山に埋められちゃったりしないかな?)



「こんにちは~! イヴァンジェリンさん、居ませんか?」


(あの声は、ダーナさんか?)


 そこに何の偶然か、天の助けが舞い降りた。もう少し遅ければ、リュージも覚悟を決めたのだが――


「助けて下さい、ダーナさん!」


「えっ?」


 その後、イヴ先生の状態を見せて、説明は後回しにして貰い……早速、着替えさせて貰った。それで、現在に至る。


「何で、あんな事になってたの~? 怒らないから、言ってみて~。」


「(それは、怒るって事なんじゃ?)え~と、魔法を教えて貰って、練習で穴を掘って、温泉に入って、逆上せちゃいました」


「魔法の練習迄は良いけど~、温泉って何? 逆上せる?」


「外に在る露天風呂…お湯です。あれに二人で入って話してる内に、逆上せたんです。お湯に入って、血行が良くなって、慣れてないから、自分の状態が分からなかったのかと」


「そう、初めて入る温泉? で、勝手も分からないイヴァンジェリンさんが悪いって言うのね?」


「違っ、そんな事言って無い! イヴ先生が色っぽ過ぎて、気が回らなかった、俺が悪いのは分かってるけど、上手く説明出来なかっただけだよ!」


(はっ! 今、俺は何を口走った? 途轍とてつもなく嫌な予感がする。いや、嫌な予感しかしない)


 そう思うリュージの前には、ニタ~ッと面白そうな笑みを浮かべる人妻の姿が。


「ですって~、どうします? 許してあげますか~?」


「――っ!」


 扉の向こうから現れたのは、意識を取り戻したイヴァンジェリン……早過ぎる。魔法でも使ったのだろうが、どんな魔法なのか。だが、リュージは聞かれてしまった内容の事で頭が一杯だった。


「上がってから、話す約束よね」


 扉を開けて、そう言ったイヴァンジェリンの顔は、逆上せた時より真っ赤だった。何この可愛い生き物。


(これだけの美人なら、もっと慣れていても良い筈なのにな、これが隠れ里クオリティーか? 隠れ里は関係無いか! ダーナさんがこれだし!)


「ねぇ今、失礼な事考えてるでしょ~? 言って置くけどねぇ、母親になると強くなるのよ~! 昔は私だってモテモテだったんだから~」


 勘は鋭い様だが、精度はいまいちである。微妙にピントがズレてる上に何気に自爆している。


(フォローしておくべきか。スルーするべきか。う~ん、スルーで!)


 下手に、今でも綺麗ですよ。なんて言った日には、何処で言い触らされるか判ったもんでは無かった。触らぬ神に祟り無し! その程度にはダーナの事を理解し始めたリュージであった。


 その後、自分が別の世界から来た事、理由や原因が不明な事、何故か若返って無限の魔力を得た事等を話し、アイテムBOXも分からないと告げた。教えても良かったのかと思わないでも無いが、隠れ里の住民ならば多可たかが知れてる上に余所よそに拡散する心配は無用である。そもそもリュージ自身が秘密を隠すのが苦手って言うのもあった。誰にでも話すって訳では無いが、誰かに話すだけで楽になる事もある。まぁ、美人に話して少しでも気が引けるなら結果オーライじゃね? なんて事を内心では考えていたりもする。いつか、騙されそうな気もするが、四十二年間……同じ様に生きて来て、そこまで悪い結果は不思議と無いのだ、対人関係限定であったが!


「別の世界…転移の原因は、分からないけど、その魔力なら仮説があるわ」


「イヴ先生、聞かせて下さい」


「恐らく転移した場所が、魔素溜まり。それも、とびっきり濃い魔素溜まりだったのね。それこそ、生命の泉とか」


「あぁ~、“生命の泉”ね……濃縮した魔素のエキスだものね。でも、魔力が無限で気付いた時には無かったんでしょ~? 伝説にある“神秘の湖”なんじゃないの?」


 イヴァンジェリンの仮説のに対して、ダーナは伝説とかを持ち出して来る。なんとも大袈裟な話であるが、魔力無限だとどうしてもそのレベルの話になってしまう様だ。


「“生命の泉”とか“神秘の湖”は知りませんが、そこに在った水なら、まだ少しだけ有りますよ?」


 そう言って、アイテムBOXから水筒が取り出されたのを見たのだが、おかしい……恐ろしい程の魔力を感じる。魔力感知のお陰で認識出来るのだろうが、こんなもん飲んでたの? っていう代物であった。


「「こっ、これは!」」


(あちゃ~、二人とも絶句してるよ)


「凄いわね、これだけ濃縮している魔素は初めて見たわ。これじゃあ魔力と変わらない。むしろ純粋な力その物である分、極悪って感じ」


「ねぇねぇ! ちょっと、ちょ~だ~い! ね? ねぇ、良いでしょ~」


(ダーナさん貴女は、何処のホステスですか? イヴ先生を見て下さい。貴女に呆れて、呆れ……何ですか貴女まで! 何ですか、その期待の眼差しは!)


 ダーナのあまりにも明け透けな物言いに毒気は抜かれてしまうが、若い頃に通ったキャバクラでの出来事を思い出す。この時、何を言っても無駄だろうと、色々と諦める気になったのは言うまでも無かったりする。


「差し上げても良いのですが、どうするんですか?」


「飲む?」


「お腹壊しても知りませんからね!」


 水筒を差し出すと、それを引ったくる様に奪って行くダーナ……受け取り方として、間違っているのではないだろうか。


(貴女って人は幻滅ですよ!)


 飲んだからって、すぐにどうなる物でも無いって思っていたのは大間違いだった様で、二人ともすぐに効果が現れる。


「ひゃっほ~、魔力が上がった! イヴァンジェリンさん、魔力が上がりましたよ~! ほら、お肌もツルツルですよ」


「えぇ、やっぱり伝説になるだけあるわね!」


「あの~、魔力は分かりますが、お肌って関係あるんですか?」


「「有るに決まってるじゃない!」」


(二人して言わなくても、泣くぞ!)


 詳しく話を聞くと、魔力が多い人は歳を取り難いそうだ。つまり、いつまでも若々しいままでいられるとか、だからあんなに欲しがったのである。


(それだけで若返るとか……あれっ、俺が若返ったのも、それが原因か? 身長まで戻る必要無くね? 何なんだ、この理不尽な仕打ちは!)


 こうなって来ると他者には秘密にした方が無難だろう。今のところは無くなっても構わないのだが、面倒臭い事になりそうなのは間違い無い。


「お二人共、この水の事は秘密って事で!」


「「当たり前よ」私の物なんだから!」


「ご理解有り難う御座います。それから、ダーナさん? 貴女に全部を上げた記憶はありませんから!」


「えぇ~~っ」


「えぇ~~じゃありませんよ、全く! イヴ先生からも、言ってやって下さい」


「えぇ、そうね……駄目よダーナ」


(あっれ~? 何で二人して落ち込んでるの? ダーナさんは兎も角、イヴ先生まで)


 そんなこんなで、魔法のレッスン初日は、無事に終了したのだが、確認したステータスが問題であった。いや、正確には称号が……である。


(おいっ! ムッツリ助平って何ぞな! 断固として撤回を要求する!)


 リュージの魂の絶叫は、魔素を通して異世界に轟いた……のかもしれない。

 ステータスであります。


 《ステータス》

 名前   鈴木立志すずきりゅうじ

 性別   男

 年齢   42

 職業   放浪者

 所属  

 種族   異世界人


 レベル  5      

 生命力  1049/1049 

 魔力   ∞

 力    771   

 体力   768

 知力   2074    (15upニャン↑) 

 素早さ  1211    

 器用さ  284

 運    64     (5upニャン↑)

 魔素ポイント 99998498


 《スキル》

[電脳Lv2] [電化Lv2]  [方向感覚Lv2]

[鵜の目Lv3][鷹の目Lv2] [気配察知Lv2]

[剣Lv3]  [料理Lv1]  [交渉術Lv1]

[伐採Lv4] [魔力感知Lv1][魔法の心得Lv1]

 蹴撃Lv1   槍Lv3     盾Lv1

 登山Lv1   投擲Lv1    泳法Lv3

 潜水Lv3


 《称号》

スキルコレクター 殺戮者 無慈悲なる者 ムッツリ助平

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