PICTURE BOOK
短編です。
本来連載モノだったのに少し手を加えて短くしました。
ほんわかとお読みください。
「『お姉さんが妖怪をたおすと
妖精たちはお姉さんに泣きながらお礼を言いました
ありがとう ありがとう ありがとう
今までたくさんの人達に悪いことばかりしていたお姉さんは思いました
これからは 困っている人のために生きよう
それからお姉さんはたくさんの人を救いました
自分が 妖精たちに救われたように...』」
絵本を読み終えて、子供達の反応を見る。ちゃんと物語に入り浸ってくれたようだ。
あたしは感想を聞いてみることにする。
「ねぇ、どうだった?面白かった?」
お互いに顔を見合う、幼稚園児。そしていっせいに思ったことを口にする。
「「「「「「「んdh氏う亜rg;おいh吸い穂言う顎ビオふいオ;h歳hふぽ!!!」」」」」」」
「ごめん、お姉さんが悪かった!だから一人ずつ喋って!」
子供の元気よさに圧倒されるあたし。すごいなぁ。あたしもこれくらいちっこい頃は、こんなに活発な自己表現をしていたのかな?
今度は、それぞれちゃんと手をあげて「ハイ!ハイ!」と叫ぶ子供達。うぅ、可愛いなぁ……。
あまりのキュートさにいつまでも悶えていたいが、今日はもうこの子達が家に帰らなければならない時間だ。さっさと、これからの活動に対する参考を聞いておこう。
「じゃ、そこの君。あたしの絵本読んで、どう思った?」
あたしは銀縁メガネを掛けた大人っぽいオーラを漂わせている男の子を指す。その子は「えーとですね」とメガネをくいッと持ち上げると、とても5歳とは思えない感想を叩きつけてきた。
「まず、妖精が出てくるというファンタジーで西洋の世界観なのに、妖怪という純日本の得体の知れない存在を出すのはどうかと思います」
「うっ!」
た、確かに!何で妖精が妖怪倒せって言うのだ。そこは怪物でよかったではないか。
しかも事もあろうに、メガネ君はあたしを精神的に病ませる感想が、まだまだあるようだった。
「それに、物語中盤で大砲の絵が出てきましたけど、あの大砲だけ、何であんなにリアルだったんですか?ほぼ現実に近い描写だったんですけど、花畑の中にアレがあるのはどう考えてもおかしいですよね?」
「ぐはっ!」
「お姉さんが妖怪退治に向かう時、心配する妖精に背を向けたまま右手の親指を突き出してスタスタと歩いて行っちゃうシーンなんて、まんま遊○王の最終回のパクリだし」
「げぼろっ!」
「しかもこの物語に出るお姉さん、貴女に似てますけど、もしかしてモデルは……」
「い、いやああああああああああああああああああああ!」
ばたりと倒れるあたし。そこまで真剣に見ていてくれたのは嬉しいけど、もっと容赦という言葉を知って頂戴……。
「後ですねぇ……」
「まだあるの?!」
勢い良く顔を上げる。駄目駄目!これ以上はあたしが精神異常者として病院送りにされちゃう!
嫌な汗を体中に掻きまくったあたしだが、メガネ君の隣の女の子が、攻撃を制す。
「もうやめときなよ竹中君……。お姉さん、バイオのリッカーみたいな顔してるから……」
「そうよ、毒舌もそこら辺にしないとTウィルスに感染する…ってまさかの追い討ち?!」
味方だと思った助っ人に、裏切られました。不意打ちだったため、予想以上のダメージを受けたし。しかもなんか女の子ニヤニヤしとるがな。……イマドキの幼稚園児、コエェェェ……。
女の子は苦しむあたしを見て満足したのか、表情を一転、今度はさわやかな笑みになった。
「でも」
「……?」
目を細め、口角を限界まで上げて、首を傾けて笑う少女。気づけば、そこにいる全員が、そんな顔をしていた。
「面白かったよ、お姉ちゃん!」
言葉が、出ない。
むしろ、涙が出そうだ。
それほど、あたしは心を揺さぶられた。
「そうそう、絵も上手だったし!」
「また来て欲しいな!」
「次はあたし達も何か用意しておくからさ!」
眩しすぎるほど、明るい笑顔をあたしに向けてくれる子供達。そして、声をそろえて、彼女らがさっきから暖かい表情で見守っている幼稚園の先生から、毎日のように教わっているであろう言葉を、あたしが今回創った絵本の妖精たちの言葉を、口にする。
『ありがとう、お姉ちゃん!』
あぁ、これだ。
あたしが絵本を作って、読んで、聞いてもらう理由は、これだ。
誰もを幸せにする力。誰もを笑顔にする力。誰もを感動させる力。
この世で一番綺麗な力を、絵本という物は持っている。
それは、この笑顔が、証明している。
だからあたしは。
「うん。また新しいの作って来るからね!」
いろんな人に、自分の創った絵本を、読み聞かせるのだ。
いろんな人を幸せに、笑顔に、感動させるために。
あ、主人公名前ねえやwwww
ま。それはいいか。
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