千夏の後悔と感謝
もしも、あの時、違う選択をしていたら、今頃、どうなっていただろう。私は、今でも、そう考える。
私は、千夏、42歳。2年前に、離婚をした。子どもは、いなかった。だから、わりと、すんなり別れられた。別れた理由は、いろいろあるが、性格の不一致だった。
1人になって、自由を謳歌するはずだったのが、参加したバス旅行で、バスが、横転する事故があり、顔面を、強打して、眼底吹き抜け骨折に、なってしまったのだ。
目の下の骨が折れて、眼球が、そこから、下に落ちてしまったのだ。道路が斜めに見えたりして、本当に、怖かった。
もし、離婚せずに、主婦をしていたら、旅行に行くことは、なかったのだ。そう思うと、自分の決断が、正しかったのか、疑問に思う。これは、もう、後になって、思うことになってしまったのだが。
そう考えると、結婚そのものが、間違いだった気もする。もし、別の人と、結婚していたら、離婚してなかったかもしれない、そう思えるからだ。すべてが、そういう、分岐点で、人生は、違ったものになってくると思う。
私は、このケガによって、今でも、後遺症に、苦しんでいる。手術はして、成功したのだが、いまだに、右目は、上の方が、全部、見えなくて、下も、二重に見えるのだ。幸い、車の運転は、できているのだが…
離婚して、これからというときだったので、ショックは、かなり大きかった。顔面も、手術をしないと、変形してくると、言われたので、泣く泣く、手術をしたのだ。
最初は、もう、誰とも会いたくなくなっていた。顔の部分のケガだったので。気にせずに、会えるようになったのは、しばらくたってからだった。もう一つ、以前は、コンタクトレンズだったのが、目のケガで、メガネになったのだ。コンタクトレンズの方が、私は楽だったので、これも、困ったことの1つだった。
人生いろいろあるけれど、あの事故のことは、もう、思い出したくなかった。まさか、こんなケガを、かかえることになるとは、思いもよらなかった。今まで、大きなケガや病気をしたことのない私にとって、本当に、ショックな出来事になってしまった。バス旅行に、参加したことを、後悔しても始まらないので、前向きに、生きようとしているが、やはり、何かの時には、悲しくなる。顔も、昔の顔とは、やはり違っているように見える。右側部分が、むくんだ感じになっている。寒くなると、手術した傷が、痛んだりするので、気持ちがふさいだりする。悲しい結末になったが、頑張って生きていこうと、思っている。
世の中には、もっと、いろいろ、大変なことをかかえて生きている人たちが、たくさんいると思うから。
後ろ向きな考えでは、前は、見えてこないとおもうから。そう思えるようになったのも、私の場合、母の励ましが、大きかった。母の支えがなければ、私は、今頃、どうなっていただろう。そう思うと、怖くなる。いろんな場面で、力を貸してくれた母には、感謝しかない。
このケガを通じて、私が思ったことは、何事も、人を恨んでも始まらない、ということだった。一時は、人を、恨みたくなったこともあったのだが、それでは、絶対に、前向きになれないと思った。顔の傷を、かかえて、過ごしていくなかで、そのことは、一刻も、早く忘れることだと思った。
今は、ほとんどの事が、支障なく、生活できているので、感謝の心を持って、過ごしたいと思っている。




