表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千の目をもつ天使 ~異能地獄変~  作者: 坂本光陽


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/34

神の叡智をもつ男②


 エイボンは魔術師として、飛躍的な進歩を遂げた。


 ツァトゥグアの指導のもと、他人の心を読んだり自由に操ったりすることができるようになったのだ。さらに、肉体から精神を解き放つこともできたらしい。信じがたいことだが、精神体の存在となり、他の天体に行くこともできたという。


 神の叡智は後に、弟子たちによってエイボンは魔術師として、飛躍的な進歩を遂げた。


 ツァトゥグアの指導のもと、他人の心を読んだり自由に操ったりすることができるようになったのだ。さらに、肉体から精神を解き放つこともできたらしい。信じがたいことだが、精神体の存在となり、他の天体に行くこともできたという。


 神の叡智は後に、弟子たちによって編纂(へんさん)された。それこそが魔導書『エイボンの書』である。ちなみに、ラテン語,フランス語,英語による写本が存在するという噂であるが、それを実際に目にした者はいない。


 とにもかくにも、神の叡智によって、エイボンの才能は一気に開眼した。


 ハイパーボリアが大火災に見舞われた時は大雨を降らせて鎮火を果たし、流行り病が蔓延(まんえん)した時には無料で治療薬を王国じゅうに配布した。外敵の襲撃を受けた時には巨大な魔物たちを使って撃退した。


 これらの功績によって、エイボンは王国所属の魔術師に召し上げられた。「世界一の魔術師」ともてはやされ、ハイパーボリア人で知らぬ者がいない存在となった。


 ツァトゥグアがサイクラノーシュに帰還したのは、その頃である。エイボンの出世をうらやむ魔術師たちが教えを乞おうと、ツァトゥグアの元に殺到したことに嫌気がさしたと言われている。


 エイボンを妬む魔術師も大勢いた。王国民や王族の中にも、いつしか反エイボンの勢力が生まれた。国王を殺害して国家転覆を目論(もくろ)んでいるなど、お決まりの陰謀話がささやかれ、世界一の魔術師は生命の危機を感じるようになった。


 エイボンの精神体がツァトゥグアの故郷,サイクラノーシュに逃れたのは、ごく自然な成り行きだったのだ。


 エイボンは探求者だった。その後も自惚(うぬぼ)れや慢心を知らず、常に真理を求め続けた。異星の神々との精神的交流を経て、さらに神の叡智を体得。それどころか、ついには神々との一体化まで成し遂げて、エイボンは唯一無二の存在となった。


 まさに、「神々の末裔」と呼べるほどの存在となったのだ。


 時は流れ、栄華を誇ったハイパーボリアは、氷河期の到来によって滅亡した。王国の全ては氷の下に閉ざされてしまった。


 エイボンの精神体が地球に帰還したのは、20世紀に入ってからである。自分自身の肉体が朽ち果てているため、新たな肉体が必要だった。


 1963年12月22日、ジョン・F・ケネディがテキサス州ダラスで暗殺されたのと同じ日に、ニューヨーク・スラム街の一角で、エイボンは転生した。赤ん坊の身体を借りて、地球への帰還を果たしたのだ。


 そのため、ある黒人夫婦の間に産まれた息子は、なぜか金髪碧眼(きんぱつへきがん)で耳が尖っていた。それがハイパーボリア人の特徴であるとは、黒人夫婦が知る由もない。夫は妻の浮気を疑って暴力を振るい、身に覚えのない妻はノイローゼに陥った。


 金髪碧眼の息子は結局、里子に出された。

 ビル・クライム。それがエイボンの新たな名前だった。


 数十年の時が流れた時、ビルは神の叡智を用いて、大国を完全に支配していた。

 しかし、ビル・クライムの名を知る者は限られている。その名はもはや、都市伝説と化していた。


 いわく、ビル・クライムとは、政府とマフィアを操る怪人物である。

 いわく、ビルの正体を探る者は必ず消され、死体さえ見つからない。

 いわく、ビル・クライムは年を重ねても、若々しい姿を保っている。


 それらはすべて、真実だった。ビル・クライムは人間の年齢で50歳を超えていたが、どう見ても30歳前後である。


 そして、尖った耳をした金髪碧眼の若者の正体が「神々の末裔」であることは誰も知らなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ