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千の目をもつ天使 ~異能地獄変~  作者: 坂本光陽


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有象無象包囲網①


 理市は歩きながら、心と身体が次第に活性化してくることを実感した。もしかしたら、蠟燭(ろうそく)が消える間際に見せる最後の炎のようなものかもしれないが、そんなことは考えても仕方がないだろう。湧き上がる不安は、とりあえず笑い飛ばすことにした。


 食欲が出てきたので、通りすがりに見つけたコンビニに入った。考えてみれば、今日は何も口にしていない。スタミナがつきそうな焼肉弁当と好物のプリンを買い込み、それらをイートインスペースでかきこんだ。腹八分目にしておくことも考えたが、食欲が抑えられず、きれいに平らげてしまった。


 次の食事が〈最後の晩餐(ばんさん)〉になるかもしれない。何を食ってやろうか、などと考えながら、デザートのプリンにとりかかる。天ぷらにするか、寿司にするか、いや、ラーメンも捨てがたい。まぁ、どちらにしろ、これからの行動次第だ。理市はプリンを小さじですくっては口に運ぶ。


 食べ終えて、まとめたゴミをダストボックスに捨てながら、何気なくコンビニの駐車場に目をやった。先程までなかった車が停まっている。シルバーのレクサスである。スモークガラスのせいで、車内の様子は見えない。


 理市の脳裏で、警戒ランプが(とも)る。


 コンビニの出口は、駐車場のある正面にしかない。理市は苦笑を浮かべて、ふらりと自動ドアをくぐって外に出た。とたんに、レクサスからわらわらと四人の男が出てきた。見覚えのある顔があったので、彼らが最上一派であることがわかる。


 おそらく、日光街道で網を張っていたのだろう。理市が幹線道路に沿って歩いてきたのは、どうやら失敗だったようだ。


 しかし、ものは考えようである。三人を叩きのめし、残りの一人から情報を入手すればいい。レクサスの中には、カーナビがあるはずである。登録内容から、黒井の立ち寄り先や現在地を割り出せるだろう。そう思うと、自然に笑みがもれた。


 最上一派の四人はそれぞれ、対照的な反応を見せた。理市の笑みを見て、怒りから目をむいた男が二人。怪訝な表情を浮かべたのは一人。後方に控えた男だけは無表情だった。この男が四人のリーダー格なのだろう。


 最後にとっておく一人は決定した。理市はアスファルトを蹴って、男どもとの距離を一気に詰める。焼肉弁当で得たカロリーをエネルギーに変換し、瞬時に爆発させた。


 右端の男の左脚をローキックでへし折り、その勢いで右端男の身体を中央の男にぶつける。二人の態勢が崩れた隙に、サイドステップを踏んで左端の男に肉薄。右フックのフェイントをかけて、左の前蹴りをガラ空きの腹部に打ち込んだ。確かな手応えを感じつつ、流れるような動きで中央男の右側頭部に左回し蹴りを放った。


 ここまでに、5秒とかかっていない。二人はアスファルトの上でのたうち回り、一人は泡を吹いて失神していた。しかし、最も手ごわそうな四人目が残っている。彼の左顎の腫れを見て、理市は気がついた。


 四人目は半日前にアパート襲撃を受けた際、理市が右アッパーカットで沈めたボクサー崩れだ。あっさり負けたイメージが払拭できないのだろう。戦う前から及び腰である。倒した男たちを飛び越えて、理市はボクサー崩れに襲いかかった。


 相手が逃げ腰なので少し時間がかかったが、右アッパーカットをフェイントにして、左フックで撃沈せしめた。意識朦朧の彼をレクサスの後部座席に引きずり込み、情報を入手するために速やかに場所を移すとしよう。

 残された三人は放っておいた。コンビニの通報で病院に担ぎ込まれるか、呻きながら立ち去るかするだろう。


 理市は元々、車の運転が得意ではない。ひと気のない薄暗い通りに入ると、適当な場所でレクサスを停めた。グローブボックスに入っていたガムテープを使い、ボクサー崩れの両手首両足首を拘束してから、頬を張って蘇生させた。


「いろいろ訊きたいんだが時間がなくてな。話す気がないのなら黙っていろ」

 いきなり、左手の小指をポキンと折った。次いで、薬指もポキンと折る。

「骨がもろいな。もっとカルシウムをとった方がいいぞ」笑顔で言ってやると、ボクサー崩れの心はあっさり折れた。


 ボクサー崩れによると、黒井の居場所は企業舎弟の事務所ではなく、例の裏カジノのあるマンションだという。つい3日前に忍び込んだばかりである。裏カジノは五階だったが、六階には黒井の部屋があるらしい。


 罠である可能性を疑ったが、ボクサー崩れの脅えきった表情を見ると、どうやらそれはなさそうだ。



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