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第1章 静かな家に潜むもの 第1話  引っ越しと違和感

上京して5年、静かな郊外に念願の1軒家を購入した。少し古びた木造の家だが何不自由ない。

引っ越したばかりの時は、家の不気味な静けさにビビったりもした。その原因は、押入れから見つかった1冊の古びた”誰か”の日記。

「赤い女が来る」

と書かれた不気味な日記だった。

家自体は昭和な作りだが、どこか懐かしいおばあちゃん家のような雰囲気の家。

憧れだった都会の街に馴染めず、静けさな小さな町にたどり着きひっそりと暮らしている

はずだった…あの日までは――

第1章  静かな家に潜むもの

      第1話 引っ越しと違和感


僕の名前は佐伯悠真。27歳、独身。

フリーランスのイラストレーターとして、細々と生計を立てている。

上京してから5年。都会の喧騒に馴染めず、結局たどり着いたのは郊外の静かな町だった。 そして、念願だった一軒家を購入した。少し古びた木造の家。

昭和の香りが残るその造りは、どこか懐かしくて、まるで子どもの頃に遊びに行った祖母の家を思い出させた。

畳の匂い、軋む床、障子越しの光。

「ようやく手に入れた1軒家、少し古いけどこの静けさが僕にはちょうどいい」

そう思っていた。 

初めのうちは…。

夜になると、家の中が異様に静かになる。

壁の向こうから何かが軋むような音がして、風もないのに障子が揺れる。

それでも僕は「古い家だからな」

そう自分に言い聞かせていた。

けれど、どうしても気になる部屋があった。

――1階の奥の部屋。

今は物置として使っているその部屋の押入れから、引っ越しの片づけ中に古びた日記帳が見つかった。

埃を被った黄ばんだ表紙。

ページをめくると、震えるような筆跡でこう書かれていた。

「赤い女が来る」 

その一文を見た瞬間、背筋が冷たくなった。

ページをめくるたびに、意味のわからない言葉や、誰かを呼ぶような文が並んでいた。

「なんだこれ…誰かの…日記?」

「赤い女が来る… 冗談…だよな? なんだよこれ…」

指先が震えていた。

読んではいけないものを読んでしまったような、そんな感覚。

僕はその日記をそっと押入れに戻し、部屋の扉を閉めた。

それから、あの部屋にはなるべく近づかないようにしている。

家の構造はこうだ。

玄関を入ると、右手に縁側と客間。左手には居間とキッチンがあり、奥に例の物置部屋がある。

居間の奥には扉があり、そこから風呂場、トイレ、そして階段へと続いている。 2階には寝室と、僕の仕事場として使っている部屋がある。

静かな町で、ひっそりと暮らす。

それが僕の理想だった。

けれど、この家には、何かがいる。

目に見えない“違和感”が、日々、僕の生活に忍び寄っていた。


ある夜――。

居間で作業していると、静まり返り空気が沈んでいくのがわかった。

時計の音だけが、やけに大きく響く。

「静かすぎる…まるで音が吸い込まれてるみたいだ。」 

ふと物置部屋の方を見ると扉が少し開いていた。

「あれ?…さっき閉めたはずの扉が…」

ふと違和感を覚えたが 「気のせいか…」とその時はまだそこまで気にすることはなく作業をこなしていった。

作業を終え、お風呂場で顔を洗っていると… 鏡に一瞬赤い影が映った。

反射的に振り返るが誰もいない…

だだ、鏡の中の自分の顔が、どこか他人のように見えた。

目の奥が、知らない誰かのもののようだった。

「…っ!今、鏡に…」 

「気のせい… だよな。」 

「疲れてるんだな… 早く済ませて寝よ…」

そう言い聞かせて寝室へ向かった。

そして寝室に行き横になった。

その瞬間、窓の外に赤い服の女が一瞬立っているのが見えた。

──目が合った気がした。

「やっぱりこの家… 何かがおかしい。」 

そう感じた…。

けれど、僕はまだ知らなかった。

この家が、僕の”記憶”と深く結びついていることを。

そして、”赤い女”が、ただの幻ではないことを──。



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