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北へ!

 一通り状況を確認し、京都抵抗軍の3人の事を知った翠たち。


 天使から逃げる身という彼らの置かれた立場は芳しいものではなかったが、それでも翠たちに撮っては同志がいるという事実はとても嬉しいものだった。



「…さて、そろそろ、お主らのことも聞かせてもらえぬかの?」


 翠たちにジンが尋ねる。彼らにとっても、翠たちは興味の対象のようだ。


「まさか…、あの天使たちに逆らう者が、ワシら以外におるとはのう…。目的は、その子の奪還かの?」



 翠達はそれにこたえ、出自とここまでの経緯を語る。


「ええ、僕らは…」


 翠たちはあの日からこれまでのことを語った。


 翠たちが京都の出身であること、京都から逃げた先で、ウールに捕まったこと。弾圧されながらも脱出の機会を伺っていたこと、朝日が生贄にされたこと、そして朝日の奪還に乗り出したことを語った。


 京都抵抗軍の3人もその話を興味深く聞いていた。それもそうだろう。翠達もまた、この日の本においてそう多くはないであろう、彼らと同じ天使に反旗を翻す者達なのだから。


 一通りこれまでのことを話したあと、最後に、ゲンジがこう綴る。


「まあ、どっちにしても三人の助けが無かったら、みんな今頃串刺しになってただろうな。だから、本当に、ありがとう。」


 ゲンジが感謝を告げる。彼らの助けがなければ翠たちには今はなかった可能性が高い。感謝してもしきれない。


「いってことよ!私たちは同じ、天使に抗う者だしな!!」


 花蓮は彼女らと同じ天使に抗う勢力と出会えたことが嬉しいようだった。


「それより!やっぱおめえら、最高だぜ!!まさか!あのクソ蒼様に歯向かうイカれ野郎がいるなんてよ!!うちの隊長にも見せてやりたかったぜ!!」


 花蓮が翠たちを絶賛する。蒼様に反旗を翻さんとする彼女らにとっても蒼様に面と向かって歯向かうということは想像できないものらしい。


「うんうん!豊穣祭なんて怪しい事をするって聞いたから、行ってみたら…!まさか、蒼様の目の前で、蒼様に反抗する人たちがいるなんて…。」


「ああ、思わぬ収穫だったのう…。ワシら京都抵抗軍がやられて、もう、蒼様の世になると思っておったらのう…。」


 花蓮以外の2人も、それに同意する。


「豊穣祭がぶち壊されたのを見た時は、気持ちよかったぜ!こんなすげえやつらに会えるなんて、最高だ!!」


 確かに翠たちは蒼様に抗ったのだ。勝ち…とはいえないかもしれないが、確かに朝日を奪還した。これは間違いようのない事実だ。


「花蓮のいう通りじゃ。それほどまでに強い意志を持ち、そして生贄の奪還を実現してしまうとは…」


「これはもう!全員京都抵抗軍に入ってもらうしかないな!!ついに新生京都抵抗軍も8人になるな!!」


 花蓮はまるで翠達5人が承諾するのは当然とばかりの自信ありげな声で笑いながらそう言う。



 だが、そんな花蓮に、ジンはあきれ顔で指摘する。


「おい花蓮。こんなぼろ屋しかない抵抗軍に、誰が入りたいと思うんじゃ?」


 花蓮も負けじと反論する。


「こーいうのは場所じゃなくて意思が大事なんだよ!意思が!」


「…じゃが、流石にここに8人は住めんぞ。」


 マルもうんうんと頷いている。


「それに、ここもいつ天使に見つかるか分からないよ。今日のところは凌げたけど、捜索隊が組まれるかも知れない。僕らも拠点を変えなきゃいけないかも…。」


「…。まあ、私らもずっとここに居るわけにはいかねえよなあ。このボロ屋じゃ肌が荒れて仕方ねえし。」


「……なっ!?花蓮……!?お主、肌の荒れとか気にしておったのか…!?」


「……………!?…イヤ…当然だろ!?」


「…………………。とにかく、ここと違う拠点を探す必要がありそうじゃのう…。翠ら5人が抵抗軍に入るも入らんも、それからじゃのう。」


「つってもよ、今時、天使共がいねえ場所なんてこーいう山奥ぐらいだぜ?その上ここでさえ、最近はたまに天使を見かけるんだろ?」


「ああ。そうじゃのう…」


 ジンと花蓮が考え込む。やはり、どこもかしこも天使に支配されてしまっているらしい。天使たちに反抗している彼らと翠達に逃げ場はないのかもしれない。


 そこで、翠が一つのことを思い出す。


「あの…」


「ん、なんだ?」


「東北…はどうでしょう?噂で、東北、岩手の抵抗軍が、天使に勝ったって…」


 それを聞いたジンと花蓮が目を開く。


「おい!それは本当か!?」


「嘘じゃろ……天使が!?負けたじゃと…!?」


 驚き2人が翠の顔を覗き込む。翠は驚きながらも続ける。


「それほど信用できる情報かは分からんですけど、そういう噂があって…。もちろん天使は殺せないはず…。だから嘘かも知れないし、でも…あるいは何か方法を見つけたのかもしれない…。だから、朝日を奪還できたら、そこに逃げようかと話していたんです。」



「だが、流石に岩手藩は遠すぎる。食料が限られている中、天使に見つからず東北まで行くのは難しいんじゃないかって話していたんだ。」


 ゲンジのいう通り、ここから岩手までは相当の距離がある。その距離を天使に見つからずに進むのは容易ではない。


 それに食料にも限りがある。食料のつきるまでに東北に到達しなければいけないことを踏まえると、その道のりは相当な困難が伴うだろう。


「なんだ、そんなことか。それならなんとかなるぜ。」


 意外にも、そう花蓮があっけらかんに答える。


「天使は多少の下位ならさっきみたいに倒せばいい。食料も道中で狩りをすればいい。ここでもそうやって生きてきたからね。」


 ジンもこの案に乗り気のようだ。


「天使の敗北…無駄足かも知れんが、真実を確かめる価値は十分にあるじゃろうな。」


「もし、天使に勝つ方法があるってんなら、私らも知らなきゃだしな。」


「この小屋にも馬、いるから、朝日ちゃんの分の馬もあるしね。」



 話はあっさりとまとまっていった。この8人で東北を目指す。今まで全く見えなかった未来への道筋が、うっすらと、だが確かに見えてきた。


 東北へ行き、天使に打ち勝つ方法を求める。そして、蒼様を討ち、人間の生きる時代を取り戻す。


「……じゃあ!」


 これは長い旅の始まりだ。それぞれが決意を持って旅立つ。あるものは神を殺すため、あるものは約束を果たすため、あるものは妹を救うため、あるものは願いを叶えるため。また、あるものは、ただ平穏な暮らしを求めるため。


 ただ8人の意思だけを片手に、故郷へ帰るための長い旅。



 翠の呼びかけに、花蓮が高らかに宣言した。



「ああ!行ってみようぜ!東北へ!!」


ここまで読んでいただきありがとうございます!作者の青風です!


今話で序章が一旦ひと段落となります。いかがだったでしょうか?初投稿の作品にもかかわらず、見つけて読んでいただきありがとうございます。この先も続く予定ですのでどうぞよろしくお願いします! 



さて、今後の投稿の予定ですが、近いうちに一話か二話、次章との合間のエピソードを投稿した後、次章の投稿となる予定です!



最後になりますが、よければコメントやブックマーク、高評価をお待ちしてます!執筆のモチベーションになりますし、より多くの方に読んでいただける機会になるらしいです!多分!!知らんけど!!!

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