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天使の政治②

そして、天使のもとでの労働が始まった。


天使のもとでの労働は地獄だった。


仕事内容こそ、かつての翠達の仕事と大差ない農作業だったが、その在り方が全く異なっていた。


仕事の時は、一切の休息が許されなかった。昼食の時間以外、一秒たりとも休むことは許されない。サボる事はもちろん、私語の一つさえ許されない。もし、サボっているところが天使たちに見つかったら、厳しい折檻が待っていた。




 運が悪いと、私語の一つで殺されるものもいた。彼らの行動原理は得体が知れなかった。





あの日の和也と結衣のように天使に反旗を翻すものもいた。だが、それも1人残らず始末された。





だが多くの犠牲の結果、得られた情報もあった。



とある日の夜、翠たちは与えられた家屋にいた。その奥で、翠とチキが目立たないように密談していた。たまに見回りに来る天使たちに、気づかれてはいけない。できるだけ小さな声で翠が話す。


「和也さんが天使を刺した時のこと、覚えてるか?刺したのに、全く効かなかった時のこと…。」


翠が言うのは、あの日山の中で中位天使ウールと遭遇した時のことだ。和也と結衣の策略によって、天使の胸を和也の刀で突き刺した時のことだ。


「うん。あれは不思議だった…。血が一滴も流れていなかった。」


「でも、それだけじゃない。天使が、和也さんを………その、……殺して、戻ってきたときの天使の傷跡、見たか…?」


「再生、してたね。」


あの日あの時、和也の攻撃は確かに天使の体を貫通していた。しかし、天使はそれに一切動じなかった。一滴も血を流さないばかりか、その傷は再生していた。


天使には攻撃が効かないばかりか、その傷が再生する。だが、それだけではなかった。翠はそのことに気付いていた。


「それだけじゃない。再生してたのは傷だけじゃない、刺されたはずの服も再生していたんだ。」


「え……それは本当かい?……それは、おかしいよ。」


和也が天使を刺した時、当然天使の服も貫いていた。だが、天使の服も肉体とともに再生していた。


天使が肉体の再生能力を持っていたとしても、服は再生しないはずだ。


「まだ、傷が治るのは理解できなくはないよ。でも、服が治る…?それじゃあ、攻撃したことが無かったことになってるみたいじゃないか……。」


「チキ、お前はこれ、どう思う?なにか教典に天使について書いてなかったか…?」


「いいや、無かったと思うよ。教典に天使の記述はあるけど、そんなに多くはないからね………。」


どうもチキにも思い当たる節はないらしい。


翠が頭を抱えながらこうぼやく。


「攻撃が通じないばかりか再生する…、そんなのどうやって倒せばいいんだろうな…?」


悩む翠にチキが一つ気になったことを聞く。


「刺した天使は中位天使だったけど、下位天使もそうなのかな?」


天使についてもう一つ分かったことがある。それは天使が3つの階位に分けられるということだ。


最も多いのが下位天使、彼らは数の少ない中位天使に代わって、各地を管理している。赤い目の瞳孔が開いた気味の悪い天使だ。翠達の村にも3体の下位天使が常在している。

その次に多いのが、中位天使。下位天使の一つ上の階位の天使だ。翠達を管理するウールも中位天使だ。

そして、最後が上位天使だ。彼らは蒼様直属の天使で、ごく数体しかいないようだ。上位天使が江戸のような各地の要所の支配しているらしい。


この三種の天使には、能力の違いもあるようだ。下位天使は全く話さないが、中位天使は翠達を管理する天使ウールのように普通に話す。どうも性能面でも差があるらしい。


チキが気になっているのは天使の階位で戦闘力も変わるかどうかだ。もしかしたら、下位なら勝ち目もあるかも知れないと考えていた。


そんなチキに翠がこう答える。


「うーん。どうだろうな、下位は中位と比べたら性能は劣るはずだけど…。試したわけじゃないからなあ。」


翠の答えを聞いてチキは何かをひらめいたようだ。


「あ、じゃあ、試してみる?クワを天使の頭に差すとかどう?」


「………………チキ!?」


「天使の脳みそひっかきだして調べ上げたら、天使の能力だけじゃない!!蒼様の御心も知れるかも知れないよ!?」


どうやらチキは天使の戦闘力に興味がある……というよりも、相変わらず、蒼様の考えが知りたいらしい。あれだけ残虐な行いをされてもそこは変わらないようだ。


…だとしても、天使の頭をかき回すのはチキ的には許されるのだろうか。


相変わらずなチキに呆れる翠。


「…………………………………チキ、お前は変わんねえな……。あんな人殺しのどこがいいんだよ。」


「もちろん、人殺しは絶対に許せないし、今の蒼様には一つも共感できないよ。だけど、今の行いは教典と真っ向から反している。どこをとっても矛盾ばかりだ。今の行動と教典、どっちが真実かは分からない。だからこそ蒼様の本心を知らなきゃいけないと思うんだッ!」


チキは相変わらず、蒼様の本心が知りたいようだ。


「そうか。まあ好きにしたらいいんじゃねえか?…つーか、天使の脳割るってよ、絶対天使たち許してくれねえだろ?」


「う~ん。多分どうせ生き返るし、脳みそかき回すくらい許してくれないかな?」

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