最終レース
D-3リーグ最終レースに使用されるコースは、全4レース中最長を誇る。
複雑に入り組んだ空洞内を通るコースで、空洞内は強風が吹き荒れる。奇をてらったギミックは無いが、コース後半に待ち構えるカーブの連続は、D-2以上のリーグに所属するレーサーでも簡単には突破できない。
一部に、これまでのコースには無かった短縮ルートも存在するが、かなりの操作技術が無ければ活用は難しい。
「上位リーグへ進むにふさわしいか?」
そんな問いをぶつけるような、レーサー達を「試す」コースと言える。
本レースに参加するのは、赤居祐善や一条ソウといった、リーグを賑わせたレーサー達。それに加え、配信者チーム「Dan-Live A-Team」から、「魔力欠乏症」により休業していたレーサー・戸貝リイナが参戦する。その選手ラインナップから、上位リーグを超える話題を呼んでいる。
「か、加賀美くん、やっぱり電話に出ないよ」
望見ニナは、スマホを耳に当てながら心配そうに言う。
「そっか」
加賀美レイが、会場に現れない。
一条ソウは、この事態を想定していた。
昨日、あれだけのことがあった。顔を出しづらい、というのは、理解できる。
「整備の時が大変だけど、まあ――」
ソウは、言いながら観客席の方を見上げた。
「雪野も来てるみたいだし、何とかなるだろ」
「そ、そうじゃなくて、あの子大丈夫かな?」
ニナが言う。
「昨日も落ち込んでたし……元気にしてるといいんだけど」
「そっか。そうだよな」
と、ソウ。
「それも気になる。けど、だからってオレらがレースに集中できなかったら、アイツはもっと凹むはずだ」
整備中の機体を眺めながら、ソウは言う。
「子どもじゃないんだ。あいつの体調やメンタルを今気にするのは、やめとこう」
「あ、いたいた!」
ソウ達のところへ、バタバタと走ってくる若い女性が二人。
「一条ソウさんですよね!?」
「え? はい」
ソウはこくりと頷く。
「私、あなたのレースをずっと見てました! 入院中もずっと! 一緒に走れるなんて、ホントに嬉しいです!」
前に進み出た女性が、嬉しそうに話す。
意志の強そうな瞳をした、後ろで縛った赤い髪が特徴的な女性だ。
「今日は、一条さんに勝てるように頑張ります! よろしくお願いしますね!」
「えっと……はい、よろしく」
「リイちゃん、名乗ってないよ」
勢いに戸惑うソウに、女性に指摘をするもう一人。
「あ、すみません!」
赤髪の女性は、ハッとした顔で口を手で覆った。
「ダンライブの戸貝リイナです! 今日は、よろしくお願いします!」
<“D-3リーグ”Fブロック最終レース 出場者一覧(括弧内は所属チーム)>
1 一条ソウ・望見ニナ(チーム望見)
2 戸貝リイナ(Dan-Live A-Team)
3 赤居祐善 (アカガメレーサーズ)
4 佐東陣 (ハバシリBチーム)
5 儀棚友和(千種食器)
6 村道みのり(お茶の間親衛隊)
7 コウテイペンギン (動物園)
8 二船佐恵 (グラビアレーサーズ)
9 メイス(シャドウズ)
10 なんだかなあ(言葉遊びレーサーズ)
11 ドン(お笑いの走り手達)
12 景谷尊号 (ニードルズ)




