雪空の下、先輩を待つ私 〜イルミネーションに照らされて〜
夜空の下、イルミネーションで彩られた街が輝いている。
白や青の光がまるで雪のようだ。幻想的な風景の中を私は一人で立ち尽くしていた。
雪がちらちらと降り出した。気温はおそらく氷点下なのではないだろうかというほどに寒く、全身がガタガタと震える。
何時間こうして待っているのだろう。もう凍えてしまいそうだった。
「……はぁ」
街を歩く恋人たちを恨めしい思いで睨みつけながら、私は呟いた。
せっかくの美しいイルミネーションも、私の心を照らすことはできない。
私はここで待ち合わせをしていた。
彼は私の高校の先輩で、ずっとずっと私に優しくしてくれた人。
今日ここに来てくれたら告白するって決めていた。イルミネーションの前で、写真を撮って一生の思い出にしようって思っていた。
でも全然彼は来なくて、それでも私は待っていた。
……だけど。
『ごめん』
今更になって、遅過ぎるメールが一通、私のスマートフォンを鳴らして、私の夢は砕かれた。
※※※
「やっぱりダメだったみたい」
散々恋して期待して、結果はこのザマだなんて……。
私にとって彼は特別だったけど、彼にとっての私は何でもなかった。それがわかってしまって目から涙がこぼれ落ちる。
輝かしいイルミネーションに涙を見せたくなくて顔を背ける。そのままポロポロと泣いた。
ああ、みっともないな。
せっかくここまで来たのに。ただ待ちぼうけしただけだった。
失恋したと認めたくなくてしばらく立ち尽くしていたが、それで何が変わるものでもない。
どうせならこのまま雪に埋もれてしまいたい。そんな風に思って、座り込む。
今日はクリスマスイブだ。
こんなところに来るんじゃなくて、友達とのクリスマスパーティーにでも出た方が何倍もマシだった。告白するからと決めて、わざわざ友達に頭を下げてまで断ったのに。
虚しさが胸に込み上げ、悲しさと苦しさに嗚咽を漏らしてしまう。
背後の道を歩くカップルたちがこちらを変な目で見ているのがわかった。
「見るなら見ればいい。いつかあなたたちだってどうせ裏切られるんだわ」
呪いのような言葉をぶつけて、また泣く。
その時、パシャッと写真を撮るような音がした。
見てくるだけじゃなくて写真まで撮り始めたらしい。
惨め。惨めだ。イルミネーションの灯りのせいで私の姿は誰からも丸見え。モミの木の下でうずくまっている赤いコートの哀れな女が。
「なんだ、つまんないな。もっと驚くと思ったのに」
「それくらいで驚かないわよ。……!?」
シャッター音には驚かなかったが、振り返った先に立っていた男を見て私は驚きに目を見開いた。
ニヤニヤと笑って立っている少年。それはここにいないはずの人だったから。
※※※
「おっちょこちょいだなぁ、お前は。『ごめん』だけでフラれたって決めつけるってどれだけドジなんだよ」
「勘違いするでしょう、普通! 先輩は意地悪なんです!」
電車が混んでいてここに来るのが遅れただけというだけの先輩。
『ごめん』が『遅れる。ごめん』という意味だったなんて、思いもよらなかった。というかあのタイミングでフラれたと考えない方がおかしいと思う。責任を取ってほしい。
泣き顔を先輩の胸に押し付けて泣いて、先輩に苦笑されて。
勘違いして泣きまくった馬鹿な自分が恥ずかしい。恥ずかしいけど、嬉しかった。
「先輩、好きです。ずっと前から……とってもとっても好きでした」
「知ってた」
「お願いします。私と、付き合ってください」
返事はなかった。
ただ、その代わりに再びパシャッという撮影の音がし、先輩のスマホの画面に目が真っ赤な私とその横に立つ先輩の自撮り写真が浮かんだ。
雪がちらちら舞っている。
私たちを照らすイルミネーションはどこまでも綺麗だった。