08 旅の友
全てを語った。
生い立ち、里での暮らし、職場での出来事、依頼と任務、裏切り、逃亡、男との出会い。
途中で泣いたり怒ったりしちゃったけど、なぜかこの人の前では自分を素直にさらけ出すことが出来た。
感情を全く見せずに聞いてくれたことが不思議な安心感に繋がったのかも知れない。
「で、これからどうするわけ」
「分からない」
「何それ、あんなにいっぱい話すことあったのに先のことは何も考えてなかったんだ」
突然溢れ出してきたいろいろな感情を堪えることが出来ずに、
私は、泣いた。
思い切り泣けてようやく気分が落ち着いて、あの人に目を向けたら、少し驚いた。
少し、おろおろして見える。
自分の話のどこかにこの鈍感男の感情を動かすものがあったのか、
それともただ単に女の涙に弱いのか。
言い訳するように話し始める男。
「自慢じゃないけど僕はすごく弱いんだ。 君を追っかけてくる連中を何とかしてくれるなんて思わないで欲しいな」
確かに弱そうだ。
修練を重ねてきた私じゃなくても、それこそこの間私を助けてくれた新人冒険者の子にもあっさりと負けそうだ。
「こんな山奥までどうやって来たの」
「さっき君が言ったじゃないか、気配が無いって」
「そんなの有り得ない」
信じられないという気持ちが半分、もしかしたらというより気持ちが半分。
いかに気配が無いとはいえ、それだけで何とかなるほど冒険者生活は甘いものでは無い。
しかし、私の自慢の気配探索を無力に出来ることを否定するのは、私自身の能力の否定でもある。
「悪かったね有り得なくて。 僕は気配が無いんで何かと争わなくてすむからどこへだって行けるし、誰かと戦ったことも一度だって無いんだ」
それまでの無感情とは少し違う、自信を感じさせる言葉。
本当なんだ。
「すごい……」
「はいはいどうも。 お褒めに預かって光栄ですけど僕が君のために何か出来るなんて期待しないで欲しいな」
感動した気持ちを逆撫でするようなお返事。
なぜか、この鈍感男を無性に困らせてみたくなった。
「一緒について行っちゃ駄目かしら」
「分かったよ。 君がやりたいようにすればいいさ」
「さっきも言ったように僕はすごく弱いから、君が強盗しようが命を狙おうが僕には逆らいようが無いんだからね」
「そんな事はしないわ」
「じゃ、ひとつだけ約束してくれるかな」
「出来るだけお互いのことには干渉しない」
「それならついて来ても良いよ」
「これからよろしくね」
「はいはい、こちらこそよろしく」
こうして、私の旅はひとり旅ではなくなった。
この人がいつまで私といてくれるか知らないけどね。