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03 生きる


 目覚めた時、不思議と穏やかな心持ちだった。


 任務失敗の悔しさも、裏切られたことへの怒りも、あの槍使いへの恐怖も、何も無かった。



 小鳥のさえずり、うららかな日差しの温もり、


 私は今、生きている。


 生き延びたことへの感謝が、身体に染み渡っていく。



 ふと、男の声がすることに気付く。


 しきりに私に向かって呼びかける声。


 目を開けると、年若い男の子の顔が近くにあった。



 冒険者になって初めての単独でのクエスト。


 薬草採取に来た男の子は、木影に倒れていた私を見つけた。


 私に手を触れぬよう苦労しながら懸命に介護してくれたらしい。


 

 男の子の一生懸命な話を聞きながら、自身の身体に異常が無いかチェックする。


 問題無いことを確認、男の子に礼を述べながら何か感謝の品でも渡そうかと服を探った時、



 無い。



 一族最強の証しの戦闘服どころか、肌着下着までもが、無い。


 ちゃんと冒険者服に身を包んでいるとはいえ、身体を動かすたびに感じる違和感。


 羞恥にうつむく私を、不思議そうに眺める男の子。



 礼をしたいが持ち合わせが無いことを告げて、男の子の連絡先を聞く。


 目立たぬように街へと入り、今自分がやらねばならないことを考える。


 任務失敗・裏切りへの報復・里の対応。


 様々な思いが脳裏を駆け巡るが、


 心の奥底から湧き上がる思い。



 必ず、生き延びる。



 そして、胸の奥に灯るもうひとつの炎。



 おのれ槍使い、この屈辱は生涯忘れん。



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