12 無様
無様だ。
自身の修練の全てを繰り出すも力及ばず、
もはや自力で立ち上がることすら出来ない。
何より悔しいのは、
私がまだ生きているということだ。
槍使いは余裕の表情で私を見下ろしている。
渾身の技が届かぬどころか、
不殺という手加減を受け入れねばならない屈辱に、
あの時と同じ言葉を吐いてしまった。
「くっ、殺せ」
絞り出すような私の言葉に、
さすがの槍使いも表情を変えた。
早くとどめをさすが良いと自暴自棄の私を、
なぜか槍使いの仲間たちが介抱しだした。
なぜ、こんな私にこの娘らはこれほどまでに優しくしてくれるのだろう。
そっぽを向いてる槍使いに構わず、
真摯に接してくれる三人に、
無礼を詫びる前に事の経緯を話してしまった。
「モノカ、それはいくら何でも酷すぎますよ」
ノルシェと名乗った金髪の騎士は、
まるで我が身に起こった事のごとく怒りに身を震わせている。
「それはちょっと擁護できないですね」
呆れたように槍使いを見据える白鎧の乙女はアイネと呼ばれている。
あの無双の槍使いがアイネさんの咎めるような目線にうつむいてしまった。
「お母さん、ひどいよ」
ちょっと待て、私よりも遥かに歳下に見える槍使いがマクラというこの幼女の母だと言うのか?
あの異常な殺気はどこへやら、マクラちゃんの声に槍使いはとても狼狽している。
叱られた子供のように縮こまってしまった槍使いは、マクラちゃんとどっちが母親なのか分からない状態。
止まらない三人からの痛烈な非難の声、
槍使いが自身の『収納』からバッグを取り出した。
ようやく立ち上がれた私に渋々といった様子でそのバッグを手渡すと、
槍使いは、
土下座した。