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01 証し

『リヴァイス 04.5A 魔物調査員と厄介な事情』の別視点の物語です。


 お楽しみいただければ幸いです。



 初めは順風満帆な人生だったと思う。


 生まれは隠れ里。


 集うは『くのいち』と呼ばれる隠密集団。


 隠密を生業とする女性たちの訓練施設がいつしか里と呼ばれるようになったとか。


 女性隠密の称号であるくのいちの里、もちろんそこに居るのは女のみ。


 年頃になると優秀な子種を外の世界で得て里で出産、男児は捨てられ女児のみが残されて英才教育を受けるのは、年頃になってからの授業で知った話。



 里長の娘としての責任は子供心にも理解出来ていた。


 他の子たちに負けまいと座学も体術も人並以上に取り組んだ甲斐あって、里の皆から認められる存在に成長出来た。



 里で一番の者を、との引き合いがあったと集会場の皆の前で長が言った時、


 自分が指名された誇らしさは格別であった。


 一族に代々伝えられる最強の証したる伝説の戦闘服を賜わった時は栄誉に身が震えた。


 里の皆の賞賛の視線に溺れ自惚れていたとしても、当時の私を責めることは今の私にも出来ない。


 


 就労先は大手民間調査機関。


 某国にある支店に配属された私は、くのいちであることは当然隠して一般業務に勤しむことになる。


 稀に訪れる極秘の依頼こそが真に自分に求められる任務だと、衆目に披露出来ない修練の証しを駆使して完璧に依頼をこなした。



 やがて、ひとりの男性と恋におちた。



 一般業務だけでは無く極秘任務の方でもたびたび顔を合わせるうちに、意識するようになったと思う。


 里での教育で殿方のあしらい方なども当然理解はしていた。


 里始まって以来の才女と呼ばれていたが、所詮は女だらけの里で育ったおぼこ娘に過ぎなかったということなのだろう。



 過酷な任務を共に過ごすうちに、いつしか相愛になったと思っていたのは私だけだった。



 とある任務、依頼達成率の高さからコンビとして組むことが増えていた私たちは、もうひとりの女性を加えた三人一組で重要監視任務に勤しむことになる。


 国の行く末をも左右する任務と聞かされ気合を入れ直した私は、目立たぬ冒険者服の下に最強の証の戦闘服を着て任務に挑んだ。



 薬草採取に勤しむ女冒険者を装い監視対象のテントを付かず離れず見張る。


 いつもの様に完璧にこなしていた私は、いつもと違う違和感に気付く。


 一緒に任務に就いていたふたりの動きがおかしい。


 監視任務の教本を思い出して戦慄する。


 あのふたりが取っている行動は監視では無い、全滅を避けるためにひとりを犠牲にして撤退する際の動き!




 気付いた時すでに身体の自由は失われ、なぜという感情が薄れていくことを自覚すら出来なくなっていく自分がただただ情けなかった。



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