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第三十九話 似合ってるよ

 それから、愛奈萌と今日の流れを再確認すること十分。


 待ち合わせ時間の十五分前だというのに、通りの向こうから車椅子に乗った知佳が人込みをかき分けながらやってきた。


 いや、人混みが勝手に知佳を避けているだけか。


 まるで海を分断させている大魔法使いみたいだなと思う。


 その光景を主観で見ている知佳は、いったいどんな感情を抱いているのだろうと思うと、少し胸が痛んだ。


「ごめん。待たせちゃった?」


 知佳が胸の前で手を合わせる。本当は俺が家まで迎えに行きたかったが、知佳自身に、


『これくらい大丈夫。待ち合わせしたいの』


 と断られてしまった。


『たしかに、その方が遊びにいくっぽいよな』


 そのときの俺はそんな言葉を返したと思う。


 知佳の車椅子は自動だし、あまり気を遣いすぎるのもよくないと思い、彼女のやりたいという気持ちを優先させることにしたのだ。


「全然。ってか私たちがはやく来過ぎただけだから」

「そうそう。俺も知佳を待たせたくなくて、そしたらはやく来すぎて」


 その瞬間、俺のお尻に激痛が走る。


 愛奈萌が知佳に見えないようにこっそりと俺の尻をつねったのだ。


 この教官、メッチャスパルタなんですけどぉ。


 いま褒めようと思ったところですから!


「その服、初めて見た。か、か、可愛いな」


 たどたどしくなってしまったが、なんとか言えた。


 知佳は清純さを現したような白のトップスに、少しだけふわふわしている黒の膝丈スカートという服装だ。頭には淡い赤色のベレー帽。太ももの上には黒のバッグを置いている。


 控えめに言って、駅前を歩いている女子の中でダントツに可愛い。


「そ、そうかな? あ、ありがとう」


 知佳は目線を横にずらしてから、膝の上の鞄をぎゅっと握りしめた。


 口を開いて、閉じて、また開いて、やっぱり閉じる。


 なんだよ? と俺が言おうとした瞬間、揺れている瞳で俺を真っすぐ見て、


「辰馬も、シンプルで格好いいね」


 とお返しに俺の服装を褒めてくれた。


 いろいろごちゃごちゃするよりそういうシンプルなのがいいのよと、姉に言われて選んだ黒のジャケットとベージュのチノパン。


 高評価をもらえてよかったぁああ!


 身体が尋常じゃなく熱いっ!


 ボイスレコーダー用意しとくんだったぁ!


「……ん?」


 その瞬間、俺は背後から視線を感じて振り返った。


 しかし、そこには俺たちのことなど気にも留めずに歩いている人たちしかいない。気のせいか? でも確かに誰かに見られていたような……。


「どうしたの? 辰馬?」


 俺のジャケットの袖口を引っ張りながら、知佳がこくりと首を傾げた。


 ああ、この力加減、最高だなぁ。


 右肩が形状記憶合金で、この凹み方を記憶できていればどんなに幸せだったか。


「ん、いや、なんでもないよ」


 そう答えた後でもう一度振り返ってみたが、やはりそこには俺たちに無関心な人しかいなかった。


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