セミの恩返し
久々の童話ですので、初投稿ってことで宜しいですか?(ダメです)
(*´д`*)
昔々、田んぼアートが山ほど出来そうな村に一人の青年がおりました。
ある日、青年が山へ向かい野良仕事をしていると、セミの幼虫が地面から出て来ました。
「これから脱皮かな? どれ、潰してしまわぬように、木に移してやろう」
青年は幼虫を近くの木へとやりました。
セミは木に止まり、やがて動かなくなりました。
「どれ、帰るか……」
夕方、野良仕事を終えた青年は、助けたセミの幼虫が気になり木を見ましたが、既に脱皮は終わっており、成虫の姿はありませんでした。
「お、無事に飛んでったかな」
青年もクワを担いで家へ向かいました。
帰り道、鶴が罠に掛かっていたので夜は鍋にしました。
──コンコン
夜更けに青年は戸を叩く音で目が覚めました。
「どうなされたかな?」
「夜更けにすみません。訳あって行き場を失いさまよう者でございます。どうか一週間程泊めて頂けませんでしょうか?」
若い、女の声でした。
オッサンなら無言で鶴の骨を投げているところでありましたが、幸い青年はしたたかだったので、その娘の顔を一目見てやろうと、戸を開けました。
──ガラッ
「──うわぁ!!」
そこには巨大なセミが立っておりました。
青年はびっくらこいて、思わず腰を抜かしてしまいます。
「ば、バケモノじゃあ!!」
「路銀あります」
「あ、どうぞどうぞ」
青年はしたたかだったので、見た目が何であろうが気にすることを止めました。
二人の生活が始まりました。
セミ娘は、とにかくうるさく、昼間は大声量で鳴き続けるので、青年はずっと山で仕事をせざるを得なく、夜になると静かになるので、ようやく帰って体を休めます。
「マジ疲れた……」
「お疲れ様ですミーンミン」
「腹減った……」
「ご飯が出来てますツクツクホーシ」
「風呂風呂……」
「沸いておりますドゥパッドゥドゥパァ」
「最後なに?」
「ボイパです」
セミの姿をした娘は、見た目と声量こそアレでしたが、三日もあれば慣れてしまい、普通に生活出来るようになりました。
「何飲んでるの?」
「樹液です」
「オンザロックで樹液飲むヤツ初めて見たよ」
「流行なんです」
そんな不思議な生活も早六日目。
セミ娘の様子が何処か変です。
「どうした? 何だか元気が無いぞ?」
「明日死にますので」
「えっ?」
「正確には明日の朝には死んでますので」
セミ娘に寿命が来たのです。
青年は呆気に取られ、言葉がでませんでした。
「さ、最後にやり残した事があれば何でも行ってくれ!」
セミ娘は静かにこたえました。
「私はセミですから、最後まで鳴かせてください」
セミ娘は、か弱いながらも大声量で鳴き始めました。
「じゃあ、うるさいから仕事行ってくる」
青年はドライでした。
夜、山から戻ると……セミ娘は死んでいました。
「朝まで持たなかったのかよ……」
青年がゆっくりとひっくり返ったセミ娘に近寄ります。
──ジジッ!!
「のわっっっっ!!!!」
死んだと思っていたセミ娘が急に動き、青年は魂が抜けるほどにびっくらこきました。
「セミ……」
最後に何か出来ないかと、青年はパソコンでセミについて調べ始めました。最新式の稲ファイバーで通信速度も完璧です。
【鳴くのはオスだけ】
青年は我が目を疑いました。
【鳴くのはオスだけ】
青年はセミ娘を蹴飛ばして、家から追い出しました。
【鳴くのはオスだけ】
ついでに鶴の骨を投げつけ、パソコンを閉じて眠りにつきました。