〜雨宮隼人〜
雨宮隼人はごくごく平凡な普通の中学三年生の男児で...というのは異世界召喚系ではよくあるパターンだが、雨宮隼人はそうではない。
雨宮隼人は普通の公立中学校の三年生だったがいわゆる「何でも出来ちゃう人」だった。
サッカー部のキャプテンを務めており、県のトレセンに選ばれている。チームも全国大会出場間違いなしと言われている。運動能力抜群で体力テストは全項目満点の学年1位だ。
勉学の面でも抜群の才能を発揮しており、塾にも行かず、部活やサッカーのクラブチームの練習で勉強時間をまともに取れないのに、テストは毎回学年1位。その上、生徒会長も務めている。
また、絵画、書道、彫刻など芸術的な分野の才能もあり、コンクールに出しては、最優秀賞を総ナメしている。
身長は166cmとやや小さいが、顔は中の上から上の下くらいといったところだ。
これだけ何でもできるのなら、男子からも女子からも人気で、誰もが憧れる楽しい青春を送っていると、思うだろうが実はそうでもない、何でも出来すぎて逆に浮いてしまうのだ。キャプテンも生徒会長も「安定の雨宮だろ」「雨宮お前立候補するよな?」という感じで勢いでさせられていた。
小学生まではよく友達と休日に遊んでいたが、中学に入ってからは1度も遊んでいない。
ぼっちだった。
家庭環境もよくなかった。5年前に父が亡くなってしまったのだ。それからは、金銭的に厳しい生活が続いた。母は早朝から夜中まで仕事に明け暮れた。「全てはハヤトの為に」と言うものだから、全部全部頑張った。サッカーをさせて貰っているのだからと頑張らざるをえなかった。食事はいつもカップヌードルかコンビニのおにぎりだった。父が亡くなってから母と2人で食事することは1度もなかった。
そんな現実世界が楽しくなかった。自分の心身を犠牲にしてまでかけられる期待に押し潰されそうで、苦しかった。そんな孤独が嫌だった。
そんな中、訪れた転機。異世界召喚だ。
ようやく苦しみから解放されること。チート能力を駆使して魔物を倒したりする、夢の異世界生活を期待して胸を高鳴らせたのは一瞬だった。
━━━どうしてかって?そりゃあもちろん召喚されたはいいものの奴隷だったからに決まってんだろ!!
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