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小品

蜘蛛の糸巻き

作者: 星野☆明美

ゼクター星に寄る用事があって、宇宙船の針路を変えた。

「こんな辺境の星になんの用なのかね?」

「ゼクター星人が編む編み物が密かなブームなんですよ」

「ぞっとしないな。知ってるかね?ゼクター星人は八本腕」

「タコですか?」

「蜘蛛だよ。彼らの出す特殊な糸でぐるぐる巻きにされないうちに針路を戻した方がよくないかね?」

船長はあまり乗り気ではなかった。←ここんとこ、重要!

しかし乗組員も乗っていた商人の客も聞く耳持たなかった。

寒村に降り立つと、うら若い女性の歌声が響いていた。

「いいね、いいね!なんかいい感じ」

乗組員たちが歌声のする窓を覗くと、腕こそ八本あれども若い乙女たちが虹色の糸を金銀の針でせっせと編んでいる。

「そのまま、そのまま。…商売に来たんだ」

そう言うと、乙女たちはあからさまにホッとして微笑んだ。

「長老の家に行ってください」

村一番の屋敷に一行は向かった。

「商品を仕入れに来ました」

わさわさと白髪の生えた老人が虹色の糸を紡いでいた。

「対価は?」

「金品なら」

「そんなものはいらん!」

ガサガサガサ。八本腕で這いつくばって近寄ってくる。

「『腕』をかせ」

「腕?」

バキバキボキン。

ぎゃああああああ。

乗組員の一人が両腕を引きちぎられた。

腕を機械に投入すると、いくつかの工程を経て虹色の糸が出来てきた。

「早く次!」

「ちょっちょっと待ってください」

みんなは最初に腕をもがれた男を再生槽に入れて治療しながら、クローン技術で腕を生成した。

「何事にも対価と犠牲はつきものでな」

「これはおおごとだぞ。糸の原料が何か知れ渡ったらみんな嫌がってとんでもないって言い出すだろう」

「もともとは民話がもとになっておってな」

「え?」

「貧しい一家を支えた二本腕の女の物語じゃ」

「それでそれで?」

長老の話に夢中になって、彼らは蜘蛛の巣の奥底へ招き入れられた。


「いつまでもかえってこん」

船長が宇宙船でまんじりともせず待っていた。

ある時間が経過すると、船長は宇宙船を出発させた。

宇宙警察には通報済だった。

前回も、こういうことがあったのだ。船長は己の用心深さに安堵のため息をついた。


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