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クラスメイトとPTを?☆9


 午後の課外授業はヨランダPTと一緒だ。


 ヨランダはPTリーダーであり生徒会役員だ。

 聖属性なので引率の先生は教会から派遣されているルイーザ先生だ。

 すべてが特別扱いな感じだ。

 聖属性はもう1人男子生徒がいるが、魔力は女性の方が高いので男子生徒より断然女子生徒が特別扱いになる。


 聖属性の男子生徒オズワルドも生徒会役員でPTリーダーだが、引率の先生はエンマ副校長で氷属性だ。

 十分特別扱いなのだが、聖属性の女子生徒と比べると落ちた感じがしてしまう。


 肩で切り揃えられたシルバーグレーの髪をなびかせて、アリーチェに近づいて来たヨランダ。

 色白できつめの顔立ちのクールな美人だ。


「アリーチェさんだったかしら?私のPTメンバーを教育して頂ければいいのよ、ヨロシクね」


 上から目線どころじゃない、天狗になり過ぎて鼻の穴が丸見えだ。

 まぁこれだけ特別扱いされたら当然だろう。


(こんなタカビーキャラになっちゃって……)


「んっ?あぁヨランダさんね、よろしくね」


 そこにヨランダの引率をしているルイーザ先生が話しに入ってきた。


「あなたがアリーチェ?少し気安いわよ、ヨランダさんに怪我でもあったら、あなたの責任は重いからね。即退学と親共々極刑だから気をつけなさい!」


 聖属性以外は眼中になく、ましてや平民など奴隷としか思ってないルイーザは、平民のアリーチェが魔法科にいる事を快く思っていなかった。


(また面倒くさいのが来たわね……)


 アリーチェは色々考えてから返事をした。


「はい分かりました。ルイーザ先生に極刑だと言われた事を覚えておきます」


 ルイーザ先生にペコッとお辞儀をして、ヨランダに向き直る。


「と言う事で、ヨランダが怪我をするだけでアリーチェもパパもママも極刑みたいだから、よろしくねヨランダ!」


「えっ?……」


 まだ8才のヨランダに3人の命は重かったようで、焦って固まっていた。


 慌てるルイーザ。


「なっ何を言ってるの!」


 アリーチェはチラリとルイーザ先生を見た。


「今先生がそう仰いましたよね?嘘をついたのですか?」


 ルイーザはアリーチェを忌々しそうに睨む。


「きょっ、極刑はものの例えで、本当に極刑と言う訳ではないわ、そう言う覚悟でやりなさいって事よ!まったく!」


「聖職者が人に誤解を招く様な発言はどうかと思いますよ………しっかりして下さいね」


「このガキッ!」


 ステラ先生が間に入る。


「ルイーザ先生それくらいにして下さるかしら?」


「このクソガキが生意気だから………」


 苦笑いしながらステラ先生がかぶせ気味に言う。


「ルイーザ先生、言葉が汚くなってますよ、それに今のは私から見てもアリーチェの言っている事が正しいと思います。それにアリーチェはれっきとした魔法科の生徒です。その娘に対しての極刑発言は、教皇様に報告する必要がありそうですね。今度お会いするのでその時にでも話しますか」


「えっいやっ、今のはちょっとした冗談ですから………」


「冗談には聞こえませんでしたよ?今回は大目に見ますが、この様な発言を今後もなさる様でしたら、今回の事も含めて教会に報告いたします。よろしいですねルイーザ先生」


「はい………気をつけます」


 アリーチェを忌々しそうに睨みつけるルイーザ。


「アリーチェさんもですよ、あまり先生を困らせないで頂戴ね」


 アリーチェを叱る目が優しかった。

 ステラ先生もルイーザ先生の態度を良くは思ってなかったようだ。


「はい、すいませんでした」


 ヨランダは、怒ったり謝ったりと今まで見た事もないルイーザを見て呆然としていた。

 そんなヨランダにアリーチェは言った。


「ヨランダさん、このPTはあなたがしっかりしないと良いPTにはならないからね、頑張ってね」


 ヨランダはアリーチェを見て顔をしかめた。




  *  *  *  *  *




 森に入る前に、アリーチェはヨランダPT全員に話しをした。


「前回の話しを聞く限り、魔物のターゲットがヨランダさんに行ってしまうのが問題よね」


 盾役の子が答える。


「あぁ、魔物に攻撃をしてるんだが、すぐにヨランダさんに向いてしまうんだ」


「そう、ヨランダさんは回復魔法だけよね、どれくらい使ってるの?」


「みんなが魔物とぶつかったらかしら………痛いでしょ?」


「リーダーのヨランダさんは前回のマルティーナPTの戦闘を見てどうだった?」


「どうって、盾役の子が何回も魔物とぶつかってて、痛そうだったわ、何で早く回復してあげないのかしらと思ってたわ」


 アリーチェは、ポカンと口を開けたまま止まっていた。


(痛いのが苦手だったら冒険者は無理でしょ。教会職員だと冒険者をそんなにやる必要はないのか………いやいやレベル上げの為に戦う必要があるわ)


「分かったわ、決定的な原因はヨランダさんの回復しすぎね」


「痛がってるのを回復して何が悪いのよ!」


「悪いわね。回復魔法はヘイトを稼ぐから、すぐに回復したら魔物がヨランダさんに向かって当然だし、MPの無駄使いだわ」


「アリーチェさんは痛がってるのを放っておくの?」


「前衛は案外痛みには耐えられるのよ?ヨランダさんを守る為耐えて頑張ってると思ったら良いんじゃない?」


「わっ私を守る為に耐えてる?…………」


 ゾクッ!


「私の為に喜んで耐える………」


 ゾクゾクッ!


「そうだったのね、分かったわ………」


 口元に笑みを浮かべ納得するヨランダ。


「勿論、回復が遅れるのも危ないから、アリーチェの全てを数値化したルールを説明するね、盾役は男の子だからLV1でHPは23くらい、スライムの攻撃を盾の上から受けるとダメージ2、つまり11回盾で受けても大丈夫って事、盾で受けるのを失敗するとダメージ8だから、まあ余裕を持って盾で4回攻撃を受けたら回復で良いんじゃないかしら。ヨランダさんの魔力はLV1でMP21、回復魔法は消費MP5だから4回でMPが切れるわ。あまり連発も気をつけてね」


「「「「…………」」」」


 数値なんてそんな話しは聞いた事が無いので、みんな呆然としていた。


「質問は無いようなので森に入りましょうか、最初はマルティーナたちの戦いを自分の役割を考えながら見ててね、それじゃあ出発!」


 ヨランダPTメンバーと引率のルイーザ先生は、数値化の話しにモヤモヤしながらも付いて行った。


 その後、マルティーナPTのスライム戦で攻撃を受ける盾役をみて目を輝かせるヨランダ。

 そしてスライム戦が終わって喜んでいるマルティーナたち。


 それを見てルイーザ先生が呟く。


「まぁ!スライムに勝ったくらいであんなに喜んじゃって大したことないのね」



「やった、上がったぞ!」

「私もよ!」

「上がるとこんな感覚なのね」

「力が湧いてくるわ」


 アリーチェがみんなに近づいた。


「おめでとう、HPもMPも増えて身体能力も少し上がったから、戦闘に余裕が出来ると思うわ。でも気を引き締めてね」


「「「「はいっ!」」」」


 そのやり取りを疑問に思ったルイーザ。


「んっ?スライムに勝っておめでとうってなんなの?」


 それにマルティーナが答える。

「はい、全員レベル2にアッブしましたので、つい喜んでしまいました。次はヨランダさんPTの戦闘ですよね、行きましょうか」


「「「「「レベルアップッ!?」」」」」


 ルイーザ先生もヨランダPTメンバーも驚いた。


「まだ課外授業2回目よ、もうレベルアップ?この平民PTなんなのっ」


 アリーチェ以外はみんな貴族なのだがルイーザはそこまで頭が回らなかった。



 スライムとの戦闘をするヨランダPT。

 ヨランダがすぐに回復をしなくなった事と、マルティーナPTの戦闘やレベルアップを見て、やる気の出た前衛のおかげで、危なげなくスライムに勝つ事が出来た。


「「「「やりましたアリーチェ師匠!」」」」


 勝った第一声がアリーチェなの?と思いつつも。


「はいみんなよく頑張りました。ヨランダさんもよく我慢しました」


「ええ、私の為に耐える者を見てるのもいいものね………フフッ」


 少し危ない笑みをこぼすヨランダだった。


「じゃあスライムの魔石も忘れずに取ってから帰りましょうか」


「「「「はいっ!アリーチェ師匠!」」」」


 同級生なのにと思いながらも、そのままにするアリーチェ。


 みんなの集合場所に向かう途中アリーチェは、毎度のように不自然に脇道に逸れてタヌッキーと遭遇する。

 レベルアップしたマルティーナたちは、ギリギリだった前回よりも魔法を1回ずつ少なく勝つ事が出来た。

 立ち回りにも余裕が出てきてメンバーが頼もしくなってきた。



 集合場所に着く。


「「「「アリーチェ師匠ありがとうございましたっ!」」」」


 ヨランダPTの大きな声が響いた。


「あっ師匠ではないから…………頑張ったのはみんなだからね、自信を持ってこれからも頑張ってね」


「「「「はいっ頑張ります!」」」」


 微笑むアリーチェだった。




 その後、引率の先生による報告会では、コズモPTとヨランダPTが良くなった事でアリーチェの評価は上がり、マルティーナPTのレベルが上がった事を知ったみんなは大騒ぎ。

 アリーチェを担任にと言う生徒まで出る始末だった。勿論その生徒の中にコズモも入っている。

 過去に課外授業2日目でレベルアップした生徒もいるのだが、現在の教皇や国王が生徒の頃の話しだ。


 マルティーナたちはそれ程の実力があって出来た事ではなく、アリーチェのおかげであると重々承知していた。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


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