クラスメイトとPTを?☆8
アリーチェたち生徒は課外授業の為に、街の西門を出て南の森に向かって歩いている。
今日の課外授業でアリーチェはコズモPTと一緒だ。
コズモたちと一緒に歩きながらPTでの戦い方についてアリーチェは話しをし始めた。
「コズモ君、怒らないで聞いて欲しいんだけど……」
「君なんてなしでコズモいいです。それに怒ったりしないから大丈夫です」
「あぁ、はい、じゃあコズモも、私に敬語じゃなくていいよ。でね、見てみないと分からないけどこの前の戦いの話しを聞く限りコズモのPTがうまくいかないのはコズモの所為だと思うの。仲間を大切に思わない所と、自分が弱いと認識してない所が良くないわ」
弱いと言われてコズモは直ぐに怒りだした。
「なんだと!俺が弱いだとっ!」
その怒鳴る声にアリーチェも他のPTメンバーもびっくりする。
「違うのコズモ、冷静に話しを……」
「なんで俺が弱いんだよ!」
直ぐに怒って話しを聞かないコズモに、呆れるアリーチェ。
「はぁ~、もう辞めたわ。アリーチェはマルティーナたちのPTに戻るから好きにして」
「えっ?あっごめん、いや、すいません。もう怒ったりしないから許して」
「どうだか………コズモの直ぐカッとなる所は良くないわ。自分が少し強くなったら態度を変えるタイプでしょ!」
「今怒ったのはアリーチェが俺を弱いなんて言うからさ、それと俺は強くなっても変わったりしないから辞めないでくれ」
「話しの途中だし弱いと言われた程度でカッとするなんて良くないの。………これが最後よ。次に怒ったり話しを聞かなかったら二度とコズモとは話しをしないからね!あなたに教えるメリットなんてなにもないのにやってるのよ!強くなりたくて頭を下げた気持ちはどうしたの!その性格を直さないとあなたは強くなれない、その前に必ず死ぬわ」
コズモはアリーチェを睨んでいた。
「なにっ………」
「もっとも、今のあなたじゃPTを組んでくれる人もいないでしょうね」
コズモは悔しそうに歯を食いしばりながらも返事をした。
「………分かった、頑張ってみるよ」
「あなたの場合、頑張ってみるだけじゃダメね、その性格を変えるしかないのよ」
「………ああ分かった、性格を変えるよ」
「……………一つ変更するわ、コズモはこれからずっとアリーチェに敬語を使いなさい」
自分を変えるのは相当の覚悟がないと難しい。
アリーチェは敬語を使わせる事でその覚悟を確認しようとした。
「……………」
いくら子供とは言え貴族が平民に敬語を使う事などこの世界では考えられない事だ。
コズモは頭にきていたが、怒らないように頭の中で、憧れの父のようになる為だ、騎士団の団長になる為だ、どんな魔物にも負けないくらい強くなる為だと何度も何度も繰り返し自分に言い聞かせた。
コズモはそれで何とか我慢した。
「…………分かりました。今後は敬語を使います」
歯を食いしばりながらも敬語を使うコズモを見てアリーチェは静かに頷いた。
「いいでしょう。強くなる為にその覚悟を忘れないようにしなさい」
「はい………アリーチェ師匠……」
アリーチェは師匠と言われてどうしようかと悩んだが、今さらそこを呼び捨てでとは言えなかったのでスルーした。
「まあいいわ。それで最初の話しの続きをするわね。コズモは弱いって言われてる事を何か勘違いしてるみたいだけど、ここにいる生徒たちみんな弱いわ。ステラ先生は強いけどSランクの魔物と比べると弱いわよね。でもステラ先生がSランクの魔物と戦うとなったらそう簡単には負けないだろうし多分勝つと思う。なぜなら自分に何が出来て何が出来ないのかを知っていて、勝つための方法を考えて、勝つための仲間を集めて、最後はきっと勝つと思うから………やっぱりステラ先生は強いわね」
じっと話しを聞いているコズモ。
「コズモは今Dランクのモーウルフに勝てると思う?コンベアーに勝てると思う?」
コズモは小さな声で答える。
「……いえ………思いません」
「そこは分かるのね」
アリーチェは少し微笑んでから話しを続けた。
「街にいるCランクの冒険者なら勝てるわよね、ステラ先生も1人で余裕で勝てると思うわ……コズモは強いかしら?」
悔しそうにするコズモ。
「…………いえ」
「そう、だからこれから強くなっていくの肉体的にも精神的にもね。日々の武術や魔法の練習を通して心も身体も強くしていかなきゃ。そしてその為の仲間が今そばにいるPTよ、仲間を大切しなさい。今日のみんなの課題は仲間を大切に思う事にします」
「「「「……………」」」」
コズモもPTメンバーも黙ったまま頷いた。
アリーチェからPTでの連携の話しが続く。
「PTでの役割や連携は、1人では倒せない魔物と戦う為に必要よ。シンプルな連携でいくとそうね………」
アリーチェから見て、横に居るコズモの反対側に居るメンバーに、ゆっくりコズモの顔にパンチを繰り出してもらった。
当然コズモはそのパンチを見て手で掴む。
「これに何か意味が?」
と言いながらアリーチェの方に顔を向けようとしたコズモの頬に、アリーチェの人差し指がぷにゅっと当たった。
「えっ?何ふざけて……」
「連携のひとつよ、アリーチェの指が剣だったらコズモは終わりだったわね。相手の注意を引きつけてもらっての攻撃、これを魔物にやるの。色々な連携を出来るように仲間と話し合った方がいいわ」
「…………分かりました」
「もっと細かく言うと、コズモPTの属性は、火・土・風・水だったわよね。基本的に戦闘中の位置取りは、最初はみんな盾役の後ろかな。盾役が魔物を引きつけたら風属性はスピードを生かして背後から攻撃、それで魔物が余所見したらコズモが攻撃、魔物がコズモの方を向いたら魔物の背後に居るメンバーがまた攻撃。魔物の攻撃が盾役に向かなかったら盾役の後ろに避難するのも有りね。そして回復魔法は最初はあまり使わずにある程度魔物の意識が盾役に向いたらかな。勿論非常事態はその限りでから臨機応変にね」
コズモとPTメンバーは真剣に聞いていた。
そうこう話しながら歩いていると目的の南の森に着いた。
生徒たちはそれぞれのPTに分かれて森に入っていった。
アリーチェの提案で、マルティーナPTとコズモPTは一緒に行動する事になった。
マルティーナPTが円陣を組んで、真ん中にそれぞれの武器を重ね合わせる。そしてマルティーナが声をあげる。
「正義のもとに集いし我ら、キューティー・レインボー・フォレスト・シールド!」
重ね合わせていたそれぞれの武器を真上に掲げて叫ぶ、
「「「「ここに見参!」」」」
周りにいた先生もコズモPTも何それといった感じで呆然とみていた。
(えっ………CとかRとかのポーズはないの?…………あっ、アルファベットが無いか)
アリーチェだけ違う意味で呆気にとられていた。
* * * * *
森の中、マルティーナPTが前を進み、アリーチェを挟んで後ろにコズモPT。
「じゃあコズモPTは、マルティーナPTがスライムと戦うのを自分の役割を考えながら見ててね」
コズモから質問が上がる。
「まだ魔物に遭遇してないからスライム以外も考えた方がいいんじゃないですか?」
アリーチェは索敵でもうすぐスライムに遭遇するのが分かっていたので、ついスライムと言ってしまった。
「んっそうね、コズモの言っている事は正しいわ。たとえよたとえ……」
そこで都合良くブルーノの声が響く。
「スライムだっ!アイスアローと共に戦闘を開始する!」
ブルーノのおかげで誤魔化せて、ホッとするアリーチェ。
アリーチェは、マルティーナPTに、スライムの核は攻撃せずに戦う様に指示していたから、直ぐに終わる事は無かったが、危なげなくスライムを倒していた。
それを見ていたコズモPTの目は真剣だった。
「みんなが上手く連携をすれば、コズモPTも同じように勝てるからね」
「「「「はいっ!」」」」
初めてコズモPTみんなの声が揃った。
「うん、じゃあ次はコズモPTの番ね………こっちに進もうか」
アリーチェは真っすぐじゃなく、左の獣道を指した。
その場の引率のステラ先生もエヴァン先生も含め全員が疑問に思ったが、コズモPTはアリーチェに絶対服従の規則があるので素直に従って進んだ。
コズモPTが盾役先頭で進むと、すぐにスライムと遭遇した。
剣を抜いて1歩前に出ようとしたがコズモは踏みとどまり、盾役としての攻撃から戦闘が始まった。
メンバーが風属性の『ウインドフォロー』の魔法を使わずに攻撃しようとして慌てて詠唱を始めたり、コズモが攻撃を優先して防御がおろそかになったりして予定よりもダメージを受けていたが、回復役の練習にもなったし、みんなPTとしての戦いを何か感じたようだ。
連携はちぐはぐだったが何とかスライムに勝つ事が出来た。
「「「「やった~~!」」」」
勝ったと分かってからコズモPTは、今までのギクシャクしていた事など無かったかの様に、みんなでハイタッチしていた。
スライムの魔石を拾ったコズモは、それを回復役に渡した。
回復役は少し笑って、腰にあるバッグに魔石をしまっていた。
PTの人間関係は良くなっていきそうだ。
午前中の戦闘が終わり、集合場所への戻り途中でアリーチェが変な事を言い出した。
「タヌッキーのお腹の攻撃って意外と強力よね…………そうだっ!ちょっとこっちの獣道を行ってみましょ」
あまりにも不自然にわき道を指示してきた。
全員が、はいはいこっちにタヌッキーがいるんでしょと思いながらも言葉にする者は居らず、みんなアリーチェに従って進んだ。
少ししてマルティーナPTは、タヌッキーに遭遇、前回よりもだいぶ落ち着いて倒す事が出来ていた。
コズモPTもそれを見て興奮していた。
* * * * *
集合場所に戻ってきて、アリーチェはコズモPTに終わりの挨拶をした。
「落ち着いて連携すれば、コズモPTも必ずタヌッキーに勝てるから頑張ってね」
「「「「はいっ、ありがとうございましたっ!」」」」
コズモPTの揃った声に周りに響いていた。
午前中の引率の先生の報告会も終わり、食事をしながらマルティーナたちに話しをするアリーチェ。
「それでね、さっきのタヌッキーを倒した時に、誰もレベルが上がった感じは無いのよね?身体が元気になるというか回復する様な感じなんだけど…」
「そんな感じは無かったわね」
「俺も無いな」
「全然」
「いつも通りね」
「そっかぁ、じゃあ次にスライムを倒したら全員レベルが上がるんじゃないかしら」
「「「「えっ、ほんとっ?!」」」」
「ええ、そしてその後も、レベル上げの為に、寄り道して魔物を倒すわよ」
「「「「はいっ!」」」」
アリーチェは荷物持ちだが、PTリーダーっぽかった。
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