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クラスメイトとPTを?☆6


 見学のステラ先生やPTリーダーたちを引き連れて、森の中を進むマルティーナPT。


 ステラ先生に怒られたコズモは、何か言いたそうにしながらも、静かについてきていた。



 獣道を進んだ先で、アリーチェが確認したタヌッキーと遭遇する。


 ブルーノが盾を構えながら叫ぶ。


「タヌッキーがいるぞっ!」


 アリーチェ以外の人たちはみんな、都合良くタヌッキーが現れた事になんか納得のいかない思いを感じつつも言葉にする事はなかった。


 タヌッキーは身構えてこちらを警戒していた。


「アイスアローを打ち込むと共に戦いを開始する」


 そう言ってブルーノは詠唱を始めた。


「大いなる者にたまわりし気高き六花りっかわが意思いしじゅんじて、今ここに具現ぐげんせよ『アイスアロー』!」


 ブルーノのアイスアローがタヌッキーに当たると同時に、戦いが始まった。


 戦いはおおむねアリーチェの想定通りに進んだ。


 タヌッキーのお腹での体当たりは、ブルーノが盾で防いでもHP3のダメージを受けていたので、HP23のブルーノは8回目を受けたらHPが0になってしまうので、少し余裕をみて4回目を受けたらマルティーナに回復魔法詠唱の合図を出した。


 最終的にマルティーナは回復魔法を3回、テレーサとロジータは攻撃魔法4回づつでMPが無くなった所でタヌッキーを倒せた、みんなが全力を出し切った感じで勝てて良かった。

 メンバーの表情は自信に満ち溢れていた。


 ブルーノがぎこちないながらも、タヌッキーの剥ぎ取りを行い、魔石も取りだしていた。



 ステラは生徒たちのレベルが低い内に魔物との戦いで、失敗や苦労をして欲しかった。

 自分の力量を理解し油断もしなくなるからだ。

 レベルが低い魔物の方が命を落とす可能性が少ないのも理由の一つだ。

 しかしマルティーナPTにはその必要が無いと感じられた。


「素晴らしい連携でした。LV1ですが、Fランクの魔物なら確かに問題ないだろうと思います。Fランク上位のタヌッキーを確実に倒せるのですから。前もって魔物の情報をキチンと調べている事や、自分たちが出来る事出来ない事も分かっているようですね」


「「「「ありがとうございます!」」」」


 コズモや他のPTリーダーたちは何も言えず、自分たちと何が違うのか考えながらマルティーナたちを見つめていた。


 今日の課外授業が終わり、学校まで戻る道中、マルティーナPTはにこやかに話しながら歩き、それとは対称的に他の生徒たちは無言だった。




  *  *  *  *  *




 教室に戻ってから、PTごとに反省会をしている中で、ブルーノは自分のPTメンバーに謝罪していた。

 他のリーダーたちもマルティーナPTの影響を受けて、考えを改めているようだ。


 教壇に立つステラ先生が今日の授業を終わりにする。


「では今日の事はみんなにはとても勉強になったと思います。これからもPTで頑張って下さいね。では今日はこれで」


 突然コズモが立ち上がった。


「待ってください先生、やっぱりマルティーナPTはずるいです!」


 教室の全員が呆れていた。


 ステラも呆れていた。


「コズモ君は、どうしてそう思うの?」


 教室のみんなは、アホだからだよとか、坊やだからさなどと思っていると……


「だって………5人だから」


 ステラ先生が諭す。


「確かにマルティーナPTは5人だけど、火属性も聖属性もいないし、何よりも4人で戦ってたでしょ?」


「いやっ……そう言う事じゃなくて…………あいつが居るから………アリーチェが居るから勝てたんだ」


 マルティーナPTのメンバーと、戦いを見た先生やPTリーダーたちは、その言葉を聞いてなるほどと思っていた。


「そっか…………コズモ君はちゃんと見ていたようね。でどうしたいの?」


 ステラ先生が優しく聞き返した。


「俺は………強くなりたいからあいつを………いえっアリーチェさんをうちのPTに貸して欲しいです。アリーチェさんを貸して下さい!お願いします!」


 あの常に上から目線のコズモが頭を下げてお願いをした。



 ステラは何が良いのか考えた。

 魔物や魔法の事、PTでの役割など、授業でやったはずなのだが、同じクラスの生徒に言われるのは違うのだろうかと………実際マルティーナPT以外は授業で教えた事を実戦で出来ていなかった。

 ステラが見た限りマルティーナPTがアリーチェのおかげで出来たのは確かだ。

 教師が教えると生徒は受け身になるが、クラスメイトだと主体的になるのだろうか。


「コズモ君の言いたい事は分かりました。もしかして他のPTリーダーも同じ考えだったりする?」


 ステラの問いにリーダーたちは申し訳なさそうに頷いた。


「フゥ、皆さんアリーチェさんを借りたいと言う事ですね………分かりました。この問題はマルティーナさんのPTに相談しないと何とも言えないですね。マルティーナさんどう思いますか?」


「PTとしては却下です」


 マルティーナは即答だった。

 PTメンバーをよこせと言われているのだから当然である。


「しかしコズモの幼なじみとしては………あのコズモが頭を下げてる姿を見ると考えてあげてもいいかなと思ってます。でもでもアリーチェの友人としてはやっぱり却下です。今までのコズモのアリーチェに対する態度は酷かった。頭を下げたとしても許せるものではありません……」


 コズモはマルティーナの言葉を聞いて初めて自分のしてきた事に思い至った。


「まあ、今のは私個人の意見ですので、アリーチェやPTメンバーと相談する時間を下さい。まあ却下だと思いますけどね」


「分かったわ、急がなくていいからね」


 ステラ先生は教壇から、生徒たちみんなを見渡してから、立ったままのコズモを見た。


「と言う事でこの件はマルティーナたちの返事待ちです。コズモ君、大人しく待つように。本日は以上です」


 コズモは何か言いたそうにアリーチェを見ていたが、軽く頭を下げてから帰って行った。




  *  *  *  *  *




 学校の帰り道。


 校舎から校門まで続く並木道で色鮮やかに咲く花々が夕日に染まっていた。


 その近くの芝生にマルティーナPTのメンバー5人が座っていた。


 心地よい風がマルティーナのライトブルーの髪を揺らす。


「私は教室で言ったように却下だけど、みんなはどう思う?」


 ブルーノが静かに話し出した。


「俺は………意見を出せる立場にないな。PT組む前も組んだ初めのうちも俺はコズモと同じような態度だった………アリーチェすまなかった」


 テレーサもロジータも俯いて聞いていた。


「PTを組んでから俺は、アリーチェのおかげで仲間を信じて魔物と戦える様になってきたと思ってる。アリーチェと一緒だとなんか自信を持って戦えるんだ。これからも一緒のPTでいたいが………俺もコズモと一緒で自分勝手だな………」


 俯いてたテレーサも話し出した。


「私の態度も酷かったわ………ごめんなさい。アリーチェからしたらPTメンバーで居る資格が無いわね。でも私はアリーチェとPT組めて良かった。アリーチェの指示だと安心して魔物に向かっていけるの、怖い筈の魔物にね。今日だけでも仲間を信じる大切さが分かった気がするわ」


 ロジータも落ち着かずもじもじしていた。


「………前まで冷たい態度だった私もだわ、ごめんなさい。PTを組んで魔物と戦ってる時はアリーチェのお陰で仲間を信じて魔物に向かっていけたの………ありがとうアリーチェ」


 みんなの話しを聞いたマルティーナがアリーチェを見つめる。


「それでアリーチェはどう思ってる?」


 みんなの思いを聞き、恥ずかしげに俯いていたアリーチェは、少し顔をあげてみんなを見た。


「アリーチェはみんなが元気に無事でいてくれたらそれでいいの。嫌な思いはしたけどみんなを憎んでるって訳でもないしね。みんなが目標に向かって頑張るなら手助けしてもいいかなって思うわ」


「そう………アリーチェは自分がじゃなくてみんながなのね。アリーチェはコズモのお願いについてはどう感じてるの?」


「そうね~~結論から言うと嫌かな。何度も突っかかってこられて凄く嫌な思いをしたもの。強くなりたいと言う姿勢には感心するけど、自分のしてきた事への責任もとらない人に協力したくないわ」


 ブルーノ、テレーサ、ロジータの3人が俯いた。


「俺も………すまなかった」

「「ごめんなさい……」」


「もういいのよ、同じPTメンバーだもの」


「いや、償いはさせてくれ。困ってる事があったら何でも言ってくれ」

「私も……」

「私も……」


「ん~~、じゃあ困った事があったらね」


「「「ありがとう」」」


「じゃあアリーチェの為にも貸し出さないでいいかしら?」


「だな、これ以上アリーチェに嫌な思いはさせたくないからな」

「「ええそうね」」


「ありがとう」


「じゃあ決まりね」


 マルティーナは立ち上がってみんなの真ん中に右手を差し出す。


「私たちはこれからも一緒のPTだからね」


 他のメンバーたちも手を重ねていく。


「それじゃあこれからも頑張るぞ~!」


「「「「「オオ~~~ッ!」」」」」


 みんな笑顔の中、ふとアリーチェが呟く。


「こんな時にPTの名前があるといいのよね~」


 それを聞いたマルティーナ。


「確かにPTの名前いいかも。じゃあみんな明日までに候補を1つずつ考えてきて、話し合って決めましょうか?」


 ブルーノが拳を握り締めてやる気を見せた。


「いいねそれ、格好いいのを考えてくるぜ」

「私は可愛いのがいいわ」

「ん~、私はおしゃれな方が」

「大人も納得の至高の名前を考えてくるわ」


 アリーチェは楽しそうなみんなを見つめて微笑んでいた。


誤字脱字報告ありがとうございます。


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


【作者からのお願い】


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             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




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