精霊ウィスプに魔法を教わる!☆2
「明日からと思っていたのですが、アリーチェ様は優秀なので、魔力操作の練習を始めたいと思います。今感じた自分の中の魔力を、集めて移動させる練習です。右手を握り、拳に魔力を集めてみて下さい」
リビングで座禅を組む様に座っているアリーチェと、立って腕を組んでいるウィスプ。
「分かった、やってみるわ」
アリーチェは右手を軽く握り集中し始めた。
(自分の中の紫のエネルギーを右手に………集まれ………右手に集まれ……)
ウィスプは目を見開いて驚いていた。
(かなりの魔力が右手に集まっているわ……)
ウィスプは静かに言った。
「では今度は、左手に集めてみて見ましょう」
アリーチェは右手への集中を辞めて、左手に集中し始めた。
すると、右手に集まっていた魔力は消え、左手に集まり始めた。
ウィスプはまた静かに言った
「はい、終わりにしましょう」
左手の魔力が消えアリーチェが静かに目をあけた。
「どんなだったかしら?」
「はい、素晴らしく完璧でした。アリーチェ様は魔力量が多いですね。集める魔力を今よりも少なくして、指先に集める練習がいいかもしれません。空いた時間に出来るので、常日頃からやるのがいいでしょう」
「ふぅ~、良かった」
アリーチェは安心していた。
女教師ウィスプのSな部分が怖かったのだが、全然そんな事は無かったからだ。
「では魔法を発動してみましょう。私の聖属性は、回復と治療と防御が得意です。それぞれやってみましょう」
「回復と治療って違うの?」
「はい、治療は『キュア』で、毒など体内にあってはいけない物の排除などで状態異常を治します。回復は『ヒール』で、消耗した体力や傷のダメージなど、身体を元の元気な状態に戻します。早速始めましょう。聖属性でイメージするのは、光がいいと思います。光に神の力が宿り、怪我を治したり、元気を回復したりするイメージです」
「分かったわ、聖なる光りね!」
「回復は『ヒール』治療は『キュア』です。イメージしやすい様に、練習の時は魔法の名前だけ言ってみるのもいいと思います」
真剣な顔で聞いているアリーチェ
「分かったわ『ヒール』と『キュア』ね、何を回復したらいいかしら?」
突然ウィスプは針を出して言った。
「勿論、対象は………アリーチェ様です」
「えっ???」
ウィスプの口元が少しだけ笑っている。
「指を出して下さい……」
椅子から降りてウィスプから離れるアリーチェ。
「ええっ!!」
一歩後ずさるアリーチェ。
一歩近づくウィスプ
「さあ指を………」
引きつった顔のアリーチェはもう一歩下がる。
「いやっ!!」
更に一歩近づくウィスプ
「魔法の練習はやらないのですか?」
また一歩下がるが壁に当たって下がれなくなるアリーチェ。
「でっ、でもっ」
ウィスプは一歩近づき、左手でアリーチェの顔の横に壁ドンをして笑みを浮かべた。
アリーチェの左手の人差し指をそっと手に取る。
注射の苦手なアリーチェは涙目だった。
「あれっ?」
ウィスプが突然玄関に視線を送った。
「えっ?」
つられてアリーチェも玄関を見る。
ウィスプは素早くアリーチェの指をチクッと刺した。
「はい、終わりましたよアリーチェ様」
ポカンとするアリーチェ。
「………あっ血が出てる………」
指先にはぷくっと血が出て来ていた。
少し微笑むウィスプ
「ではその傷を、回復魔法で治しましょう。魔法が失敗して治ってなければ、血は拭いても出てくるし、指は触れば痛い筈です」
アリーチェはいきなりの壁ドンや針で刺された事で、モヤモヤしながらも頷いた。
「やってみる………」
人差し指に右手をかざし、集中するアリーチェ。
(イメージは聖なる光りね)
人体の事は、高校まで習ってるから、細かく細胞までイメージしてみるアリーチェ。
(まずバイ菌をやっつけよう)
「『キュア』」
練習なので言葉にしていたが、やりやすいようだった。
怪我の箇所が微かに光りだす。
(切れた皮膚細胞の再生と、再生出来ない細胞は新しい細胞の生成………毛細血管も再生と細胞生成………血液は全然出血してないから大丈夫ね……ウィスプへの心労からのストレスは………キュアで治ってくれるかな……消毒するような清潔な光りで優しく包む感じで………)
「『ヒール』」
人差し指が更に光りゆっくりと消えていった。
アリーチェは、指先の血を拭き、かるく触ってみた。
「痛くない………血も出ないみたい」
「素晴らしい、成功ですね。とても繊細な感じを受けました」
「これが魔法…………イメージが大切なのね」
アリーチェは魔法が使える様になって嬉しい筈なのに、笑顔は微妙だった。
今日はもう遅いので、続きは明日になった。
魔法が使えたのに嬉しさよりウィスプの怖いイメージが残ったアリーチェだった。
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