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クラスメイトとPTを?☆4


 PTとして魔物と戦う日がやって来た。


 教壇でステラ先生が真剣な表情で話す。


「魔物を狩る目的は幾つかありますが、レベル上げもその1つです。魔物を倒せば経験値が入り、一定数貯まるとレベルが上がり自身の能力も上がり、それまで出来なかった事が出来る様になって確実に強くなっていきます。焦って無理な戦いはせず、逃げる事も作戦の1つです。PTメンバーで自分たちの戦い方や連携を話しあって、装備を整えて出発しましょう」



 生徒たちはPTごとに話しあっていた。


 マルティーナがメンバーに話す。


「私たちPTは、始めにブルーノが魔物の攻撃を引きつけて、ロジータが弱体化、テレーサが攻撃、私が回復をする……」


 マルティーナがチラッとアリーチェをみる。


「でいいかしら?」


 他のみんなもアリーチェを見た。


「えっ?ええ、大丈夫だと思うわ」


(う~ん………荷物持ちなんだけど、まぁいっか)


 少しずつみんなに、頼られ始めるアリーチェだった。



 教室には、ステラ先生を合わせて引率の先生が5人いた。

 1PTに1人ずつだ。


 マルティーナ達の引率は、二枚目でライトグリーンのさらさらヘアーのチャラそうな先生だ。


「風属性の授業でテレーサさんとは会ってるよね、今日君達の引率をするエヴァンだ、宜しくね」


「「「「よろしくお願いします」」」」


「みんなの名前は覚えたから大丈夫だよ、君がアリーチェさんだね?」


 PTリーダーのマルティーナじゃなく、いきなりアリーチェに話しかけてくるエヴァン先生。


「はっ、はいそうですが………」


「そっかそっか、アリーチェさんは魔物との戦闘の時はどうするの?」


 言いづらかったが言わない訳にもいかず、一般的にも必要な役割なので話した。


「えっと、1番後ろに隠れてます………荷物持ちなので」


「荷物持ち?へぇ~、確かに一般のPTにはいる事もあるけど、まだ学校の授業だし、そこまで現実的にやらなくてもいいんじゃない?5人で戦った方が有利だと思うよ?」


「いえっ!これはPTで話し合って決めた事ですし、アリーチェの希望でもあります。経験値もいりませんのでこれでいきます」


「そうかぁ………変わってるね。まあ魔物との戦いは、4人PTで大丈夫だとは思うけど経験値もいらないって、レベルが上がらないよ?卒業までに最低でもLV5には上がってないと卒業できないよ?」


「へっ?卒業のレベルがあるんですか?でもLV5なら大丈夫です。後でなんとかします」


「ははっ、まぁ学校生活はこれからだし、何かあればいつでも相談にのるからがんばってね」


「はい、ありがとうございます」


 すでにLV18なので卒業条件クリアーしてるアリーチェ。


(んっ?もしかして卒業の前にレベルを確認されるって事なのか?…………まぁその時に考えるか)


 その後、みんなの話し合いも終わり、生徒全員がHP回復薬とMP回復薬を1瓶ずつ持って準備も整った。

 アリーチェは、みんなのMP切れを心配して、MP回復薬を余分にもらってリュックに入れた。

 HPは魔法で回復するから、HP回復薬は余分に持たなかった。

 HP回復薬まで余分に持つと重いしね。

 先生たちもリュックに予備を持ってくれているようだし、そのうえ生徒たちのお弁当も持ってくれていた。



 みんなでまとまって学校を出発、西門を出て1番近い南の森に向かった。


 なぜか最後尾に馬車が1台ついてきていた。


 PTリーダーと引率の先生の組み合わせはこんなだった。


リーダー ヨランダ

(聖属性、生徒会役員)

ルイーザ先生 聖属性


リーダー オズワルド

(聖属性、生徒会役員)

エンマ副校長 氷属性


リーダー コズモ

(火属性 領主軍団長の息子)

ステラ校長 火属性


リーダー ドナート

(火属性 商人の息子)

チェザーレ先生 土属性


リーダー マルティーナ

(水属性、領主の娘)

エヴァン先生 風属性


 それぞれのPTには、盾役として氷属性か土属性がいて、攻撃役に火属性、サポート役に風属性や闇属性、回復役に聖属性か水属性がいる。


 不測の事態の為なのか、先生も攻撃役・盾役・サポート役・回復役の属性が揃っていた。


 先生のLVはステラ校長がLV45で高かったが、他の先生はだいたいLV30くらいだった。


 アリーチェが、歩きながらエヴァン先生に先生たちのレベルについて聞いてみると、すんなり答えてくれた。


 教員採用条件はLV30以上なので、LV30になると冒険者を辞めて教員に成る者が多いらしい。

 LV30の冒険者なら教員よりも稼げるから、冒険者を続ければいいのだが、いつも命がけで危険な冒険者より安全で安定した教員は魅力的だそうだ。

 勿論、自分の属性の教員が募集されてればだ。


 エヴァンはチャラそうなのに安定志向だった。


 最後尾の馬車の事も聞いたら、怪我をした生徒や疲れた生徒を乗せる用だった、さすが貴族の子供たち。


 至れり尽くせりだ……




 西門を出た時から、遠くに南の森は見えていたが、30分近く歩いてやっと森の入り口付近に着いた。



 ステラ先生がみんなを休ませて注意事項を伝える。


「ではみなさん、この辺りにはFランクの魔物しかいない筈です。授業でやりましたが、Fランクの中でもスライムやウッピーが比較的弱く、タヌッキーやモモンガーは少し強いので気をつけて。Fランクじゃない魔物がいる事もあるので、逃げる方法も相談しておいて下さい。危険な時は引率の先生が助けますが、ギリギリまで手を出しませんので頑張って!まずは1体狩ったらここに戻ってきて下さい」


「「「「はい!分かりました!」」」」



 生徒たちは森の縁に沿ってPTごとに円陣を組んだ。

 リーダーの掛け声に合わせて気合いの入った声が上がりPTが成立していく。


 全PTの準備が出来たら、陣形を組んでPTごとに森に入っていった。


 マルティーナPTは、ブルーノを先頭に、ロジータ、マルティーナ、テレーサの順だ。

 その少し後にアリーチェとエヴァン先生が着いていく。


 ブルーノは、前を警戒しながらゆっくりと進んで行く。


(ん~、スライムがだいぶ先にいるわね。このスピードだと結構時間がかかるけど………まあ付き合うしかないか。これもみんなの経験よね)


 アリーチェは索敵で、結構広い範囲まで解る様になっていた。今いる5つのPTの動きは勿論わかるし、さらに集中すればボスコの街の西門辺りまで分かるのだ。

 街中だと人が多過ぎて、広い範囲は混乱して頭が痛くなるので、いつも街中は狭い範囲にしている。


(広い範囲も面白いわね、あっ!コズモPTがスライムと遭遇………と思ったらすぐにコズモが突っ込んだわ。連携しないのかな。まぁスライムならみんなで囲んで殴ってれば勝てそうだけど……)



 その後、他のPTも順調にスライムかウッピーを倒して、集合場所に引き返し始めた。



 やっとスライムと遭遇するマルティーナPT、


「あっ!いたぞスライムだ!」


 ブルーノが走り出そうとするのを見てアリーチェが指示を出す。


「ブルーノはアイスアローで先制攻撃!その後は盾で防ぎながら剣で攻撃!」


 ブルーノは直ぐに立ち止まって、盾を構え右手をスライムに向けて詠唱を始めた。


「大いなる者にたまわりし気高き六花りっかわが意思いしに準じて、今ここに具現ぐげんせよ『アイスアロー』!」


 ブルーノの右手の前に現れた1本の『アイスアロー』が、スライムに突き刺さるが、『アイスアロー』が消えると直ぐに反撃してきた。


 スライムはポヨンポヨン跳ねてブルーノに体当たりして来る。


 ポヨ~ン、ボンッ!


「んぐっ!」


 がっちりと盾で防ぐブルーノ。


「だっ、大丈夫だ、防げるぞ!」


 防御だけのブルーノに、スライムは連続で体当たりしてきた。

 ポヨ~ン…ボンッ!

 ポヨ~ン…ボンッ!

 ポヨ~ン…ボンッ!


「ふんっ!ふぐっ!」


 アリーチェが、行動を起こさないPTメンバーに指示を飛ばす。


「ブルーノ、隙を見て反撃してっ!ロジータ弱体魔法!テレーサはスピードを上げて後ろに廻って攻撃して!話しあった連携を意識して、戦いは始まってるのよ!」


 ただ見ているだけだったロジータが、ポイズンの詠唱を始め、テレーサも自分のスピードを上げる為のエアフォローの詠唱を始めた。


 アリーチェが魔法でブルーノを確認すると、スライムの体当たりを盾で受けても2ずつダメージを受けていて、23あったHPが15まで減っていた。


 アリーチェはブルーノのHPを確認しながら思った。


(LV1ってスライム相手でも、結構たいへんなのね…)


 ロジータのポイズンがスライムにかかり、テレーサもスピードを生かして背後からスライムに斬撃を当てる。


 みんなの攻撃が当たってはいるが、それ程スライムにダメージが入っている様には感じられない。ポイズンにかかって紫色の泡っぽい物が見え少しずつダメージを与えている様だが………


「マルティーナさん!ブルーノがあと1回攻撃を防御したら、回復魔法をお願い!」


「わっ分かったわ!」


 杖を握り締めて緊張を隠せないマルティーナ。


 ブルーノは、スライムとの戦闘が始まってから全て防御しているのに、その衝撃で身体が重くて辛くなっていくのを感じていた。


(なっ何でスライムの攻撃は防いでいるのに身体が思うように動かなくなってくるんだ………)


 防御しても衝撃でダメージを受けている事を、まだ理解出来ないブルーノ。


 アリーチェが指示を出す。


「みんな!スライムの身体の中の丸い核を狙って!特にテレーサ!あなたの役目よ頑張って!」


 テレーサは辛そうなブルーノの表情を見て、不安と申し訳なさと逃げ出したい気持ちでいっぱいだったが、歯を食いしばった。


「わっ分かった、やってみる」


 マルティーナは、ブルーノがスライムの攻撃を防御したので、両手をブルーノに向けて回復魔法の詠唱を始めた。


「大いなる者にたまわりしきよきひとしずく、わが意思いしに準じて、今ここに具現ぐげんせよ、『ヒールウォーター』!」


 マルティーナが詠唱してる間にも、ブルーノはスライムの攻撃を1度防御したが、回復が間に合ってブルーノの身体が光り出し体力が全快になった。


 身体に力がみなぎってくるのを感じたブルーノは思わず叫んだ!


「おっおおお~~っ!」


 ブルーノの叫びにスライムはびっくりした。

 テレーサは自分の気持ちを奮い立たせて、スライムの背後に回り込み、持っていた双剣の片方をしまい、1本の剣で核を狙って一気に突っ込んだ。


「やぁあああ~~っ!」


 ズバンッ!パリィィンッ!


 テレーサの剣は、ブルーノの叫びに戸惑っていたスライムの

核を見事に貫いた。


 スライムは魔石を残して身体は水となって、地面に消えていく。


 メンバーは、消えていったスライムの残した魔石と仲間の顔を見つめていた。




 テレーサが震える声で目の前のブルーノに聞いた。


「かっ…勝ったの?」


「あぁ、そうみたいだな…勝った…」


「「「「やったぁ~~!」」」」


 みんなの歓声が上がった。

 相手はスライムだが、全員で頑張ったんだから当然だった。


 ブルーノがアリーチェに近づく。


「………ありがとうな」


 アリーチェは戸惑いながら言った。


「んっ?ブルーノを回復したのは、アリーチェじゃなくマルティーナだよ?」


 そこにマルティーナも混ざる。


「私からもお礼を言わせて、ありがとうアリーチェ。みんな最初は全くは動けなかったわ。勝てたのはあなたの指示のおかげよ」


「「ありがとうアリーチェ」」


 ロジータもテレーサもお礼を言った。

 みんなにお礼を言われ、照れるアリーチェ。


「いや、そんな、頑張ったのはみんなだし……」


 マルティーナは微笑んだ。


「それでも、あなたの指示があったから勝てたわ」


 他のメンバーもアリーチェを見つめて頷いていた。



 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆


 読んで頂き有難う御座います。


【作者からのお願い】


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             m(_ _)m


 ☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆





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