クラスメイトとPTを?☆3
ボスコの朝
「じゃあ行ってきま~す!」
アリーチェが、ルカに朝の挨拶をして学校に向かった。
今日の護衛はシドとディーネ。
ディーネの見た目は子供なので、護衛としてどうなのだろうかと思う。
……シドが子供を2人連れてる風にしか見えない。
ディーネとフラウとランパスには、エリスママの手伝いで、ラダック村に残ってもらっていたが、日が経つにつれ、ディーネとフラウは赤ちゃんと遊ぶのに飽きて、自分たちで遊ぶだけになっていたらしいので、2人にはウィスプと交代してもらったのだ。
今ラダック村で子育てを手伝ってもらっているのは、ランパスとウィスプだ。
今はボスコの街にいるディーネ、気晴らしも兼ねた護衛と言う名の散歩だ。
いつもの様に家を出て、街の西側の塀沿いに西門まで歩き、日課となりつつある西門の衛兵への挨拶を済ませてから、馬車や人通りの多い大通りを、中央広場まで行く。
ディーネは街の雰囲気に慣れてきてはいるが、まだまだ周りの散策で忙しそうだった。
シドに肩車でもお願いしそうな勢いだ。
無事に貴族門の手前で2人と別れ、学生証を衛兵に見せて通してもらう。
やっぱり貴族街は綺麗だなと感じつつ学校に入っていくアリーチェ。
アリーチェは午前中の授業の休み時間にPTメンバーに集まってもらい、机の上にMP+5の指輪を置いて話しをした。
「これはMPを5増やすアクセサリーなんだけど、みんなに付けてもらいたいの。効果の重なるアクセサリーを装備しても、低い方は効果が発揮されないから、家にもっといいのを持ってる人はそっちを付けてね」
一応みんな指にはめてくれた。
ブルーノが指に付けた、飾り気の無いシルバーのリングを見ながら聞いてきた。
「ふぅ~ん、MPを5増やすだけで、何か違うのか?」
(おっと、1番MPの低いあなたの為なのよね)
「うん、みんなMP5で1回魔法が使えるわ。ギリギリの戦いの時にもう1回魔法が使えるのはとても重要よ、安心材料が増えるから」
疑問に感じたのか、またブルーノが聞いてきた、
「なんで魔法1つMP5だって分かるんだ?」
「えっ?だってそれは………」
(あれっ?サーチ魔法で分かるわよね………あっ月属性だからか。もしかしてMPが数値で分かる方法は無いのか?……そういえば授業でもHPやMPの量とか、魔法のMP消費量は高いとか低いだったかも……)
「それはなんでって……………勘よ勘!アリーチェが決めたの。分かり易い方がやる気でるでしょ?それとブルーノは今日の魔法の練習で、昨日出来なかったアイスウォールを最初にやってみて」
「昨日出来なかったのにまたやるのか?」
「昨日出来なかったのは、アイスアローを使った後で、魔力が足りなかったからよ、最初にやれば大丈夫だと思うの、MP+のアクセサリーも付けたし大丈夫なはずよ………勘だけどね。このPTはブルーノが頼りだから頑張ってね」
「俺が頼り?フム、まぁいいけどやってみるよ」
頼られて少し顔が赤くなるブルーノ。
「うん、ありがとう!」
* * * * *
午前中の武術の授業でだいぶ盾の良さが分かってきたアリーチェ。
コズモがアリーチェに何度も攻撃をするが、躱されたり、盾で逸らされたり、アリーチェの相手にならなかった。
「ちきしょう!おりゃっ!くぅぬおっ!…はぁ…はぁ…」
(盾で打撃も出来るし、相手の攻撃を防いだら、こっちの剣の間合いでもあるからチャンスなのね、結構便利かも)
息の切れたコズモの練習相手をしながら、澄ました様子でいろいろと考えるアリーチェだった。
ウィザードドームでの午後の魔法の練習。
ブルーノはアイスウォールを試す所だった。
生徒のみんなから少し離れて、両手を前に出し目を閉じる、そして詠唱を始めた。
「大いなる者に賜りし気高き六花、我意思に準じて、今ここに具現せよ」
ブルーノは目を開けて1度深呼吸をしてから唱えた、
「『アイスウォール』!」
ヒュ~ザザッ!カキンッ!
「おおっ!やった!」
ブルーノは喜んだ。目の前に2㍍×2㍍の氷の壁が現れたのだ。厚さは30センチくらいあり、氷の彫刻の様で、みんなその綺麗さに見とれていた。
アリーチェがサーチで確認すると、MP10消費していた。
(まぁ予想通りね、ブルーノは
MP+5リングを付けてMP18か、1回の戦闘でアイスウォール1回とアイスアロー1回、もしくはアイスアロー3回ね。他のみんなはMP26だから魔法を5回使える事になるか………LV1でもFランクの魔物なら大丈夫ね。でも前衛でブルーノが今の詠唱をするのって………戦闘中は厳しそうだわ)
アリーチェの悩みが増えた。
* * * * *
魔法の授業が終わって教室に戻ると、強面のスキンヘッドのおっさんがいた。
「あいつやばっ!」
「あのハゲ誰?…」
「犯罪者?」
「なんでハゲがいるの?」
などとみんなヒソヒソと話していると、ステラ先生が席に着く様に言った。
「え~、この方は冒険者ギルドのコルネリオギルド長さんです。皆さんの冒険者登録をする為に、学校がお願いして来てもらいました。ではギルド長お願いします」
(えっ?ギルド長?冒険者登録って10才じゃないの?)
アリーチェは疑問に思いながらも、黒を基調としたギルドの制服を着た、ギルド長の頭をジッと見ていた。
「うおっほん、え~っと、私はハゲでいる訳では無くて剃っています」
全員が思った。
(第一声がそれかよ!)
「え~私がコルネリオだ。冒険者登録は通常10才からだが、学校の生徒は特別に、Gランク冒険者として登録出来るんだ」
説明を要約するとこうだった。
学校の生徒は、制限付で仮の冒険者としてGランクで登録出来る。
制限内容
・活動範囲はボスコの近辺
・活動は日中に限る
・半日以内に戻る事
・行き先・経路・目的をギルドか衛兵に申告する事
・引率者が必須、
・その他、ギルドや引率者の指示に従う事、
・これらに違反した場合は、仮カード剥奪、1年間の再登録停止とする。
保護者付きの冒険者だった。
コルネリオギルド長は、登録用の羊皮紙を掲げながら話す。
「では、この羊皮紙に名前を書いて私の所に持ってきて。名前は本名ならフルネームでも最初の名前だけでも大丈夫だ」
名前を書き終わった生徒から、コルネリオの所に並んだ。
アリーチェも、アリーチェとだけ書いて並んだ。
みんな針でチクッとやられるのは嫌だったが、それよりもコルネリオの顔が恐くてそれどころではなかった。
血を垂らした羊皮紙は、商人ギルドの時の様に、光り輝いたあとに2枚のカードになっていた。
ギルドカードは冒険者ギルドの紋章の上に白地に1本の赤い斜線があった。
裏には本人の名前とこの街の名前が表示されていた。
「1枚は冒険者ギルドで保管する。その理由の1つにみんなの生死の確認がある。持ち主が死ぬとこのカードは羊皮紙に変わる。家族の希望によっては、遺品や遺体回収の依頼もあるから、行き先はしっかりと告げて行くように」
コルネリオは不敵に笑った……
本当にギルド長か?このハゲ!!と言う声が聞こえてきそうである。
ギルド長と入れ替わって、ステラ先生が教壇に立った。
「これでみなさんは、先生と一緒ならPTを組んで魔物との戦いに行ける事になりました」
ステラ先生は、生徒たちをゆっくりと見渡した。
「明日から少しずつ、魔物との戦いを始めて行きますが、簡単な事は1つもありません。ランクの高い冒険者は、ランクの低い魔物を簡単に倒してる様に皆さんには見えるでしょう。しかし、それまでの大変な努力があったからこそ確実に倒せる様になったのです。それまでには死にそうな場面もあったでしょう、実際に亡くなってしまう冒険者も少なからずいます。魔物も命がかかってるのですから常に命懸けの戦いになります。油断すれば命を落とす事を忘れずにいて下さい。仮登録といえど皆さんは冒険者になりました。明日からの訓練頑張りましょう」
もう子供としての時は過ぎ、1人の大人となったのだと思う生徒たちで教室内は静まり返っていた。
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆
読んで頂き有難う御座います。
【作者からのお願い】
本作を読んで少しでも応援したいと思って頂けたなら、
画面下の「★★★★★」
での評価を頂けるととても励みになります。
m(_ _)m
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




