クラスメイトとPTを?☆1
学校生活も1週間が過ぎた。
学校の授業のおかげで、アリーチェはこの世界の事が分かってきたしクラスメイトとも少しずつ仲良くなってきた気がする。
武術の授業では、コズモが、勝ったと思ってんなよ!とか、不敬罪だぞこの平民風情が!とかちょいちょい絡んでくるのだが、マルティーナがあいだに入って軽くあしらって守ってくている。
(唯一の支持者だからかな、あの時は何も考えて無かったんだけど……)
領主の娘マルティーナと領主軍の団長の息子コズモは幼なじみで、小さな頃からの知り合いらしかったので、アリーチェとも悪くない関係になってきていた。
魔法の授業でアリーチェは、初級魔法といえども普通に集中してやると混乱を招くので、1週間毎日家で魔法を小さく発動する練習をしていた。
そのお陰か、繊細な魔力操作が上達して、魔法の大きさを調整出来るようになり他の生徒たちの半分くらいまで小さく出来るようになった。
益々みんな雑魚を見る目になっていった。
目立たない努力をしてるけど、これは目立っている事になるのかアリーチェは悩んだ。
授業では、この世界の常識とされている、全属性の初級魔法を1つずつやった。
聖・火・水・氷・風・土・闇(暗黒)の7つだ。
今まで精霊たちに魔法を教わっていたが、中級魔法以上から教えてくれてたみたいで、今回習った初級魔法は、どれも初めてのものばかりで新鮮だった。
アリーチェがとても便利だと思った魔法が、闇(シドの暗黒属性の方)の初級魔法の、リペラントとゆう虫除けの魔法だ。
絶対に虫が来なくなる訳では無く近づくと嫌がる程度なのだが、虫が苦手なので必須魔法だ。教えてもらって以降は常にかけ続けていた。
(夏の風物詩の丸い線香の様な魔法ね、とても有難ありがたいわ)
クラスメイトとしては、マルティーナとよく話すようになった。
相変わらず突っかかってくるコズモともよく話している事になるのだろう。
教室内では貴族としての派閥が出来始めていた。
1番の勢力が、生徒会役員のヨランダとオズワルドの教会派閥。
将来の聖職者と仲良くなるチャンスだから、みんな従うのは当然なのだろう。
第2勢力が、コズモの武力派閥だ
ボスコ領軍の団長を父に持ち、7つ上の兄は、クリストフィオーレ皇国軍として王都に勤務するエリートである。
コズモは乱暴なので嫌う生徒もいたが、それでも男子生徒の支持を集めていた。
第3勢力がマルティーナの、領主派閥だ。
と言ってもマルティーナとアリーチェ、あとはアリーチェの前の席のロジータの3人だけなのだが、第3勢力と言っていいのだろうか………
領主の娘だからもっと多くても良いのかもしれないが、マルティーナが水属性なのが理由のようだ。
領主になるには、街を守る為の魔法が必要で、街の外壁を作るのに土属性が向いている。
領主は子供が土以外の属性なら、土属性の子供が生まれるのを待つか、マルティーナの夫として土属性の婿養子を迎えるのだ。
土属性の兄弟が生まれれば、マルティーナは政略結婚で外に出されるのだ。
そして土属性の子供が生まれるのを待つ可能性が1番高いから、みんなマルティーナより他者を選んだのだ。
みんな意外とシビアだった。
先週は武術の授業で、基本的な武器は教わったが、今週からPTの職種に分かれて訓練をし、最後はそのPTで魔物を狩るのが目標だそうだ。
みんな希望の職業を考えて来るようにと言われて、アリーチェは色々と考えた。
(魔法使いは無しだから身体を張った前衛か弓を使う狩人か……でもアリーチェにとっての1番の問題は、授業でやるPTでの魔物狩りよね……)
普通のLV1同士のPTなら、スライムなどのFランクの魔物を5~6体狩ればレベルが上がる。
しかし、レベル差が10あると低い人には5割の経験値しか入らない。
今アリーチェはLV18だから、PTを組むとLV1の人は1割の経験値しか入らなくなり、10倍近く倒さないとレベルは上がらないって事になるのだ。不審がられて調べられでもしたらヤバイのだ。
(アリーチェのレベルは言えないし、何とかしないと)
アリーチェはPTでの魔物狩りが憂鬱になってきた。
教室で、ステラ先生がみんなの希望の職業を聞いて、PTを組み合わせていた。
クラスは21名なので、4人PT4つに5人PT1つを組むようだ。
職業もそうだが、友人関係や派閥も考慮されるようだ。
コズモ、マルティーナ、ヨランダはPTリーダーだった。
それぞれのPTには、攻撃役として火属性が1人、盾役で氷か土が1人、回復役で聖か水が1人、補助役でその他の属性が1人だ。
マルティーナのPTだけ違って、盾役の氷が1人、回復役がマルティーナ、補助役が風と闇で2人、それにアリーチェを加えた5人PTだ。
火属性の攻撃役がいないから、5人にしたのだろう、常識的なPTだった。
アリーチェがLV18じゃ無ければ……
PTを組み終わったステラ先生が、教壇からみんなを見渡す。
「それでは今後の武術の授業は、PTの動きや連携の練習、魔法の授業は、それぞれの属性魔法の練習をおこなっていきますので、頑張って下さい」
それからステラ先生が、PTでの役割を簡単に説明した。
盾役が敵の攻撃から味方を守る為に重要なのは、攻撃を受け止めたり捌いたりするのは勿論だがヘイト管理である。
PT全員が理解している必要があり、連携するうえで大切な事だ。
攻撃役は、ヘイト管理を理解したうえで攻撃をする必要があり強い魔物ほど重要である。
回復魔法はヘイトを集めやすいので、ヘイト管理を踏まえて回復を行う必要がある。
補助役は、連携が機能する様に、攻撃や守りにと臨機応変に対応出来るとよい。
「それではPTごとに集まって、それぞれの役割や連携について話しあって下さい。先生も相談に乗りますからね」
マルティーナのPTメンバーは5人。
回復役の水属性で、リーダーのマルティーナ。
盾役の氷属性の、ブルーノ。
補助役の風属性の、テレーサ。
補助役の闇属性の、ロジータ。
そしてアリーチェ……
アリーチェの前の席がロジータで、その前がテレーサだったので、PTメンバーは自然とその周りに集まった。
マルティーナがPTメンバーに話す。
「リーダーを務めさせてもらうマルティーナ、水属性の回復役よ、よろしくね」
「ブルーノだ、氷属性で盾役だな」
短く刈り上げた青い髪の男の子だった。
栗色のふわっとカールのかかったセミロングの女の子。
「テレーサよ、風属性なので補助役よね」
グレーのショートヘアーの女の子だ。
「私はロジータ、闇属性で補助役ね」
最初に平民は話しかけないでと言った女の子だ。
みんなが見つめる中、最後にアリーチェが話した。
「えっと、アリーチェです。魔法は初級だけなので、剣や弓を使った補助役なのかな……」
そこで不満が出た。
「なんで俺たちがこいつの面倒を見なきゃならないんだ?」
盾役のブルーノだ。
「そうよね、貴族ならまだしも平民のせいで苦労するのは勘弁よねテレーサ」
ロジータは友だちなのか、テレーサに話しかけた。
「ロジータの言う通りね、私も嫌だわ」
仲が良さそうだった。
少し困った様子のマルティーナ。
「ん~先生は、攻撃力が少し低いPTだから5人だって言ってたわ。5人でやってみない?」
「役立たずが1人増えた分、経験値が減るし、苦労するだけで何のメリットも無いんだぜ、荷物持ちぐらいならいいがな」
盾役の意見は無下には出来ないのか、悩むマルティーナ。
「ん~…………」
アリーチェは荷物持ちの言葉に反応した。
「荷物持ちでいいわよ。みんなに迷惑をかけるのも申し訳ないし、アリーチェは大丈夫よ」
アリーチェは、参加してしまうとみんなにほとんど経験値が入らなくなるので、本当に申し訳なく思っていた。
荷物持ちをあっさりとOKしたアリーチェに、マルティーナ以外は、平民なら当然とゆう表情である。
マルティーナはまだみんなでやろうと、説得しようとする。
「でもアリーチェさんのレベルを上げられなくなるし、5人PTの練習で多い方が安全だし……」
「本人がいいって言ってんだから決まりでしょ!荷物持ちも1つの役割だしな」
ブルーノ、ロジータ、テレーサの3人は、うんうん頷いていた。
アリーチェは、少し困った様子のマルティーナに、謝罪とお礼の意味を込めて頭を下げた。
「マルティーナさんの気持ちはとっても嬉しいわ、ありがとう。アリーチェは本当に荷物持ちをやってみたいから、お願いします」
そこにステラ先生が来た。
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆
読んで頂き有難う御座います。
【作者からのお願い】
本作を読んで少しでも応援したいと思って頂けたなら、
画面下の「★★★★★」
での評価を頂けるととても励みになります。
m(_ _)m
☆◦º◦.★◦°◦.☆◦º◦.★◦°◦.☆




